勇気は、積極的に危険と対決して、危険排撃に総力を傾ける。

2012年11月01日 | 勇気について

5-8-2.勇気は、積極的に危険と対決して、危険排撃に総力を傾ける。
 勇気は恐怖の忍耐を肝要とするが、それだけだと敵には痛くも痒くもない。勇気は、敵に脅威となるのでなくてはならない。積極的な勇気は、危険なもの・敵を排撃できる力をもつ必要がある。勇気は、おのれの心の恐怖を制圧し、さらに、自分のそとに実在する危険なものの制圧に向かう。そのためには現実的な攻撃力をみがくことが勇気にはいる。
 ネズミをねらうネコには勇気はいらない。勇気は、弱いネズミの方が必要とする。弱いものが、勇気をもって、強(こわ)い危険なものの排撃を試みるのである。戦いに勝利するには、強い者なら、並みの攻撃でもすむ。だが、勇気をふるうべき者は、元々弱いのだから、並みの攻撃意志をもってするのでは、勝利できない。大胆不敵・勇猛果敢の勇気をふりしぼって、強い危険なものを凌駕する大きな力を出すことが求められる。
 勇気では、危険を覚悟し、防御にまわすものを小さくし大胆になって、可能な限りの力を攻撃に振り向ける。英知をつくした深慮遠謀をふまえながら、無謀・向こう見ずと言われるぐらいに大胆で果敢な闘志をもって、覚悟を決め、気負い、奮い立つ。非常時の臨戦体勢になった「死狂ひ」(『葉隠』「聞書一」113)の、死にもの狂いの勇気は、心身への過剰な負担回避に働く無意識のブレーキも解いて、猛烈な攻撃力を発揮することができる。