勇気とは何か

2011年05月10日 | 勇気について
1.勇気とは何か
1-1.「勇気を出せ!」と言われる場面
 高いがけから飛び降りるには、勇気がいる。かつては、自然のなかでの危険な場面や、戦闘という非日常の危機的場面において勇気が求められた。だが、現代では、ひとは、危険な自然からは保護されて、日常的には野生の危険とは無縁になっている。それでも、「勇気」は、しばしば問題となる。現代の勇気は、社会生活のなかの禍いに関わっていうことが多い。
 重病と分かってがっくりしているときとか、会社が倒産しそうで解雇されて途方にくれ呆然としているとき、「元気を出せ」「勇気を出せ!」と励まされる。社会生活のもとでの禍いの襲来に、絶望・悲嘆・不安・恐怖をもって打ちのめされ、心乱れているとき、「しっかりしろ」「勇気をだせ!」と鼓舞される。こういう場面の勇気をふまえたものが現代の一般的な勇気になるであろう。
 だが、重病で打ちのめされているとき、あきらめることが肝心となっているのなら、「元気を出せ」といっても、「勇気を」とまではいかないことがある。事故で両足を切断して悲嘆に打ち沈んでいるようなとき、はげまし・なぐさめることばとしては、「勇気を出せよ」は、時期尚早のことばとなろう。「しっかりしろ」ぐらいになる。解雇されて途方にくれていても、しばらくは失業保険をもらい、そのうち別の仕事を探すことになっているようなところでも、「元気をだせ」というぐらいで、「勇気を」とまではいわないであろう。
 「勇気を」というのは、悲嘆し諦める以外ない状態に泰然としておれと、なぐさめ励ますのではない。落ち着いて心安らかにしておれというのではなく、もっと積極的にこころを奮い立たせるべきときに、「勇気を出せ!」という。