3-6. 覚醒価値-苦痛は、覚醒の働きをする
苦痛は、ひとに嫌悪、焦燥、抑うつなどの不快をもたらす反価値感情であるが、同時に、損傷を気づかせるものとしては、大切な情報価値となる。さらに、反価値の代表であろう苦痛が、別の価値をもつこともある。そのひとつが、覚醒をもたらす刺激として、覚醒価値とでもいう面を有していることである。
苦痛は、快が微睡ませるのと逆で、受傷で危機的状態になっていることを知らせ、無視・放置しがたいものとして人の意識を奮い起こす。意識を覚醒させる。覚醒を求める場合、意識を刺激して活動的にするためにと、苦痛を与えることがある。睡眠からの覚醒には、目覚まし時計を鳴らすが、心地よいものなら安楽に眠りを延長させることであろう。不快・苦痛をもたらすような刺激が覚醒を導く。目覚まし時計は、不快な音を出して放置できない刺激を与え、この音を止めねばと意識を現実へと引き戻す。
驚きも人を覚醒する。これは、思いがけないものに目を見張りこれを凝視して、その情報をとりこもうとする感情で、かならずしも苦痛に関わらない。好ましい新奇なものが出てきて凝視する驚喜は、快感情である。驚きの感情の表情は、目を丸く見開いたものになろう。これは、眠りから覚める状態ではとらない。とれない。眠りから覚めるときは、まず、しかめ面をして目蓋を少しずつ開いていく。そうして意識を取り戻して、新奇の驚くべきものがあれば、目をもっと見開いて驚くのである。目覚めには、外からの無視できない苦痛等の刺激で意識を取り戻し、おろした目蓋を開くことがなくてはならない。眠りでは目は蓋を閉じていてそとからの刺激を受け付けない状態なので、まずは、蓋をもたず外界と常時連絡のとれる耳、音に頼るのが普通である。耳は眠っているときも、外からの音を受け入れる身体的な構造になっている。古い時代の戦いでは、みんなの眠る夜中、不寝番は、拍子木を打ったり、弓の弦を鳴らして(魔よけの鳴弦、つるうち)安心させていたようである。その眠っている者の耳に、安心せよとの心地よい音ではなく、不快な起床の呼びかけの刺激を、意識を呼び起こすようなほどほどの苦痛刺激を与えるのが目覚まし時計であろう。
ひとを起こそうと行動する場合は、痛みを引き起こすぐらいに叩くとか、つねる等の振る舞いをすることもある。やさしく抱いたり、リズムをとってソフトに触れるのは、安らかに眠れというときである。眠気を醒ますには、逆に、冷水をあびるとか、打つとか刺すとか適度に痛覚を刺激して痛みを加える。苦痛は、生に危機を知らせる感覚であり、意識の即時的な対応を求めて、覚醒にと人を導く。
苦痛は、ひとに嫌悪、焦燥、抑うつなどの不快をもたらす反価値感情であるが、同時に、損傷を気づかせるものとしては、大切な情報価値となる。さらに、反価値の代表であろう苦痛が、別の価値をもつこともある。そのひとつが、覚醒をもたらす刺激として、覚醒価値とでもいう面を有していることである。
苦痛は、快が微睡ませるのと逆で、受傷で危機的状態になっていることを知らせ、無視・放置しがたいものとして人の意識を奮い起こす。意識を覚醒させる。覚醒を求める場合、意識を刺激して活動的にするためにと、苦痛を与えることがある。睡眠からの覚醒には、目覚まし時計を鳴らすが、心地よいものなら安楽に眠りを延長させることであろう。不快・苦痛をもたらすような刺激が覚醒を導く。目覚まし時計は、不快な音を出して放置できない刺激を与え、この音を止めねばと意識を現実へと引き戻す。
驚きも人を覚醒する。これは、思いがけないものに目を見張りこれを凝視して、その情報をとりこもうとする感情で、かならずしも苦痛に関わらない。好ましい新奇なものが出てきて凝視する驚喜は、快感情である。驚きの感情の表情は、目を丸く見開いたものになろう。これは、眠りから覚める状態ではとらない。とれない。眠りから覚めるときは、まず、しかめ面をして目蓋を少しずつ開いていく。そうして意識を取り戻して、新奇の驚くべきものがあれば、目をもっと見開いて驚くのである。目覚めには、外からの無視できない苦痛等の刺激で意識を取り戻し、おろした目蓋を開くことがなくてはならない。眠りでは目は蓋を閉じていてそとからの刺激を受け付けない状態なので、まずは、蓋をもたず外界と常時連絡のとれる耳、音に頼るのが普通である。耳は眠っているときも、外からの音を受け入れる身体的な構造になっている。古い時代の戦いでは、みんなの眠る夜中、不寝番は、拍子木を打ったり、弓の弦を鳴らして(魔よけの鳴弦、つるうち)安心させていたようである。その眠っている者の耳に、安心せよとの心地よい音ではなく、不快な起床の呼びかけの刺激を、意識を呼び起こすようなほどほどの苦痛刺激を与えるのが目覚まし時計であろう。
ひとを起こそうと行動する場合は、痛みを引き起こすぐらいに叩くとか、つねる等の振る舞いをすることもある。やさしく抱いたり、リズムをとってソフトに触れるのは、安らかに眠れというときである。眠気を醒ますには、逆に、冷水をあびるとか、打つとか刺すとか適度に痛覚を刺激して痛みを加える。苦痛は、生に危機を知らせる感覚であり、意識の即時的な対応を求めて、覚醒にと人を導く。