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犯則と処遇(連載第46回)

2019-05-16 | 犯則と処遇

39 少年司法について

 前章までの議論は、主として成人の犯則行為をめぐる司法手続きを念頭に置いたものであったが、本章では少年の犯則行為をめぐる司法手続きについて論じる。
 少年は未熟であるがゆえに、処遇との関係では将来の更生可能性に広く開かれた人格的可塑性という特質を持つが、反面、司法との関係では防御力の弱さという特質を持つため、そうした特質に十分配慮された固有の司法制度が用意されている必要がある。

 その点でまず問題となるのは、少年被疑者の身柄拘束のあり方である。中でも16歳未満の年少少年については、防御力の弱さに加え、身柄拘束が教育福祉上にもたらす悪影響をも考慮して、成人並みの身柄拘束は禁じられる(移動制限命令と出頭命令に関してはこの限りでない)。

 この年代の少年被疑者の身柄を何らかの形で確保したい場合は、「補導観護」という特殊な制度をもって対処される。これは少年被疑者を留置場でなく、少年観察所に収容する制度であって、身体のゆるやかな拘束を伴うが、拘束中も学習を課するなど教育的にも配慮されたものである。
 ただし、補導観護は成人なら第二種以上の矯正処遇相当の犯則行為を犯した疑いのある少年にのみ適用される。また、これも一種の未決拘束の制度であるからには、人身保護監の令状に基づかねばならないが、その令状審査に際しては教育福祉上の考慮も必要となるため、令状審査に当たっては少年審判を担当する少年審判委員の意見を求めなければならない。

 一方、16歳以上の少年被疑者については成人同様の身柄拘束が認められるが、勾留は成人なら第二種以上の矯正処遇相当の犯則行為を犯した疑いのある場合に限り、勾留期間も成人の半分の日数(15日)に制限される。
 また留置場所に関しても、成人区画からは完全に遮断された別区としなければならない。留置場の構造上、完全別区とすることに限界がある場合は、少年観察所を代用する。

 さて、少年事件の処理は少年処遇を適用するかどうかによって手続きが大きく分かれる。以前に触れたように、18歳未満は少年処遇の絶対的適用となるが、18歳から23歳までは該当者に対する科学的な鑑別を経て決定される。
 後者の場合はひとまず通常の真実委員会→矯正保護委員会という二段階手続きで行なわれるが、真実委員会の審決の後、矯正保護委員会の審査において少年処遇を課するかどうかの決定がなされることになる。

 これに対し、少年処遇の絶対的適用となる18歳未満の場合は、通常の司法手続きとは異なる少年審判が行われる。通常の司法手続きと異なるのは、少年審判においては真実委員会と矯正保護委員会の二段階手続きを経ず、一回の少年審判で決せられる点である。
 少年審判は非公開で行なわれ、少年審判委員は原則として単独で審判に臨むが、複雑な事案では、二名態勢で臨むことができる。被審人たる少年は一人以上の付添人を立てることができるが、付添人の一人は法律家でなければならない。


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