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共産法の体系(連載第15回)

2020-03-07 | 〆共産法の体系[新訂版]

第3章 環境法の体系

(3)世界地球環境法の基本原則
 前回見たように、世界地球環境法(条約)の根本理念は「持続可能な共存」であるが、この根本理念からすると、世界地球環境法の最大の目的は、生物多様性の保全(回復を含む)となる。それは同時に、同法における第一の基本原則をも成す。
 ここで生物多様性という場合の「生物」には人類も含まれる。従って、人間以外の動植物の保護だけに限局されるものではなく、人類を含むすべての種の保護が目指される。
 次いで、第二の基本原則は天然資源、中でも水の保全である。言うまでもなく水は全生物にとって不可欠の資源であり、地球が多様な生物の共存を可能にしてきた最大の理由は水資源の豊富さにある。
 持続可能性に配慮された共産主義は水をはじめとする天然資源の共同的な民際管理を可能にするが(拙稿参照)、その法的根拠は経済法以前に環境法に置かれる。まさに「持続可能的計画経済」と呼ばれる所以である。
 第三の基本原則は、人為的な気候変動の防止である。これは現今、「地球温暖化対策」の名で国際的な優先課題として取り組まれているところであるが、資本主義体制では温暖化の元凶である資本の活動を法的に制約することができないため、国際的にも国内的にも決断的な合意が形成される見込みはなく、常に微温的な合意にとどまる。人為的気候変動対策は持続可能的計画経済を備えた共産主義において初めて実効的となるだろう。
 以上の三つが、世界地球環境法における三大基本原則である。この三つは言わば目的的な原則であるが、これら三大原則を達成するための手段的な原則として、慎重の原則が明記される。慎重の原則とは、環境的有害性が科学的に証明されていなくても、明らかに非科学的でない限りは、環境負荷的な行動を回避しなければならないという原則である。
 類似の原則として、予防の原則があるが、これはこれは100パーセントではないが、ある程度科学的に予測される環境有害事象の発生を防止するための行動を義務づける原則であるのに対し、慎重の原則は理論上可能的な環境有害事象に対しても、念のための回避策の選択を義務づけるより踏み込んだ原則である。


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