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世界共同体憲章試案(連載第11回)

2019-10-25 | 〆世界共同体憲章試案

第8章 世界経済計画

〈世界経済計画機関〉

【第29条】

1.世界共同体は、生態学的な持続可能性を保障する地球規模での経済計画を策定するため、世界経済計画機関を設置する。

2.世界経済計画機関は、基幹的な各産業部門の世界組織の代表者及び汎域圏経済協調会議事務局長並びにその他所定の評議員で構成される上級評議会によって運営される。

3.上級評議会による機関運営を専門的に補助する内部組織として、専門家委員会を設置する。

[注釈]  
 世界共同体は、生態学的な持続可能性の保障を最大任務とする民際機構として、地球規模の経済計画を策定・運用する。その中核的機関となるのが、世界経済計画機関である。この機関は、官僚制行政機関ではなく、基幹産業部門の世界組織を主体とする合議制機関である。第2項の条約とは、本憲章とは別途定められる世界経済計画機関設置規程を指す。

【第30条】

1.世界経済計画機関は、世界経済計画の枠内で直轄自治圏の経済計画を立案するため、下部機関として、各直轄自治圏の代表者によって構成される直轄自治圏経済計画委員会を設置する。

2.直轄自治圏経済計画委員会は、直轄自治圏の経済計画の策定に当たり、専門家委員会に準じた地位及び権限を有する。

3.前二条の規定は、信託代行統治域圏の経済計画に準用する。

[注釈]  
 直轄自治圏はいずれも小規模な領域であり、各自個別に経済計画を立案することが困難であることから、世界経済計画機関が、直轄自治圏経済計画委員会を通じて直接に経済計画を立案する。なお、信託代行統治域圏も、信託統治が継続する間、世界強度体の直轄下に置かれるから、経済計画の立案も直轄自治圏に準ずる。

〈計画の策定及び議決〉

【第31条】

1.世界経済計画機関は、三年に一度、世界経済計画を策定する。この策定作業は、現行計画が終了する一年前に着手する。

2.世界経済計画は、世界的な環境予測を基本としながら、世界における需要と供給の見通しを考慮した世界的な生産の量的計画と生態学的な持続可能性を維持するに有益な生産方法の規制から成る全体計画と、各汎域圏ごとの環境状況及び人口を参酌した需要と供給の見通しを考慮した生産計画を定める地域計画の二部で構成される。

3.世界経済計画機関上級評議会は、専門家委員会が作成した計画草案を討議したうえ、正式の計画案を議決する。

4.上級評議会の議決は、出席した評議員の過半数の賛成による。

5.上級評議会が草案を否決する場合は、意見を付して専門家委員会に差し戻さなければならない。差し戻しを受けた専門家委員会は、直ちに修正案を作成し、上級評議会に提出しなければならない。

[注釈]  
 世界経済計画の策定に関する規定である。世界経済計画案は、三か年計画を基本とし、世界経済全体の計画案である全体計画と、全体計画の範囲内で五つの汎域圏ごとの個別的な計画案である地域計画の二部構成とする。直接的には、地域計画が各領域圏の経済計画の指針となる。

【第32条】

1.世界経済計画機関は、策定した計画案を七日以内に汎域圏全権代表者会議に提出し、その承認を受けなければならない。

2.全権代表者会議は、計画案を承認した後、三日以内に持続可能性理事会に送付しなければならない。

3.全権代表者会議は、計画案を承認しない場合、理由を付して世界経済計画機関に差し戻さなければならない。差し戻しを受けた世界経済計画機関は、直ちに計画の修正案を提出しなければならない。その手続きは、前二条の定めるところによる。

4.持続可能性理事会は、送付された計画案について、他の案件に先立って審議し、決定しなければならない。持続可能性理事会は、決定に際し、その職権により、計画案を修正することができる。

5.持続可能性理事会は、前項の規定によって決定した計画案を直ちに総会に提出し、議決を求めなければならない。

6.総会は計画案の修正を求めることができる。この場合、世界経済計画機関は、迅速に修正案を策定しなければならない。その後の手続きは、前五条の規定による。

[注釈]  
 世界経済計画機関が策定した計画案の民主的な議決手続きを定める規定である。図式的にまとめれば、全権代表者会議の承認→持続可能性理事会の決定→総会の可決という順になる。持続可能性理事会が可決した計画案の迅速な成立を保証するため、総会は計画案を全面的に否決することはできないが、修正を求めることはできる。


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