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共産教育論(連載第21回)

2018-12-03 | 〆共産教育論

Ⅳ 基本七科各論

(4)科学基礎
 科学基礎科目は、諸科学の基礎を学ぶ科目である。ここで言う「科学」は最も狭義の自然科学に限らず、一部人文・社会科学にまたがる広義の「科学」を意味している。その点で、伝統的な学校教科としての「理科」より広範囲に及び、伝統教科の「社会科」に一部またがる領域を持つ。
 科学基礎科目は、ある程度以上の抽象的な思考力を要するため、基礎教育課程の中等段階(ステップ3以降)から開始される。また如上のように基本七科中で最も広範囲であるだけに、当科目は以下の三つの下位系統に区分され、担当教員も各系統ごとに専任される。

○自然・生命科学系
 これは伝統的な「理科」に最も近い系統である。本系統はさらに、生命体に関して学ぶ「生物分野」と物質に関して学ぶ「物質分野」とに分かれる。
 具体的な分かりやすさの点では、「生物分野」に優先性があるため、最初は「生物分野」、それも動植物の生態学的な理解から開始し、徐々によりミクロで抽象度の高い細胞生物学や遺伝学の基礎へと進む。最終段階では分子生物学の初歩までカバーする。また、人体の解剖学的構造や生理学など、基礎医学の初歩にも及ぶ。
 「物質分野」は、おおむね伝統的な物理及び化学にまたがる分野であるが、より基礎的な物理を中核とした内容であり、応用性の高い化学に関しては、元素周期表中、身近で基本的な物質に絞って学ぶにとどめられる。
 また物理に関しては、ニュートン以来の古典力学は割愛し、はじめから最新の量子力学の体系に沿って教育される。古典力学は近似値的な説明理論としてはなお有効ではあるが、科学史上はすでに過去の学説であり、現代的な基礎教育の対象としては必須と言えないからである。
 なお、伝統的な理科教育で公式的に重視されてきた実験は、原則通信教育で提供される基礎教育課程では実施しない。実験は学術としての自然・生命科学の命題立証においては不可欠の方法ではあるが、市民的な科学教養を涵養する基礎教育課程の科学基礎科目においては必須と言えないからである。

○人文・社会科学系
 これは社会科学に属する分野のうち、「地理分野」と「経済分野」を取り出した系統である。伝統的な教科では「社会科」に包含されてきたが、この二つの分野は社会科学の中でも最も客観性が高いことから、科学基礎科目に含めて教育される。
 この系統は自然・生命科学に比べてもいっそう抽象度が高いため、基礎教育課程の中等段階後期(ステップ5以降)から、しかも分かりやすさの点で優先性の高い「地理分野」から開始される。ここでは世界の地理的な特質とそれぞれの地理的区分における生活様式の対応関係の理解が中心となるが、地理において欠かせない地図の読解や測量法といった技術的な理解にも及ぶ。
 「経済分野」は、抽象度が高度なため、基礎教育課程後半(ステップ7以降)からの開始となる。ここでは共産主義経済の基本的なメカニズムについて、歴史的な他の経済体制と比較しながら学ぶ。

○地球・環境科学系
 これは地学的な理解を踏まえ、地球環境を保全するための環境学的な理解にも及ぶ系統である。伝統的な教科では地学に近いが、それだけにとどまらず、環境経済学など社会科学的な分野にもまたがる文理総合系統である。
 その応用総合的な内容からしても、上掲二つの系統の集大成に近い領域であり、基礎教育課程の終盤(ステップ10以降)で提供される。
 本系統は総合領域のため、分野を厳密に分けることは難しいが、おおむね「地学分野」と「環境分野」とに分けられる。「地学分野」では地球物理学や気象学の基礎を学ぶ。なお、伝統的な「地学」には天文学も含まれるが、本系統ではあくまでも地球の科学的な理解に資する限度で、他の天体との比較に及ぶにとどめられる。
 「環境分野」は、文理総合的な環境学の基礎を学ぶ。これは最も応用性の高い分野であるだけに、基礎教育課程の最終盤(ステップ12以降)で提供されることになる。


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