ザ・コミュニスト

連載論文&時評ブログ 

「女」の世界歴史(連載第2回)

2015-12-29 | 〆「女」の世界歴史

第Ⅰ部 長い閉塞の時代

〈序説〉
 
「女」の世界歴史を大きくとらえると、長い閉塞時代を抜け出し黎明期を通って近現代の伸張と抑圧が同時並存する時代へという流れを見て取ることができる。図式化すれば、(一)長い閉塞の時代→(二)黎明の時代→(三)伸張と抑圧の時代という三区分になり、かつそれしかない。この点で、男性視点による通常の世界歴史の時代区分より単純である。
 もちろん、三つの時代区分それぞれの内部にいくつかの小区分を設定することはできるが、大きな節目で分ければ三区分に包括されてしまう。それだけ、歴史時代の「女」の位置づけは限定されている。
 それ以前の先史時代の「女」の地位については証拠の乏しさから、解明されていないことが多い。仮説的には女性が家長として家中を采配し、さらには社会集団の首長を務める母権制が先史社会論として提唱され、有力化したこともあったが、現代の人類学者はほぼ否定的なようである。とはいえ、現在も一部の民族社会に残る母系制には、かつて女性の役割がずっと高かったことの痕跡が残っているとも言える。
 少なくとも、狩猟と原始的な農耕を基本とした原始共産制社会では社会の中心となる家政を預かる女性の地位は高かったと推定できる。しかし、農耕の発達により生産力が向上し、次第に後の国家のプロトタイプとなる村落のような原始権力体が発生してくると、男性の地位は増強されたであろう。特に、村落同士の戦闘が盛んになると、体格・体力で勝る男性の戦士としての役割が高まり、武力を基礎とした政治権力も発生する。
 母権制がクーデター的に男権制に転換されたというような見方はもはや時代遅れかもしれないが、大きな流れで把握すれば、女性優位的な社会から男性優位的な社会に転換されたのが、歴史時代の始まりであると見ることができる。言い換えれば、女性がいったん表舞台から排除されるところから、歴史が始まる。
 それに伴い、筋骨隆々で勇猛な「男らしい」男性が歴史を作る指導者として理想化され、「男らしくない」「女々しい」男性、特に同性愛男性もおそらく同時に半女性化され、歴史から排除されたのである。
 こうして「女」は長い閉塞の時代に入っていく。その時代を扱う「第Ⅰ部 長い閉塞の時代」では、まず世界に出現する古代国家における女性の位置づけを確認した後、イデオロギー的にも男権優位が確立されていく「女」にとっては暗黒の中世時代を鳥瞰する。


コメント    この記事についてブログを書く
« 「女」の世界歴史(連載第1回) | トップ | 慰安婦問題「妥結」の禍根 »

コメントを投稿