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近代革命の社会力学(連載第251回)

2021-06-21 | 〆近代革命の社会力学

三十七 韓国民主化革命

(1)概観
 1959年のキューバ社会主義革命は青年革命運動の成功例であり、世界の青年運動を大いに刺激することとなった。その結果、1960年代以降、中産階級が成長した諸国では、学生を中心とする青年の急進的な運動が展開されていった。
 キューバ革命の翌年、1960年の日米安全保障条約改定に対する日本における大規模な反対闘争も、革命に発展することこそなかったが、時の岸信介首相は条約改定自体には成功しながら政権を維持できず退陣に追い込まれたため、倒閣という限定効果を持った大規模な青年抗議運動となった。
 一方、同じ1960年の4月、日本からの独立を経て十数年を経た韓国で、学生を中心とした抗議運動が革命(4.19革命)に発展し、初代大統領李承晩の独裁化した政権を打倒し、民主的な新憲法の制定につながる民主化革命を成功させた。
 韓国では、日本統治時代から、節目においてたびたび学生が反体制抗議運動の主体として台頭してきており、4.19革命もその延長上の事象と言える面はあるが、同時に、1960年代を通じて世界に拡散する青年革命運動の嚆矢となる事象でもあった。
 4.19革命後も、韓国では政局の節目で学生の抗議運動が発生することが法則的な流れとなったが、政体変更を結果する革命にまで発展したのは、現時点では4.19革命が唯一の事例となっている点で、特筆すべきものがある。
 しかし、冷戦期、南北朝鮮分断という特異な状況下にあって、民主化の急進が共産化につながることを危惧した保守派少壮軍人グループによるクーデターにより、4.19革命は一年ほどで挫折し、以後は、軍部を権力基盤とする独裁的な軍人政権が1980年代後半まで続いたため、4.19革命は未完に終わる。
 しかし、その後の軍人政権下でも、学生を中心とする民主化運動は苛烈な弾圧の中でも継続され、最終的には平和的なプロセスを経て軍人政権の終焉と民政の確立を導くこととなったという限りで、4.19革命には長期にわたる残響的な余波があったと言える。
 さらに、4.19革命は、一定の年月を置きつつ、アジアの新興諸国において、1970年代以降90年代にかけ、タイやフィリピン、ビルマ(現ミャンマー)、インドネシアなどで継起する民主化革命(未遂を含む)の先駆けともなった。


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