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共産法の体系(連載第43回)

2020-06-03 | 〆共産法の体系[新訂版]

第8章 法曹法の概要

(1)法務士と公証人
 法とそれを適用して種々の争訟を解決する司法の運用に当たっては、法律事務や司法職務を専業とする法律専門家(法曹)という担い手の存在が不可欠である。後に述べるように、司法分野における人工知能の活用も推進されるが、人工知能を運用するのもまた、人間たる法曹にほかならない。
 法曹の資格や職務権限などを定める統一的な法律が存在するわけではないが、本章では、法曹に関する定めが置かれる諸法を「法曹法」と総称して、その概要を見ていくことにする。
 弾劾司法の分野を除いて、基本的に裁判所という伝統的制度によらない共産主義的司法制度の下では、法曹のあり方も資本主義社会のそれとは大きく異なってくる。裁判所制度が存在しないことにより、当然ながら裁判官という職務は存在せず、また刑事事件を中心に国側代理人として法廷に立つ検察官の職務も存在しなくなる。
 一方、民間にあって法律事務を専業とする法律家は不可欠であるが、その任務の中心は法廷弁論ではなくなるので、弁護士というよりは法務士という新たな専門職に純化される。
 そのうえで、これまでに見た衡平委員や真実委員、護民監その他の司法職は、法務士の中から所定の手続きにより任命されることになる。その意味で、法務士はあらゆる司法職の統一的な人的給源となる。
 他方、裁判所制度が存在しないことにより、公的証明を専業的に行なう公証人の任務が重要となる。古い歴史を持つ公証人は契約その他の法律関係を証明する公正証書を作成し、法的紛争を未然に防止するうえで決定的な役割を負うため、法務士と並ぶ第二の法曹として、改めて明確な位置づけを与えられる。
 これら法務士と公証人を併せた法曹の養成は、高度専門職学院の一つである法学院を通じてのみ行われる。すなわち法学院を修了し、法務士または公証人の資格試験に合格して初めて法曹として合法的に業務を行なうことができることになる。
 ただし、最終的に法務士となるには、二段階にわたる法務士試験の初級段階に合格してまずは法務士補となる必要がある。法務士補の業務は後に述べる企業等の法務部署等の私的法務職域のほか、公的法務職域の補助職に限られ、法務士としての業務を単独で行なうことはできない。
 いさかか迂遠ではあるが、法務士補として所定の年数の経験を積んだうえで、最終試験に合格すると、正式の法務士となる仕組みである。共産主義社会では、全般的に専門職も一回的な試験だけで終身間地位が保障される特権ではなく、徒弟制的なプロセスで養成されていくことの反映である。


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