ザ・コミュニスト

連載論文&時評ブログ 

共通世界語エスペランテート(連載第4回)

2019-06-14 | 〆共通世界語エスペランテート

第1部 エスペランテート総論

(3)世界語の条件

世界語の三条件
 
(1)でみたように、世界語とは世界中で通用しうる共通語として計画的に創案された言語のことであるが、そのような言語であるための条件とはなにか。この問題は、特定の言語を世界語として普及させるうえで不可欠の検証事項であるはずであるが、意外に議論されていないようにみえる。

 当然ながら、特定の個人なり集団なりが特定の言語を単に世界語として企画・創案したというだけで世界語となるわけではない。ある計画言語が世界語でありうるためには、それなりの条件をそなえていなければならない。
 したがって、伝統的なエスペラント語が所期の目的どおり、現実的な世界語たりえていないとすれば、それはエスペラント語が世界語の条件に不足している点があるためではないかとの推定がはたらくのである。
 ここに世界語の条件とは、ある言語が慣用上でなく公式に世界語となるためにそなえているべき性質のことをいう。世界語でありうるための適格性といいかえてもよい。そのような条件にも、おおきくわけると絶対条件と相対条件、さらに付加条件とがある。
 絶対条件とは、そのなのとおり、世界語でありうるために絶対にそなえていなければならない条件、いいかえれば、それをかくかぎり、世界語とはなりえない条件のことである。
 これに対して、相対条件とは世界語でありうるために絶対そなえていなければならないわけではないが、そなえていなければ事実上世界語として普及しがたいような条件である。
 最後の付加条件とは、それをかいていても世界語たりうるが、そなえていれば世界語としての普及をより促進するであろうような条件のことである。

具体的な条件 
 世界語たりうるための上記三条件をより具体的にいえば、まず絶対条件として「言語学的中立性」がある。これは、その言語が特定の民族言語でないだけでなく、世界中のどの既存語族にも属しないことを意味する。
 したがって、かりにある計画言語が語彙や文法の点でインド‐ヨーロッパ語族なりシナ‐チベット語族なりといった特定の既存語族に分類可能であるかぎり、それは世界語たりえないことになる。
 世界語は言語ナショナリズムをのりこえ、世界中のすべての民族が共有する言語であるからには、特定の語族に属することは中立性をかき、言語ナショナリズムから自由になれないからである。 
 もう一つの絶対条件として文字言語であるということがあげられる。世界語ははなしことばとしての事実上の共通語ではなく、公式に公用語として通用するものでなくてはならないから、かきことばとしても完成している必要がある。したがって、文字言語であることは絶対条件である。
 このばあい、「言語学的中立性」からして、文字体系に関しても特定民族言語の文字体系に依拠してはならないかどうかについては議論の余地があるが、これに関しては次章であらためて検討する。
 次に、相対条件として「習得容易性」がある。要するに、どの民族言語を母語とするものでも簡単に習得できることである。習得困難な言語が世界語たりえないわけではないが、実際上世界語として普及しにくいであろうから、習得容易性は相対条件となるのである。
 なお、「習得容易性」と表裏一体の相対条件として、「教授容易性」を想定してもよい。これは、そのなのとおり、語学教育の容易性ということであるが、通常習得容易な言語は教授も容易であるから、独立の条件としてあげる実益はとぼしいかもしれない。
 これにくわえ、もう一つの相対条件として「自然言語近似性」がある。すなわち、世界語は計画言語でありながら、自然言語にちかい語彙や文法構造を有している必要があるということであるが、これに関しても、該当節で詳論する。
 最後に、付加条件として「ジェンダー中立性」がある。これは言語体系自体にジェンダー差別的な要素がないことを意味する。この点、おおくの民族言語がなんらかのジェンダー差別的な要素―とりわけ女性差別的要素―をもっているが、世界語は今日の世界規範となっているジェンダー平等に合致しているべきである。
 さらに「ジェンダー中立性」も包括される一般的な付加条件として、「非差別性」すなわち差別的語彙・表現をもたないことまで拡大することはよりのぞましい。


コメント    この記事についてブログを書く
« 共通世界語エスペランテート... | トップ | 共通世界語エスペランテート... »

コメントを投稿