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近未来日本2050年(連載第16回)

2015-08-20 | 〆近未来日本2050年

四 弱者淘汰政策

社会強靭化計画
 ファシズムの社会政策面における特色として、優生学的な弱者淘汰政策が計画的に追求されることがある。それは単なる結果的な弱肉強食の競争原理の称揚にとどまらず、より意図的な国策としての差別政策である。
 2050年日本の議会制ファシズムにおいては、「社会強靭化計画」と名づけられた優生学的政策が展開されている。すなわち深刻な人口減少の中、勤勉な人間の遺伝子を継承して、少数精鋭の強靭な社会を構築するというのである。
 「頑張る人、応援します」が、そのキャッチコピーである。ここでは、純粋な優生学でなく、日本的な「努力主義」の倫理観と結びつけられていることが特色である。従って、ナチスの優生学のように障碍者を体系的に抹殺するというような形式的なものではなく、障碍者でも障碍を克服すべく「頑張る人」は応援するという趣旨が含まれている。
 この点で目玉政策となっているのが、事前審査制の精子バンクである。これは学歴や職歴、収入・資産から病歴、身体条件、思想信条に至るまでの厳正な事前審査に合格した男性の精子を保存する公的な精子バンクである。民間の精子バンクとは異なり、これを利用する女性の側にも共通内容の厳格な事前審査が課せられる。
 この制度は当然にも、優生学的な差別を助長するとの批判に導入時からさらされているが、強制断種のような排除型の優生政策ではなく、個人の努力も加味し、障碍者をも包摂する選別型の優生政策であり、人口減少の中で日本人の優等遺伝子を継承し、社会を維持する政策として正当化されている。
 もう一つは、遺伝子検査・特定健診を35歳以上の全国民に義務化する政策である。これは遺伝子検査の結果、病因遺伝子が発見された場合、特定健診及び保健指導を義務付け、従わない者には健康保険の被保険者資格停止の制裁が課せられるというものである。
 このように国民に一律的な健康状態を強制する政策は「健康ファシズム」とも批判されるが、これについても、国民の健康保持の努力を促進し、予防・早期治療による医療費削減に多大の寄与をしていると宣伝されている。


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