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世界共同体憲章試案(連載第20回)

2019-12-26 | 〆世界共同体憲章試案

第13章 平和維持及び航空宇宙警戒

〈平和維持巡視隊〉

【第75条】

1.世界共同体は、武力紛争を防止し、恒久平和を確保するための常備武力として平和維持巡視隊を組織する。

2.平和維持巡視隊は、平和理事会の監督下に司令委員会を通じて運用される。司令委員会は、運用本部を指揮監督する。

3.司令委員は、平和理事会の理事領域圏から各一名ずつ平和理事会がこれを選任する。運用本部長は、司令委員会の推薦に基づき、平和理事会がこれを任命する。

[注釈]
 世界共同体は、構成領域圏に常備武力を保持することを禁ずる一方で、武力紛争の防止任務に特化した必要最小限度の民際常備武力として、平和維持巡視隊を保持する。常備組織である点で、案件ごとに組織される現行国際連合の平和維持軍とは異なる。

【第76条】

1.平和維持巡視隊の派遣は、個別の案件ごとに平和理事会が策定し、総会が承認した運用指針に基づいて、これを行う。

2.平和維持巡視隊の活動方法及び権限は、各運用指針においてこれを定める。

3.汎域圏全権代表者会議は、必要と認める場合、平和理事会に対して、平和維持巡視隊の派遣を要請することができる。

[注釈]
 特記なし。

【第77条】

1.平和維持巡視隊は、地上部隊及び海上部隊から構成される。その他部隊編成の詳細については、別に定める組織規程により定める。

2.平和維持巡視隊の駐屯地は、予め世界共同体と協定を締結した領域圏内に設置される。

3.平和維持巡視隊は、運用上の必要に応じて、世界共同体航空宇宙警備隊及び各領域圏の沿岸警備隊と連携して活動する。

[注釈]
 平和維持巡視隊は基本的に地上武力であるが、海上での臨検や人員・物資輸送などの活動を展開するため、海上武力も保持する。平時維持巡視隊は常備武装組織である以上、予め世界共同体と協定を締結した領域圏内の定まった駐屯地に分駐する。

【第78条】

1.平和維持巡視隊の武装要員は、総定員50万人を超えない範囲内で、汎域圏ごとに人口に比例して割り当てられた定員の範囲内で、予め世界共同体と協定を締結した領域圏から募集される。

2.平和維持巡視隊の武装要員の訓練は、運用本部が管理する訓練センターにおいて実施される。

3.平和維持巡視隊の武装要員は階級呼称を持たず、その地位及び任務の内容によってのみ業務遂行上の指揮命令系統が規律される。

[注釈]
 平和維持巡視隊の要員は、総定員50万人を上限として、汎域圏ごとの人口比例的割り当ての範囲内で、要員供出の協定を締結した領域圏が供出する。例えば、汎アメリカ‐カリブ域圏に10万人割り当てられるとすれば、当該汎域圏に属する協定領域圏が、その数に達する要員を供出する。すべて任意の募集であり、徴兵に相当する制度は存在しない。

【第79条】

平和維持巡視隊の武器及びその他の物資の調達は、平和維持巡視隊の調達本部が担う。調達本部は、予め指定された企業体から必要な武器及びその他の物資を調達する。

[注釈]
 平和維持巡視隊は常備武装組織であるから、武器やその他の物資の調達も常置部門としての調達本部が指定企業体を通じて行う。

【第80条】

1.平和維持巡視隊による武力行使は、その業務遂行に必要な最小限度の範囲内で認められる。特に、対人的な加撃的武力行使は、要員または第三者の人身を保護するために必要不可欠な場合に限られる。

2.平和維持巡視隊の要員は、上級要員の法令または運用指針に違反する命令に服してはならない。

[注釈]
 平和維持巡視隊は軍隊ではないが、武装組織であるから、状況により武力行使が認められるが、それは必要最小限度でなくてはならず、特に相手方に人的損失をもたらす対人的な加撃的武力行使は、正当防衛状況が認められる場合に限られる。その点では軍隊よりも警察に近いと言える。
 一方、要員には上級要員に対する不当命令服従拒否が認められる。これは任意に行使できる権利ではなく、履行を要する義務である。従って、上級要員の不当命令を拒否せず、服従した要員も懲戒処分を免れないことになる。


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