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核特権体制の破綻

2016-02-07 | 時評

「(称)水爆実験」「ミサイル(称人工衛星)」と、このところ立て続く北朝鮮の軍事的示威行動は、戦後世界秩序の要である核拡散防止条約体制の破綻をまざまざと示している。

核拡散防止と言えば聞こえがよいが、その実態は第二次世界大戦の主要な勝者であった五つの大国にだけ核武装の特権を容認するという虫のよいものだ。しかも、その執行方針は一貫しておらず、支離滅裂である。

例えばインド、パキスタンは北朝鮮と同様、条約を無視して公然と核武装しているが、両国に対しては核放棄へ向けた圧力はかけられていない。またイスラエルの核武装は公然の秘密でありながら、査察を受けることなく、事実上黙認されている。

このような状況で、北朝鮮にだけ核放棄を強く要求しても、説得力を持たないことは明らかである。国際社会は定型化された非難と制裁を繰り返すのではなく、このことを強く認識する必要がある。

いまや、選択肢は二つに絞られる。すなわち、五大国が共同して今すぐ核放棄へ向けたプロセスを開始するか、さもなければ、世界のすべての国に核武装の権利を平等に認めるか、である。

どちらにせよ、脱‐核拡散防止体制であるが、前者は文字どおり核廃絶のプロセスであり、核開発を企てる諸国に対して最も説得力のある選択肢である。後者は地球を核兵器で埋め尽くす人類滅亡へのカウントダウンの選択肢である。

どちらを選択するのか、まさにとしての、動物としての人間の決断が問われる岐路である。


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