第2部 エスペランテート各論
(5)種々の構文④
Ⅴ 関係構文
エスペランテートに関係詞は存在しない。関係節は関係記号〈 〉でかこう。音声にたよる口語では、関係記号を音声化することができないため、先行詞と関係節の直前(下例ではbungoyとmoのあいだ)で一拍あける音声ルールを適用する。
祖語のエスペラント語のばあい、英語と同様に疑問詞を転用した関係詞が存在し、しかも関係詞は先行詞の数・格(目的格)に連動して語尾変化するという英語以上に複雑な規則がある。
しかし、エスペランテートに関係詞は存在しないので、文意の混乱をさけるため、補助記号をもちいる必要がある。たとえば、「わたしは、きのうかったはなたばを、こいびとにおくった」というばあい、「(わたしが)きのうかった」の部分を関係記号〈 〉でかこう。
Mo donis ar moa amato bungoy <mo acheti hierau>.
これによって、構文上は関係詞をもたない中国語や日本語にちかづくといえるが、関係節を後置する点では相違があることが留意される。
すなわち、<mo acheti hierau> bungoyのように、関係節を名詞(このばあいはbungoy:はなたば)のまえに配列することはできない。その点では、英文で関係詞を省略したばあいの語順に類似するといえる。
「うちのにわにさいているバラ」のように、関係句の主語が先行詞と一致するばあいは、関係句の主語に先行詞に対応する人称代名詞(下例では、三人称単数)をおく。このばあいの人称代名詞は実質的な意味をもたない形式主語である。
rozo <jo bungi nun en moa gardeno>
たとえば、上例を変更して「あなたがはなたばをおくった女性はだれですか。」という文では、本来の語順ならdonis ar tiu hwemo(あの女性におくった)となるはずの前置詞arが、つぎのように後置詞化される。
Kiu esti tiu hwemo〈bo donis bungoy〉ar ?