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共通世界語エスペランテート(連載第14回)

2019-07-13 | 〆共通世界語エスペランテート

第1部 エスペランテート総論

(13)エスペランテートの創出②

新たな計画言語として
 
当連載とはタイトルちがいの実質的な旧版『検証:エスペラント語』では、エスペラント語を正統語法と公用語法にわけつつ、エスペラント語の改訂版としての公用エスペラント語なるものを提案していた。
 ここで、正統語法とは正統的な文法にのっとった語法であり、エスペラント語でいえばまさに「エスペラント語の基礎」16箇条を厳守した語法のことである。これに対し、公用語法とは口語体ほどくだけてはいないが、正統語法を改訂して公用語としてよりつかいやすくした改訂版という趣旨であった。
 この点、自然言語のばあいには正統語法がもっとも公式的な語法としてそのまま公用語法でもあることがほとんどで、日常的な慣用語法は口語体としてむしろ非公式の語法とみなされる。ただ、自然言語のばあいでも、たとえばインドネシア語のようにマレー語の一方言を地域の共通語としてある程度人工的に簡略化して形成された公用語も存在する。
 一方、ノルウェー語のように、公式標準語として、旧宗主国の公用語だったデンマーク語の影響を受けたブークモール(文章語)とノルウェー独自の方言を統合して人工的につくられたニーノシュク(新ノルウェー語)―その意味では、計画言語にちかい―の二種類を公認するという二重国語政策を採用するくにもある。
 正統語法と公用語法をわけるというかんがえはこのノルウェーの国語政策にちかい面もあるが、ノルウェーにおいても国民全体で共有されているのはブークモールであって、ニーノシュクは学校教育ではおしえられているものの、日常語としては普及はしていないという。
 エスペラント語を正統語法と公用語法にわけるという旧版における管見は、正統英語―とはいえ、これも英語圏のくにのかずだけ存在するが―とチャールズ・オグデンによって創案されたベーシック英語の関係性によりちかいかもしれない。
 しかし、このように一つの言語に正統と簡略の二つの語法体系を公認し、並存させることは、両語法をつかいこなせる知識人層と簡略語法しかつかえない大衆層を分離するある種の言語階級制をつくりだす懸念もあり、かならずしも健全な言語政策ではないかもしれない。
 また筆者が提案した公用エスペラント語は、変更不能なエスペラント16箇条の一部改訂にふみこみ―その時点で、エスペラント語からの離反とみなされる―、実際、語彙や文法においてもエスペラント語からはかなり離脱するものとなったので、これを「公用エスペラント語」とよぶことはふさわしくないと再考するにいたった。
 そのため、旧版の提案を変更し、本連載ではあらためてエスペランテートとなづけた新計画言語として提示しなおすこととした次第である。エスペランテートという命名は、序文にもしるしたとおり、簡略化されたエスペラント語という含意による。このあらたな計画言語の具体的な詳細については、第2部で概説していく。


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