第3部 エスペラントとエスペランテート
第2部では、筆者の創案にかかるエスペランテートの基本的なしくみについて、必要に応じて祖語エスペラント語と対照しながら説明してきたが、最後にあらためてエスペラント語との文法上の異同を総覧的にまとめておく。
以前にものべたとおり、エスペラント語には変更不可とされる16箇条の基本文法則があるところ、エスペランテートはこれらに変更をくわえているため、別言語とみなされるのであった。そこで、以下では第2部の記述との重複をいとわず、16箇条がどのように変更されているか、対照しつつみていきたい。
各項目において、青字でしめされた法則がエスペラント16箇条の概要(一部要約)であり、⇒記号とともに赤字で付記された記述はエスペランテートにおける異同点である。
(1)冠詞
不定冠詞は存在しない。いずれの性、格および数にも不変の定冠詞(la)があるのみである。
⇒冠詞は、不定冠詞・定冠詞ともに存在しない。
(2)名詞
名詞は語尾-oをもつ。複数形をつくるには語尾-jをくわえる。格は主格と対格の二つのみである。対格は主格に語尾-nを付加してつくられる。その他の格は前置詞のたすけをかりて表現する。
⇒名詞は格変化をせず、したがって対格語尾も存在しない。主格および対格以外の格は、前置詞のたすけによる。結果的に、格を重視する必要はない。
(3)形容詞
形容詞は-aでおわる。格および数については名詞のばあいと同様である。比較級はpli、最上級はplejでそれぞれあらわされ、比較級では接続詞olがもちいられる。
⇒形容詞は、格および数による語尾変化をしない。比較級、最上級はそれぞれbrin 、brejであらわされる(lがrに置換)。比較級の接続詞(・・・よりも)は、エスペランテート独自のzanがもちいられる。
(4)数詞
基数詞(語形変化なし)は以下のとおりである。
unu(一)du(二)tri(三)kvar(四)kvin(五)ses(六)sep(七)ok(八)naŭ(九)dek(十)
cent(百)mil(千)
十および百のくらいは単純に数詞をくみあわせてつくられる。
序数詞をつくるには形容詞語尾-aをつける。倍数(二倍、三倍…)は接尾辞oblで、分数(二分の一、三分の一…)は接尾辞on、集合数(二人ぐみ/二個セット…)は接辞op、分配(二人ずつ/二個ずつ…)はpoという単語であらわされる。また、数詞を名詞として、または副詞としてもちいることも可能である。
⇒基数詞は、四以下がつぎのようにことなる(いずれも語尾が母音でおわり、vはbwに、lはrに、ŭはuに置換される)。
kbwar(四)kbwin(五)sesu(六)sepu(七)oku(八)nau(九)deku(十)
centu(百)miru(千)
倍数接尾辞はobro、集合接尾辞はopu、分配数接辞はhwoである。