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人類史概略(連載第18回)

2013-11-26 | 〆人類史之概略

第8章 電気革命以後

電気革命と高度資本制
 18世紀に突破口が開かれた機械革命は、次の19世紀に入ってもなお途切れることなく、今日まで連続革命的に継起しているが、19世紀における画期は電気の普及であった。
 電気という物理現象自体は古代から気づかれていたと言われるが、これを単なる物理現象としてではなく、産業的な動力源として実用化し得るようになったのは、19世紀も末以降のことである。
 18世紀機械革命の象徴として登場した蒸気機関は動力源として画期的であったが、エネルギー効率の点ではいまだ後進的であった。これに対して、電気を動力源とすることはエネルギー効率を高め、生産活動をいっそう大量化・高度化する契機となったし、市民の日常生活をも大きく変革していくのである。
 電気革命初期の20世紀初頭にロシア革命を指導したレーニンは「共産主義とは、ソヴィエトプラス電化である」という言葉を残したが、これをもじれば「資本主義とは、マネープラス電化である」と定義づけすることもできるだろう。
 こうして発電機が発明されたことを契機に電気の実用が始まって以降の用具革命のプロセス全体を「電気革命」と規定することができるが、現時点の人類もそうした「電気革命以後」の時代を生きていると言える。
 電気革命は同時に、新たなエネルギー革命を伴っていた。すなわち石炭から石油への転換である。電気と石油が結ばれたことで、生産活動は量的にも質的にも飛躍していく。
 この間、用具革命の主役にも入れ替わりがあった。18世紀機械革命の主役は何と言っても英国であったが、続く電気革命の主役は英国からドイツ・米国に移っていくのである。
 電気革命においても、最初のきっかけは発電機を発明したファラデーのような英国人が作っているが、実業家としても大資本ジーメンス社の創業者として成功を収めるドイツ人発明家ジーメンスや米国の発明王エジソンが出た頃から、電気工学分野の主要な発明はドイツや米国で打ち出されていくようになる。
 その理由を確定するのは難題であるが、ドイツや米国はいずれも後発資本主義国として、英国に追いつき、追い越すことを目標として驀進していく中で、新たに登場した電気技術の開発を基軸的に追求していったことが考えられる。
 こうして19世紀末から世紀をまたいで20世紀初頭にかけての電気技術の発達は、工場の自動化を推進する大きな力となり、より効率的で集約的な大工業を可能とし、工業に基盤を置いた資本制の高度化を促進する。米国やドイツには、大規模な独占・寡占企業体が出現し、英国型の国家に後援された個人資本家の資本主義を凌ぐ今日的な法人資本主義の先駆けとなっていった。
 他方、20世紀に入ると、ロシア→ソ連をはじめ、資本主義に反発して、社会主義体制を標榜する諸国が現れたが、それは土地私有制を否定し、国家に産業労働の主導権を与えた限りで(国家社会主義)、東洋的な公地公民制の近代的な再現に近い側面があった。しかし、この体制は結果として、言わば国家が独占資本家に比定される国家資本主義に収斂していった。


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