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世界共同体憲章試案(連載第22回)

2020-01-03 | 〆世界共同体憲章試案

第14章 基本的人権

〈総則〉

【第68条】

1.あらゆる動植物は、固有の生存権を有する。人間は、野生の動植物が地域的な生態系の均衡を害し、または人間に対して明らかな害を及ぼさない限り、それらを保護し、生物多様性を保持する義務を負う。

2.すべての人間は、生存の基礎となる衛生的な水及び清浄な大気にアクセスし、並びに健全に保たれた持続可能な生態系を享受する権利を有する。

[注釈]
 現行国連憲章は基本的人権に関する条項を含まず、人権に関しては、規範性を持たない「世界人権宣言」、及びその規範化としての社会権、自由権を定めた条約としての二本の「国際人権規約」に分離しているため、国連憲章は批准するも、人権規約は批准しない加盟国も存在する。
 これに対して、世界共同体憲章はその内に基本的人権条項を含むため、構成領域圏にはこれら条件条項を遵守する義務が課せられる。逆に言えば、人権条項を保留して世界共同体に参加することは認められないことになる。
 本条は、そうした基本的人権条項の筆頭条項である。はじめに、人間を含むすべての動植物の生存権という全生命体に通じる基本権をベースにして、人間に生物多様性の維持を義務付けつつ、生物としての人間が生存の基礎となる良好な地球環境を享受する権利を定めたものである。

【第69条】

1.人間の尊厳は不可侵であり、すべて人は、いかなる場所においても、法の下において、人として認められる権利を有する。

2.すべての人は、人間としての尊厳を維持し得るに足りる健康にして文化的な生活を営む権利を有する。すべての人は、人間としての尊厳が脅かされたときは、いかなる場所においても、迅速に必要な救援及び保護を受ける権利を有する。

[注釈]
 本条は、前条に規定された全動植物の生物としての生存権を前提に、社会的な生物である人間特有の尊厳性と、それに基づく社会的・文化的な生存権を保障する総則規定である。

【第70条】

すべての人間は、その尊厳と諸権利について、本質的に平等である。人間は、その理性と良心に基づき、互いに同胞の精神をもって協働しなければならない。

[注釈]
 前条を受けて、尊厳ある人間の本質的な平等及びそうした平等な人間の理性と良心に基づく相互協働義務を定める規定である。まさに、世界共同体の設立趣旨の表現とも言えるものである。

【第71条】

1.すべて人は、いかなる事由による差別も受けることなく、この憲章に掲げるすべての権利と自由を享有することができる。

2.すべての人は、法の前に平等であり、また、いかなる差別もなしに法の平等な保護を受ける権利を有する。すべての人は、この憲章に違反するいかなる差別に対しても、また、そのような差別を助長するいかなる行為に対しても、平等な保護及び救済を受ける権利を有する。

3.正当な理由に基づく公平な区別または選別は、本条に定める差別に該当しない。また、差別を解消することのみを目的とする施策の一環として導入される特別措置についても、同様である。ただし、その特別措置の内容が特定の人に対して著しく不公平である場合はこの限りでない。

[注釈]
 前条の平等規定を受けて、差別の包括的禁止及び法の前における平等を定める包括条項である。第三項の規定からも、禁止される差別とは正当な理由に基づかない区別もしくは選別、または正当な理由には基づくも、不公平な区別もしくは選別を指すことになる。
 また、差別解消施策(いわゆるアファーマティブ・アクション)としての優遇等の措置は原則として差別に該当しないが、その内容が特定の人にとって著しく不公平である場合は、差別に該当し得る(いわゆる逆差別)。


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