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比較:影の警察国家(連載第62回)

2022-06-26 | 〆比較:影の警察国家

Ⅴ 日本―折衷的集権型警察国家

1‐1‐4:サイバー警察の創設

 警察庁の組織構制に関連する近年の重要な改正として、まさに本年2022年4月に新設されたサイバー警察局がある。これは全国都道府県警察によるサイバー犯罪の取締りを統括する警察庁の中央部局であり、1994年に創設されていた情報通信局を改廃したものである。
 従来の情報通信局が警察通信や所管行政の情報管理といった内部業務に対応する部署であったことを改め、近年深刻化するサイバー犯罪への対策に特化した新部局として創設されたのが、サイバー警察局である。
 この新制の特徴として、警察庁の地方機関である関東管区警察局に全国の重大サイバー事案を直接捜査する「サイバー特別捜査隊」を設置したことである。これは中央の警察庁が自ら捜査するものではないが、同庁地方機関が全国を管轄するという変則を通じて、事実上警察庁が直接捜査するに等しく、警察庁が統括管理機関にとどまっていた従来の制度を改変する重要な一歩となる。
 これにより、警察庁が従来にも増して中央統制を強めることになり、都道府県警察の国家警察化が進行することになるという効果の他にも、サイバー警察が中央で統合されることにより、インターネットに対する警察監視が強化されることが想定される。
 その点、つとに情報通信局時代の1999年から同局内にサイバー監視のナショナルセンターとなる情報技術解析課が設置されており、2001年には同課内にサイバーテロ対策技術室が設置され、インターネットを常時監視し、関連情報の集約や分析を行う態勢が整備されてきた。この態勢はそのままサイバー警察局に移管されている。
 さらに、これまた本年成立した侮辱罪の刑法罰則強化とも関連して、政治的な情報統制が強化される可能性も秘めている。その点、侮辱罪は私人のみならず、政治家その他の公人に対しても当然成立する犯罪であるから、政治的な言論が侮辱罪に問われる可能性を拡大し、従来からの公安警察の活動強化と連動することで、「サイバー公安警察」のような影の警察活動が出現することも想定される。
 現時点では発足したばかりであり、国際的関心事でもあるサイバー犯罪対策の一元的強化という趣旨にも対外説明として一理あることは確かだが、今後、サイバー警察が如上の広がりを見せれば、刑事警察と政治警察が複合したより広汎な「情報警察」へと進展する可能性もあり、注視される。


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