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共産法の体系(連載第37回)

2020-05-16 | 〆共産法の体系[新訂版]

第7章 争訟法の体系

(3)経済司法
 経済司法は、経済法をめぐる紛争の解決を目的とする司法の分野を指す。経済法には経済計画法・企業組織法・労働関係法、さらに広義の経済法として土地管理法の3プラス1の計四分野があり、各分野に対応して紛争の内容及び処理方法も異なる。
 このうち経済計画法に関しては、紛争が発生する余地は少ない。なぜなら、経済計画は計画対象企業が経済計画会議(以下、単に「計画会議」という)を通じて共同で策定する規範だからである。ただし、対象企業が計画に違反した場合、計画会議は計画違反の生産活動の差止と関与した役職員に対する制裁を求めることができる。
 このような計画違反に対する対抗・制裁措置は計画会議の審問会を通じて実施される。この審問会は計画会議内に設置されるが、メンバーは中立的に選出され、計画会議はその判断を左右できない独立的付属機関であり、告発された当事者には弁明・反証の機会が保障される。
 企業組織法関連では、経営機関と労働者代表機関や組合員の間での経営判断をめぐる紛争が想定される。これについては、監査機関に差止のような準司法的な機能を付与することによって、内部的に処理される。これは公式の司法ではなく、企業内で紛争を自治的に処理する企業内司法と呼ぶべき制度である。
 監査機関で処理し切れない複雑な紛争案件については、次の労働紛争に該当する場合を除き、外部の法律家で構成される中立的な企業紛争調停委員会が処理する。
 労働関係法関連では、労働紛争が想定される。もっとも、共産主義的企業体では労使の対立が止揚されているため、深刻な労働紛争は通常想定できないが、個別的には労働者と所属企業の間で労働条件等をめぐる紛争は発生し得る。
 そのような労働紛争は、まず第一段階として企業内第三者機関である労働仲裁委員会が処理する。これは当該企業と利害関係を持たない法律家で構成される調停機関で、やはり企業内司法の一種である。
 労働仲裁委員会は、少数人の協同労働グループを除くすべての企業体で常置が義務づけられ、労働紛争は、労働護民監への跳躍出訴が認められるハラスメント事案を除き、先行的に企業内の労働仲裁委員会での仲裁を経なければならない。
 多くの場合はこの段階で解決するが、解決しない場合は、労働護民監への出訴により公的な解決に委ねられる。これは労働紛争を専門的に解決する護民司法の一環である。護民司法については後に改めて述べるが、護民監の審決は終局性を持つ。
 市民法と経済法の中間的な位置づけを持つ土地管理法をめぐっては、私人間はもちろん、私人‐公法人間で土地をめぐる紛争が起こることも通常考えられない。なぜなら、共産主義における土地は、何人にも属しない無主の自然物として、各領域圏が土地管理機構(以下、「管理機構」という)を通じて管理するからである。
 ただ、私人は管理機構の許可を得て土地上に所定用途の不動産たる建造物を所有できるほか、管理機構の許可を得て土地利用権の譲渡等もできるが、こうした土地利用権をめぐって管理機構との間で紛争が生じた場合は、管理機構の独立的付属機関である土地利用権審判会(以下、「審判会」という)で解決される。
 審判会は法律家で構成される審決機関であり、管理機構と相手方当事者はそれぞれ証拠を示して主張を展開し、争うことができるが、審判会の審決には終局性がある。
 なお、私人が特定の土地区画を管理機構に無断で占拠する場合は不法占拠となり、暴力的手段や詐欺的手段を用いた悪質な事例は土地管理法違反の犯則行為として告発され、次項(4)で見る犯則司法の対象となることがある。

:企業間で紛争が生じた場合は、法人企業も集団的な市民であるから、市民法紛争に準じて、衡平委員が調停する。

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