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共産法の体系(連載第18回)

2020-04-02 | 〆共産法の体系[新訂版]

第4章 経済法の体系

(1)共産主義的経済法の意義
 一般に経済法とは、経済体制のいかんを問わず、経済活動のあり方を規律する法体系である。資本主義体制下では、自由経済の基本となる独占禁止法を中核に、経済活動の規制に関わる諸法を広く含むことが多い。
 ただ、資本主義は所有権と売買契約を経済活動の法的土台とするため(いわゆる私的自治)、これらを規律する私法(民法)が法体系の出発点となり、経済法は二次的な法体系にとどまる。共産主義においても私的自治が妥当する領域は残されるので、私法に相当する市民法が別途制定されるが、その位置づけは経済法に劣後する。
 共産主義社会における経済法は、環境法に次いで重要な意義を担う。前章で見たように、共産法の体系上、環境法は最高法規の憲章に次ぐ優先性を持つので、経済法も環境法の規律下に置かれることになる。
 それは、大きく経済計画法・企業組織法・労働関係法の三つの分野に分けられる。筆頭の経済計画法は共産主義経済の基本となる計画経済のシステムを規律する法であり、共産主義的経済法体系の中核を成す。
 次いで、企業組織法は計画経済下での各種企業組織のあり方を規律する法であり、資本主義では会社法に相当するが、もとより共産主義社会に営利企業は存在しないため、企業組織は種別を問わず、非営利組織である。
 三つ目の労働関係法は労働基準法を中心とする労働者の権利を保障する法であるが、労働と経営の分離を前提とする資本主義的な労働法とは異なり、労働と経営の合致を本則とする共産主義経済にあっては(拙稿)、労働関係法も経済法の一分野に位置づけられる。
 実際の立法に当たっては、これら三分野はそれぞれが別個の法律として制定されるのではなく、すべてが一本の経済法典としてまとめられる。この点でも、多数の法典の集積・総称にすぎない資本主義的経済法とは大いに異なる。
 なお、経済法典とは別途、無主物たる土地の管理について定める土地管理法は、土地の利用権についても規律し、市民法と経済法の中間域にある法律だが、これも広い意味では経済法に含まれるので、本章で扱う。


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