ザ・コミュニスト

連載論文&時評ブログ 

しぶとい大阪ファッショ

2015-11-22 | 時評

先般の大阪府・市統合に関する住民投票否決、さらに維新の党の分裂で風前の灯かと思われた大阪維新勢力が、府・市W首長選に圧勝し、蘇生した。先の住民投票も僅差否決であったから、蘇生の予兆はあったのだが、なかなかしぶとい大阪ファッショである。

振り返れば、この勢力は、全国政党化するに当たり、当初は反動的価値観を共有する老国粋主義者の小党と合同したが、そうした守旧的戦略ゆえに国政選挙で伸び悩むや合同を解消し、今度は新自由主義経済政策の面で近い保守系小政党と合同した。

ところが、両者は元来、政治的価値観の面では齟齬があったため、集団的安保法成立後の野党再編方針への対処をめぐり党内対立が生じると、一転、分裂を画策して事実上解党、再び地域政党に立ち戻ることで、蘇生を果たしたと言える。巧妙という見方もできるが、まさにこのような露骨に根無し草的な党利党略こそ、ファシズムの特徴を示している。

ただ、再び地域政党に立ち戻ったことで、この勢力が全国を席巻する可能性はひとまず遠のいたとも言えるが 予断は許さない。例えば、地域政党のまま連立与党入りする可能性はある。W選では表面上「対決」する形となった政権与党、とりわけ自民党は実際のところ、大阪維新勢力とは価値観と政策を共有し合っているからだ。

もう一つの可能性は、集団的安保法成立以来、弾みがついている改憲国民運動と結合して、新たな全国政党を結成することである。これは毛色の異なる反動勢力との合同ということになり、またしても失敗する可能性はあるが、実現すれば台風の目となり得る。

いずれにせよ、現代大阪は日本型ネオ・ファシズムの根城となってきたことは間違いない。以前も指摘したように、大阪人が抱く東京への対抗心・反骨精神がファッショ的に刺激されているのだろうか。別の発露もあると思われるのだが。

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「恐怖からの自由」で連帯

2015-11-22 | 時評

パリ同時テロで、フランスの最右翼政党・国民戦線が勢いづいているという。「戦線」とまるで武装組織のような名称を持つ同党は、今後欧州で躍進する可能性のある「反移民ファシズム」のまさしくフロントランナーとなるかもしれない。

かつての戦線はナチとも重なる反ユダヤ主義が売り物だったそうだが、反ユダヤ主義が時代遅れとなった現在は、反移民―ほぼイコール反イスラム―を売り物としている。

さしあたりは、移民規制強化のような一般的な保守系とも重なる主張にとどまっているが、それだけでは一般的保守との差が出せない。そこで一歩踏み込んで、国内の移民の追放/収容を持ち出す可能性がある。そこからさらに突き進んで、移民の大量抹殺まで行けば、現代版ナチスの完成である。

当面は、来月予定の統一地方選が最初の試金石とされる。近年のネオ・ファシズムは地方政治から出てくることも多いので、実際、ここで戦線が躍進すれば、国政選挙にも影響する。そして、2017年予定の大統領選で史上初の戦線系大統領誕生へ・・・・。

しかし、そう簡単に問屋がおろすかどうか。かつてナチス・ドイツに占領されたフランスを含め、欧州には反ファシズムの免疫があるはずだからだ。しかし、テロがさらに打ち続けば、免疫も利かなくなるかもしれない。

新たな免疫は何か。この点、パリ同時テロの後に主催されたトゥールーズでの「反テロ・デモ」を伝える時事通信のいつもながらの短文記事に、母とデモに参加したという8歳児の言葉が紹介されていた。曰く、「自由っていうのは、襲われることなく踊ったり映画館に行ったりできること」。

これは世界人権宣言にも明記されている「恐怖からの自由」の8歳児なりの「解釈」である。「襲われることなく踊ったり映画館に行ったりできること」は先住国民のみならず、移民やその送出源となるシリア等の源地国民も等しく望むところのはずだ。

言い換えれば、「恐怖からの自由」を旗印に、先住国民と移民、さらに源地国民は連帯することができ、そのような連帯こそ、これら三者の間を分断し、先住国民至上の社会を作ろうとする反移民ファシズムへの免疫ではないか。

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