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近未来日本2050年(連載第15回)

2015-08-08 | 〆近未来日本2050年

三 思想/情報統制政策(続き)

情報管理
 議会制ファシズム体制は、憲法上形のうえでは表現の自由を保障しているため、「言論統制」という言い方を好まず、代わりに「情報管理」と呼ばれる一連の言論政策が展開されている。
 その第一の柱は、マス・メディア対策である。この点、言論統制の代名詞である検閲制度は存在しない。その必要がないのである。なぜなら、新聞・テレビの大手メディア幹部が参加する内閣官房長官の私的諮問会議として時事懇談会が常設機関化され、官製報道の中枢機関として機能しているからである。そのため、大手メディアでは政権批判的な報道は消失している。
 またNHKが総務大臣所管の独立行政法人に格上げされ、実質上国営放送としての性格が濃厚となり、NHKに政府広報専門チャンネルも増設されることで、国策報道が正面から展開されている。
 さらに国家情報調査庁が大手メディアで多数の記者を契約諜報員として囲い込み、政策的リークにより情報操作をしているとの噂があるが、当然にも実態は秘密のベールに包まれている。
 一方、インターネット上の情報管理に関しては、通信事業者に法令及び公序良俗違反言説の削除義務を罰則付きで課す規定が存在する。また有事や騒乱時にインターネット接続を法律上の権限に基づき政府機関が包括的に強制遮断する制度が存在するが、平時でも国家情報調査庁や防衛軍情報保安隊のサイバー監視部門が秘密裏に問題サイトへの接続を遮断する措置を取っているとも言われている。
 さらに旧来の特定秘密保護法がファシスト政権下ではより拡大されて、機密保護法に再編され、機密漏洩罪は最大で無期懲役刑を科せられる重罪とされている。しかし市民の知る権利を制約するこうした圧制を批判することは国家尊厳法違反に問われる恐れがあり、公然たる批判は見られない。
 これらの情報管理政策とは別に、より直接的な世論対策として、多数のコピーライターや心理学の専門スタッフを擁するファシスト与党の世論局が、政権の公式キャッチコピーやネットへの匿名書き込みなど、表裏様々なチャンネルを用いた心理的世論操作を担当しているとされる。
 「言論統制」ではないとの建前から、集会・デモの自由も形のうえでは保障されるが、公共秩序維持法によって原発なども含む重要公共施設周辺でのデモ・集会は禁止されているため、大衆行動は事実上封じられている。
 さらに反政権的な集会・デモにはファシスト与党の傘下にあると噂される国粋青年組織が突撃し、運営を妨害する行為が繰り返されるが、警察・検察はこうした不法な活動も愛国的動機に基づく酌量すべき行為とし、事実上免責している。

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