黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『少女探偵は帝都を駆ける』芦辺拓(講談社)

2009-10-06 | 読了本(小説、エッセイ等)
昭和10年。初の大阪公演を行うことになった、<エノケン>こと榎本健一。
大阪でレストラン・カフェー<ヒラタ>を経営する父を持つ、府立芝蘭高等女学校4年の平田鶴子と、東京に本社を持つ仮名文字新聞の大阪支社で働く若き新聞記者・宇留木昌介の2人は、そんな彼を観ようと、大阪劇場にやってきた。
ところがその会場に怪人が現れ、エノケンを誘拐。ちょうど通りかかった父の自動車で、犯人たちの車を追いかけた鶴子だちだったが……『名探偵エノケン氏』、
学校帰りの鶴子は、家の近くの路地で、何故かフルコースの料理が載った細長いテーブルを見かけるが、それはそのすぐ後には消失していた。
その話を宇留木に聞かせ、一緒にあれこれとその謎について考える中で、彼が出した答えが、“周囲の反対を押し切って荒海に乗り出さんとする”恋人たちの存在。鶴子はその話を聞いて、その条件にあてはまる恋人たち…近所に暮らす苦学生・紅沢彰吾と中国からの留学生・汪玉霞を思い浮かべるが……『路地裏のフルコース』、
新進漫才師・模談亭ラジオ・キネマが、レコードへの吹き込みをしている最中、キネマが銃で撃たれ殺された。
しかし現場から銃は見つからず、また発射された痕跡もなく……『78回転の密室』、
昭和10年初夏。大阪市内で、天然色のテレヴィジョンの研究をしている、真名部理工学研究所で、スポンサーである蒲生善之助が実験中に殺害された。
現場は、動画を受け取る、離れの実験室<受像室>。容疑者として疑われた真名部文蔵博士は、その時、母屋の<送像室>にいて、犯行は不可能であるかに思われたが……『テレヴィジョンは見た』、
上九のJOBK(大阪中央放送局)で生放送に出演していた、落語家・桂円団治のスタジオに暴漢が乱入。しかし、円団治はその場から姿を消していて、羽織だけが残されていた。
その後、彼の遺体が何故か電柱の上から発見されて……『消えた円団治』、
弱小プロダクション・大大阪キネマの看板俳優兼監督・壇原隼人が、川を渡るアクションシーンの撮影中、川に落下。
その後、川下で背中にナイフが刺さった状態の死体となって発見された……『ヒーロー虚空に死す』、
昭和11年5月。鶴子の通う女学校では、8泊9日で、関東から東北・北陸を周遊する修学旅行に出かけることに。
父の会社の業績不振により、一度はあきらめようとした旅行だったが、担任の鷹川英雄に説得されて参加することにした鶴子。
親友の西ツル子、おとなしい性格の鍵谷花枝、そして、女学校のクイン的存在である、華族令嬢・中久世美禰子らと共に列車の旅を楽しむ中、彼女たちが乗る急行列車に並走していた、特急の最後尾のデッキで争う2人の男の人影を見た鶴子と美禰子。
その後、豊橋駅で停車した鶴子たちの列車に、そのうちの1人の男が乗り込んできた。どうやら争っていた相手を探しているらしい。追い返した彼女たちだったが、その後、花枝が件の人物を匿っていたことが判明。彼女曰く、実は少女だというのだが……『少女探偵は帝都を駆ける』の7編収録の短編集。

昭和10年代の大阪を舞台に、探偵小説好きな16歳の少女・鶴子と新聞記者・宇留木が謎を解くミステリ。
随所に盛り込まれた時代独特の雰囲気が、良いですね。
わたしが図書館から借りた表紙と、amazon等で見る表紙が若干違うのですが、いくつヴァージョンがあるのか、ちょっと気になります…(笑)。

<09/10/5,6>


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