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黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『セシューズ・ハイ 議員探偵・漆原翔太郎』天祢涼(講談社)

2013-10-08 | 読了本(小説、エッセイ等)
急逝した父・善壱のあとをうけ、国会議員になった息子の漆原翔太郎。初登院早々に問題発言や問題行動連発で、バカっぷりを発揮。善壱に心酔し秘書になったものの、そんな翔太郎の第一秘書を任されてしまった青年・雲井進は苦労が絶えず、支持者を減らさないように奔走している。
そんな中、地元のZ県森山市の公園の管理をしている緑の森の会の代表・戸部夏子から持ち込まれたのは、引退した大物政治家・蜂須賀信造が画策する森山第九公園の取り壊し計画の阻止。支持率回復のため、引き受けようと考えている雲井の意に反して、翔太郎はきっぱり拒絶。美人秘書を餌を何とか巻き込むことに成功するが……“第一話 公園”、
地元の有力者・東堂拓が勲章が欲しいと言い出し…しかも二十年前に移動図書館を開設して、子供達に夢と希望を与えたという理由まで指定して、何とか根回しの末、受章内定までこぎつけた雲井。
しかし、突然エリート官僚の冴木響子から取り消しの連絡が。何とか思い直してもらおうと交渉にいった先で、彼女の口から生粋の東京人らしからぬ、Z県玄母地方特有の方言が……“第二話 勲章”、
選挙戦が始まった。翔太郎の対立候補は、元俳優である社会平和党の柳下誠一。翔太郎は苦戦を強いられる。大物秘書・宇治家曰くどうやらこちらの陣営にスパイがいるらしい。翔太郎が演説した同じ場所に、直後に柳下が現れているのだ。机の裏から盗聴器もみつかり、容疑者はボランティアスタッフ三人のいずれかではないかと思われ……“第三話 選挙”、
巨大グループ企業<宮門>は、善壱を支援してくれた企業だった。ところがその総帥である女傑・鉄子から今後一切かかわりなし、との誓約書へのサインを強いられた雲井。
何とかしようと体調不良をおして出かけた彼だったが、なすすべもなくサインすることになり、おまけに体調も悪化。事務所へ直帰する旨を電話し、寝込んでしまう。
その間に翔太郎が無断でインタビュー取材を受け、動画がネット上にあがるが、珍しく失言はなく、内容は板垣総理の所信表明演説に関するものだった。
ところが翌日、毎経新聞の政治部記者・橘佑樹があらわれ、その取材を受けたのは演説よりも前だと言い……“第四話 取材”、
所信表明演説かから二か月。さらに失言を繰り返す翔太郎だったが、先の一件以来馬鹿なふりをして何かを企んでいるのではないかという疑念に囚われている雲井。
そして十一月七日。ひとりで呼ばれてもいないZ県の小笠原知事の就任式に出かけてしまった翔太郎を追って、雲井も現地へ飛ぶことに。
宇治家や鉄子らの間で、善壱の悲願であった地域通貨ゼータを実現させるための不正があったのではと、それに絡み、何か仕掛けるつもりではないかと考えていて……“第五話 辞職”を収録。

馬鹿な言動が目立つ二世議員と、その彼のそばで苦労の絶えない青年秘書が関わる事件のあれこれを描いたお話。
どたばた加減も面白く読めました。雲井さんが振り回されて、ちょっとかわいそうですが;
続きが出るのか気になるところ。

<13/10/7,8>

『蝉声 河野裕子歌集』河野裕子(青磁社)

2013-10-06 | 読了本(小説、エッセイ等)
 生きるための本走に入る明後日より抗癌剤の点滴変はる
 来年もこの花たちに会へるやうも一晩一晩ふかく眠らねば
 一日ひとひ死を受けいれてゆく身の芯にしづかに醒めて誰かゐるなり
 死より深き沈黙は無し今の今なま身のことばを掴んでおかねば
 この子らの記憶の輪郭に添ひながら死に近づけるわたしの生は
 襟足が美しいと言ひし君のこゑ抗癌剤は君のこゑさへ奪ふ
 何でかう蝉はしづかに遠く鳴くものかされど夕蝉ふいに近づく
 書きとめておかねば歌は消ゆるものされどああ暗やみで書きし文字はよめざり
 月くらく落ちゆく暁に思ほへば逢ひたき人はなべて亡き人
 手をのべてあなたとあなたに触れたきに息が足りないこの世の息が


 河野裕子さんの最後の歌集。
 癌での闘病中、病床で詠まれた歌がほとんどで、口述筆記だったり、読めないほどの文字であちこちにメモされたものをご家族で解読されたりしたようです。
 内容的にもかなり切なくなりますが、最後の最後まで歌を詠み続ける歌人としての(というか表現者としての)姿勢に鬼気迫るものを感じました。

<13/10/5,6>

『盆栽/木々の私生活』アレハンドロ・サンブラ(白水社)

2013-10-06 | 読了本(小説、エッセイ等)
チリの首都サンティアゴに住む、作家志望の若者フリオ。
学生時代、彼にはエミリアという恋人がいた。ある作家の助手をすることになったと告げた途端にその話はふいになったが、エミリアにはあたかもその話が継続しているかのようにその作家の書く『盆栽』について語り……“盆栽”、
ある晩、絵画教室から戻らない妻を待ちながら、幼い義理の娘を寝かしつけるために自作の物語「木々の私生活」を語り聞かせる日曜作家のフリアン。
去来する過去の記憶、そして娘との未来は……“木々の私生活”を収録。

どちらも淡々とかつ散文的に描かれるお話。
チリの作家のようですが、『盆栽』とか日本モチーフが出てくるのがちょっと面白いですね。

<13/10/6>



『さくらゆき 桜井京介returns』篠田真由美(講談社)

2013-10-04 | 読了本(小説、エッセイ等)
二〇一一年十二月二十四日。クリスマスパーティの最中に、日本画の大家・野々村白仙の才色兼備の養女、野々村薔子がシャンパングラスで乾杯の直後、中毒死。
それから四ヶ月。同様に白仙の養子であった姉・倭文重と暮らす高校生の義弟の郁哉は心因性の不調に悩まされていたことから、スクールカウンセラーの薬師寺香澄と話すことに。彼から紹介された桜井京介という人物に相談する……“黄金の薔薇を手にして”、
六月初め、京都の古書肆・亜刺比亜書林の雇われ店長・中園英男が、金沢で川に落ちて亡くなって以降、店は休業している。
そんな中、店のオーナー・綴喜春太郎に集められた<水曜読書倶楽部>……亜刺比亜書林に集う愛書家たちは、誰が中園を殺したのかと彼から訊ねられる。中園を養子に迎えるはずだった綴喜は、その答えを聞かせてくれた人物に秘蔵の「エジプト誌」を譲るという。しかしその後、不可解な死体となって発見された綴喜。
水曜読書倶楽部のメンバーであった多田和昭は、その容疑者として疑われることにまり、彼の知り合いである郁哉は、事件について京介に相談をする……“それは魔法の船”、
二〇一二年十月五日。東京都下にある私立の名門高・松が丘学園の文化祭に、いじめを告発、さらに脅迫めいた内容の手紙が届いた。スクールカウンセラーの薬師寺は毒殺の可能性も指摘する。
そんな中、文化祭の準備に追われていた家庭科部の久保田が、きのこ鍋を食べて運ばれた。ドクツルタケというきのこの絵を描いていた生徒・庄司ゆきが疑われ……“白くてちっちゃな死の天使”、
ある日、私立W大学文学部教授神谷宗の家にやってきた少女・庄司ゆき。五年以上前からひとつ屋根に住んでいる薬師寺香澄が関わった少女である。名前を呼ばれることを極端に嫌う彼女の地雷をうっかり踏んでしまった神谷。
それからひと月ばかり後。誰かにつけられているらしいという彼女とようやく話す機会ができ同じ名を持つ友人の話をした。ゆきのコンプレックスの理由はそれが、愛されていた亡き兄の名・ゆうきにちなんだものであり、祖母に育てられた自分は逆に両親に愛されていなかったと感じていたからだった……“さくらゆき”の4編収録。

桜井京介シリーズその後のお話。彼が事件に巻き込まれているというよりも、だいぶ客観的なスタンス…というか、違う目(少年少女たち)を通しての書き方になっているので、謎な人物ですね(笑)。
アリスたちとは対照的に年を取っているこの世界の住人たちなので、京介はすでに四十路。でも相応な年の取り方が良い感じです。

<13/10/3,4>

『たぶんねこ』畠中恵(新潮社)

2013-10-02 | 読了本(小説、エッセイ等)
いつも寝込みがちな、廻船問屋兼薬種問屋長崎屋の若だんな・一太郎は、このところ体調も順調。
年も改まったある日。江戸通町周辺の大店の商人たちに跡取りとしてようやくお披露目された一太郎は、同様にその場で紹介された若者たちふたり…塗物問屋武蔵屋の跡取り幸七と、煙管問屋松田屋の息子小一郎…と顔を合わせる。
ひょんなことから三人で両国の盛り場で仕事を探し、自分一人の力で誰が一番お金を稼ぐことができるのか勝負することになってしまった若だんな。
盛り場を取り仕切る大貞親分の家に居候して、職探しからはじめるがなかなかうまくいかない。
やがて、幸七は見世物小屋の客引き、小一郎は武家の娘の人探し。一太郎は菓子を売るという商売を見つけるが……“跡取り三人”、
母おたえのつてで、十四歳の娘於こんが行儀見習いのために長崎屋にやってきた。しかしわがままな上、年頃なのに家事が何一つできず、教育係のおてつの叱られてばかり。
そんなある日、長崎屋に先日世話になった大貞親分の片腕・富松がやってきた。
先の一件で味をしめた大貞の思いつきにより仲人をすることになったのだが、思うように礼金が取れず、若だんなに相談に来たのだった。
結局笹川という金に困った御家人と、持参金をたくさん用意しているという本所の料理屋の娘お尚の見合い話が決まる。
そこへ河童の大親分禰々子がやってきて、手下の妹・お志奈の縁組を紹介して欲しいとやってきた。さらに逃げ出したい於こんまでが口を挟み出し、断るきっかけを失ったまま引き受けることに。
そして迎えた当日……“こいさがし”、
栄吉が修行先の安野屋の使いとして砂糖を仕入れにやってきた。一緒に連れてきた平太にはほとほと手を焼いている様子。
曰く、ひとくせある三人の小僧たち…平太と、大きな箱屋橋田屋の三男坊梅五郎と、口下手な表具師の息子文助…をあらたに雇い入れたのだが、その矢先主人と番頭二人が臥せってしまい、大童であるらしい。
平太は妖たちが悪口を言っているのが聞こえてしまい、売り物の高価な砂糖を投げつけた上捨て台詞を吐いて、逃亡。やむをえず、栄吉は彼を追って店を後にしたのだが、その後、妖たちが栄吉の行李に入って安野屋について行ってしまったことが判明。
店のお菓子を食べつくしてしまうのではと心配した若だんなたちは、安野屋へ向かうが……“くたびれ砂糖”、
川に落ちたらしく、怪我をした男。おまけに記憶を失っており、自分が誰かもわからないが謎の「若だんな」のことが口をついて出たりする。そんな彼は、よく効く薬を持っていたことから医者に間違われて、病んでいる老人を診て欲しいと引合されてしまう。老人は自分が妖だという古松。どうやら男の正体も知っていて、余命いくばくもない古松からあることを頼まれるが……“みどりのたま”、
神の庭から見越の入道が幽霊の月丸を連れて長崎屋にやってきた。古松とは逆に、しばらく神の庭にいた月丸は江戸へ戻りたいと望んでいるという。入道は力の弱い月丸が江戸で暮らしていけるのかを確認するためにお預かったのだというが、その話の最中、ひょんなことから月丸の入っていた巾着に若だんなが吸い込まれてしまう。
月丸と一緒に江戸の夜の町へ飛ばされた若だんな。月丸からなぜ江戸で暮らしたいのかを聞く中で、首玉に血をつけた猫を見つけてしまう……“たぶんねこ”の5編収録。

シリーズ。
久々に若だんなの調子が良いと思ったらやっぱり寝込む羽目になったりするのは、もはやお約束(笑)。
今回、ちょっとイラッとする子が満載なのが、何とも;

<13/10/2>

『何も持たず存在するということ』角田光代(幻戯書房)

2013-10-01 | 読了本(小説、エッセイ等)
食に対するあれこれや、身近なこまごまとしたことに関する雑感、直木賞受賞にまつわるコメント等を収録したエッセイ集。

新聞やいろいろ細かいところに寄稿したエッセイを集めたエッセイ集なので、内容が一部かぶっていたりもします。
角田さんのエッセイはおもしろくて好きなのですが(特に食にまつわる系)、さらに勝本みつるさんのオブジェが素敵な表紙に誘われました。
出版社の「幻戯書房」は、先日知った作家の故・辺見じゅんさんの出版社だし(お父さんの角川源義(げんぎ)氏に由来した名前なのかな?)。

<13/9/30,10/1>

『めためたドロップス』

2013-09-29 | 読了本(小説、エッセイ等)
右小指付け根あたりに切り取られ線があるのでたぶん信じて/ショージサキ
日本一ショートケーキがおいしいというケーキ屋にしまわれた雪/小川千世
あいうえおかきくけこさしすきでしたちつてとなにぬねえきいてるの/まひろ
黒板に書いては消してひとりきり試されているような静けさ/浪江まき子
なぜ春が嫌いだったか教えるよ はっさく持って鴨川に来て/奈良絵里子
「なあにそれ?」「せきばく」「バクの仲間なの?」「触ってみたら」「ひゃあ、つめたいね」/山田水玉
雲雀丘花屋敷行き急行にシュークリームを置いてさよなら/じゃこ
……7人の短歌女子による短歌アンソロジー。

いろんな意味で「かわいい」女子たちの短歌同人誌。
本の造形もカラフルでキュートでポップ☆
個人的にはじゃこさんの野生動物のかわいさが好きです(笑)。

<13/9/29>

『菩提樹荘の殺人』有栖川有栖(文藝春秋)

2013-09-26 | 読了本(小説、エッセイ等)
ミステリ作家・有栖川有栖(アリス)は、たまたまできた時間のゆとりを利用し、しばし世間との交流を断って読書にいそしんでいた。
その間に巷で発生していた、通り魔連続殺傷事件に進展があったらしい。担当編集者の片桐から聞いたところでは容疑者は逃走し、指名手配されたものの、高校二年の未成年の少年であったことから、顔と名前が伏せられていて各所で批判もあるという。
そんな中、八尾市で尾木紫苑という少女が刃物で刺される事件が発生、続いて座間剣介という少年の遺体も見つかる……“アポロンのナイフ”、
三月半ば。人気上昇中の若手漫才コンビ<雛人形>のひとりである、メビナこと矢園歌穂が大阪市内の自宅で殺害されているのが発見された。彼女の遺体は何故か奇妙な舞踏をしているような格好をしていた。
彼女とコンビを組んでいたのは帯名雄大。二人は一緒に組む前それぞれ違う相手とコンビを組んでいたという……“雛人形を笑え”、
梅田で買い物をしていたアリスは、大学時代の顔見知りである阿川アリサに再会する。現在は法律事務所で働いているという彼女から、思いがけず学生時代の火村の話を聞くことに。
裕福な御曹司・片平幸彦の自宅でパーティーが開かれることになり、阿川と他数名の学生たち、そして火村も参加した。火村以外の人間は先に来ていたが、その中のひとりが途中で車の接触事故を起こしていた。頭が硬そうな火村には黙っておこうという皆の了解の元、遅れてきた火村には黙っていたのだが……“探偵、青の時代”
七月。テレビでアンチエイジングを謳って有名となったカウンセラー・桜沢友一郎が殺害された。菩提樹荘という自らの所有する家の池で、服を脱いだ状態だったという。彼は実年齢の割に若々しく、数々の女性と浮名を流していた艶福家。
姉の亜紗子によると、現在は北澄萌衣と長束多鶴という二人と付き合っていたが、北澄には別の相手がおり、長束は逆に彼から別れを切り出されたものの納得していなかったという……“菩提樹荘の殺人”の4編収録。

今回はいろんな意味で「若さ」がテーマである模様……年を取らない常若の住人である彼らですが(サザエさん状態/笑)。
久々に火村たちの出逢いのエピソードが出てきたような気がしますね~。

<13/9/25,26>

『短歌の作り方、教えてください』俵万智×一青窈(角川書店)

2013-09-24 | 読了本(小説、エッセイ等)
短歌に初めて挑戦するシンガーソングライター・一青窈が短歌を詠み、それを歌人・俵万智が添削する中でよりよい短歌として作品を作り上げていく往復書簡(というかメール)集。
歌人・穂村弘を迎えた吟行会(お出かけした先で歌の題材を探す、出張歌詠み)、歌人・斉藤斎藤を迎えた題詠(テーマを決めて詠む)も収録。

短歌初心者の一青さんを俵さんがマンツーマンで添削し短歌を教える一冊。
一青さんが繰り出す独特な視点の歌や言語感覚も楽しく、そしてだんだんうまくなっていく様がおもしろいです。
短歌の入門書としてもかなりわかりやすく(直すポイントや過程が示されているので)、読みやすく、勉強になる本だと思います。

<13/9/24>

『山田富士郎歌集』山田富士郎(砂子屋書房)

2013-09-23 | 読了本(小説、エッセイ等)
うつくしき夢の廃墟はわれになし珍獣のためにまた人が死ぬ
あまりにもながき手脚をもてあます少年と見るプラネタリウム
秋空に黒き傘開いてゐるやうなやましさただに猫を愛する
外の面には天より降れる幾千の白猫うづくまり鳴きもせぬ
日常は夢さりながら黒猫が紅茶茶碗に足踏み入れる
今日午後のぼくの心の状態をそつと言はふか両性具有
死体なんか入つてゐないのが残念だあけたつていいようちの冷蔵庫
薔薇色に日焼けせる額かたむけてペーパーバックの百を読む
クリームパンのやうな手をして洗熊のやうなしつぽの猫が来た来た
黒猫のねむる体よりたちのぼるふかき匂ふをふかきがままに

二冊の歌集「アビーロードを夢みて」と「羚羊譚」と評論などをまとめたもの。
山田さんは新潟在住の歌人の方。ちらりと名前を耳にして気になっていたところで歌集を見かけたので、読んでみました。
猫とか金木犀とか個人的に好きなモチーフが結構出てくるので、好みです♪

<13/9/22,23>