江戸が明治に改まって20年。煉瓦街が並ぶ銀座は、夜を照らし出すアーク灯が灯る東京でも一番のモダンな街へと変貌していた。
大雨が降りだし、銀座煉瓦街にある四丁目の派出所に雨宿りのため駆け込んだ、騙しの伊勢という詐欺師は、その派出所に勤務する警官・原田と滝からある話を聞かされる。
銀座三丁目で牛鍋屋・百木屋の主、賢一(百賢)には、みなもという美人の妹がおり、身を寄せていた。やがて父親ほども年の離れている待合茶屋の主・下谷が、そんな彼女を見初め、大粒の翡翠のブロオチを渡してきた。
下谷の金回りの良さに不審を抱いていた原田たちは、彼が強盗事件に関わっているのではないかと睨む。
そんな中、みなもが警官を装った何者かに呼び出された後、その行方は杳として知れず……“第一話 煉瓦街の雨”、
百木屋の常連客である煙草商の赤手が、迷子を拾ったと派出所へやってきた。おきめという名の3歳ほどの娘で、何故かダイヤモンドを幾粒も持っていた。
派出所には泊める場所もないことから、百木屋で預かってもらうことにしたのだが、その間にもみるみる成長してゆくおきめ。やがてダイヤモンドを持っていたということが広まり、自分が親だと名乗り出るものが続出する。
そんな中、深川の金貸し・丸加根が自分が親だと言い張り、おきめを引き取っていったが、その後も成長を続けていたおきめは丸加根の嫁となり……“第二話 赤手の拾い子”、
原田が先頃妻を迎え、来年には子が生まれるというので、馴染みの面々と百木屋で祝っていた。
そこへ多報新聞の新聞記者だという高良田が現れ、その話の中から江戸橋近くで五人の遺体が打ち上げられていることを知った原田たちは現場に向かう。
折しも巷の新聞では、あらゆる事件の原因を妖怪に結びつけたがる記事ばかり載り、今回の事件も同じように騒動の種となる。
事件の被害者たちについて調べを進める原田だったが、新妻・靖子を拉致したと呼び出された彼は犯人に切り付けられてしまう……“第三話 妖新聞”、
壮士たちの集会に警備に出かけた原田と滝。その騒動の中で壮士に取り囲まれた男を助けたが、あおりを食らい滝は頭を殴られてしまう。
男は免許代言人の青山で、ある人物から妖怪のさとりに絡む事柄を依頼されており、それを原田たちにも手伝ってほしいと言う。最初は事情を話そうとしなかった青山だが、やがて柏田という人物が通りすがりの神社の祭神に恋をし、それ故だというおかしな理由を語り出す。
そんな中、赤手が行方不明になり……“第四話 覚り 覚られ”、
ひったくりに遭いそうになった資産家の女・伊沢花乃が、派出所で滝を見た途端、彼に何者かと詰め寄ってきた。
彼女は若い頃思いを寄せつつも、添い遂げることがかなわなかった相手と容貌も名前もそのままなのだという。しかしそれは20年前のことで、現在の年齢とは合わないのだった。
彼女は、財産を狙っているらしい人物たちによりたびたび危険にさらされているというのだが、そんな彼女が
滝に遺産を遺すと言い出して、騒動に巻き込まれることに……“第五話 花乃が死ぬまで”の五話収録。
明治の銀座が舞台。人間の世界にとけこんでるらしい妖怪たちのお話(?)。
あまりにあっさり退場してしまうヒトたちがやや切ない;
百賢はきっと件なんだろうな~(「牛」鍋だし、読みが「ひゃっけん」だし/笑)。続きそうなので、今後に期待。
<13/11/4,5>