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黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『広辞苑の中の掘り出し日本語 3 花鳥風月編』永江朗(バジリコ)

2013-11-22 | 読了本(小説、エッセイ等)
いさく、陰性植物、桜雲、早蕨、慕い葉……「花」、
海が涌く、於菟、慈鳥、赤卒、啄木……「鳥」、
靉靆、雨晴らし、風花、狐の嫁入り、光風……「風」、
明け残る、一天、海嘯、釘になる、澄み登る……「月」、
鴬呑み、南瓜野郎、草を結ぶ、双魚、空の煙……「補」、
広辞苑の中のから掘り出したいろんな言葉を紹介しつつ、語るエッセイ第3弾。

1冊目は読んでいたのですが、いつのまにか続編が出ていたのですね~。
今回は花鳥風月…自然にまつわる言葉について書かれています。
日本語にはなかなか気になる言葉が満載だったので、また広辞苑を開いてみたくなりました。

<13/11/22>

『クラウン伍長』斉藤真伸(書肆侃侃房)

2013-11-19 | 読了本(小説、エッセイ等)
しゃりしゃりと林檎を噛めば黄昏の帝国ひとつ砕けゆくかも
一九九九年七月号だけ欠けている「ムー」十年分お譲りします
凍て空の流星群にまぎれつつクラウン伍長の火葬はつづく
あああれは寂しいおとこの皿の上秋刀魚をあんなにきれいに食べて
ひとりひとり立ち去りし後のしずけさに弓のかたちに背骨を反らす
月光を千々に砕いて屋上のフェンスの影はわれに迫り来
親指のするどき痛みヒトはみな確信のなき殺人者かも
たましいのひとつひとつと思うまで飛子の軍艦巻きを噛み締む
わが顔になにを見たのか黒猫が桔梗のかげに毛を逆立てる
聞き慣れぬ名詞のために『世界で一番美しい元素図鑑』のページをめくる

新鋭短歌シリーズ。
クラウン伍長は、ガンダムに出てきたキャラクタらしいです(記憶にない…)。
いろんなところに題材を取った(漫画とか大菩薩峠とか)作品がありますが、歌的には至極真っ当というか真面目な感じ。

<13/11/19>

『提案前夜』堀合昇平(書肆侃侃房)

2013-11-18 | 読了本(小説、エッセイ等)
四季報と地図を鞄に詰め込んでゆく宛ての無い今日がはじまる
サワヤカナアサノクウキヲスイコンデラジオタイソウダイイチハジメ
「ナイス提案!」「ナイス提案!」うす闇に叫ぶわたしを妻が揺さぶる
褒められて育つタイプと新人が挨拶をする きらきらきらら
ゆうぐれの書架庫に集う人影はうつつのようなうつろのような
みな土に還る途中であるとしてこんなにも破り捨てる提案書
たましいのごとき一枚ひきぬけば穴暗くありティッシュの箱に
ひとりぶんの灯りの下でキーを打つ変更後機器明細三〇〇〇行
いっかいてーんにかいてーんさんかいてーんといいながら半回転をつづけるむすめ
解説書読み解けぬまま終点の一駅前に落ちる眠りは

新鋭短歌シリーズ。
サラリーマンの悲哀を感じる作品が多めです。
「ナイス提案!」~の歌には、ちょっと狂気すら感じます…。

<13/11/18>

『世界クッキー』川上未映子(文藝春秋)

2013-11-14 | 読了本(小説、エッセイ等)
髪や肌の感想、マッサージ等からだにまつわる話……“からだのひみつ”、
選択、個性、音楽について等ことばにまつわる話……“ことばのふしぎ”、
芥川賞、坪内逍遥大賞等各受賞のことば……“ありがとうございました”
子どもの頃のクリスマス、酔った醜態、春…等季節にまつわる話……“きせつもめぐる”、
タイで象に乗ったこと、対談のため出かけたドイツ等の話……“たび、けものたち”、
太宰、読書について、読書の不思議、等……“ほんよみあれこれ”、
慣れたときこそ慣れないものがある、寂しくなってふと覚えてる電話番号にかけてみた夜、包丁を握っていると苦しくなる理由、等日々のあれこれ……“まいにちいきてる”、
終わりの概念のふしぎ、たけくらべをよんで思う、想像力について、十代の終わりに太宰の墓参りをしたこと等……“ときがみえます”を収録。

エッセイ集。
内容は多岐に渡って、というか雑多にいろいろ(笑)。
川上さんが甥っ子と遊んでる時のエピソードが、爆笑。

<13/11/14>

『黙示録』池上永一(角川書店)

2013-11-11 | 読了本(小説、エッセイ等)
18世紀前半の琉球。最下層であるニンプチャーの村に生まれた少年・蘇了泉は、皆から忌避される天刑病に罹った母・美子麻と村を追われ、板芸の一座に入り、日銭を稼いでいた。ところがある日、花形が事故死し、一座は解散。
良くも悪くも人目をところを買われ、王府で踊奉行をしている石羅吾に拾われた彼は、母の病に効く万能薬が手に入れられると唆され、踊りを習い、江戸将軍家への使節として派遣される踊童子の試験を受けることに。
一方、清国で風水を学び帰国した蔡温は、琉球を王である<太陽しろ>とそれを支える<月しろ>に支配された王国であると考えていた。尚敬王が太陽としての輝きを増し、国を繁栄へと導くためには、月しろを探し出すことが大事であった。そんな蔡温の目に止まったのが、了泉。
幾度となく落とされつつも、何とか潜り込んだ彼は舞踊の天才である少年・雲胡と競いながら成長してゆく。
大坂、江戸、そして将軍・家継への謁見を経て踊りの道を究めてゆく了泉だったが……

王を支える「月しろ」という運命を背負った少年の一代記。アップダウンが激しくてまさに波乱万丈。踊りの対決はちょっと『ガラスの仮面』を彷彿とさせます(笑)。
いろんな困難に立ち向かっているけれど、何しろ汚いことを平気でやっちゃう性格なので、好き嫌いはだいぶありそう…(笑)。
巻き込まれてる周囲の人たちがだいぶ可哀そう…特に雲胡。

<13/11/9~11>

『発光地帯』川上未映子(中央公論新社)

2013-11-08 | 読了本(小説、エッセイ等)
自分の死後の遺言の実行について考える、子どものころ教会で聞いた神さまの証拠について、他、日常のあれこれについて綴ったエッセイ。

あとがきによると、どうやら最初は食のエッセイとして始まったものらしいのですが(あるいはその傾向で書かれる予定だったのか)、そこからは微妙に外れている感じ(外れているところを気にされつつも/笑)。そんな様子もまた楽しかったり。
ふわふわと自由に書かれているようで、ひとことひとことに光る何かがある気がします。

<13/11/7,8>

『声、あるいは音のような』岸原さや(書肆侃侃房)

2013-11-06 | 読了本(小説、エッセイ等)
かなしみがかなしくなくてくるしみもくるしくなくて熱だけのある
ふみふみと泣く子の夢を今日も見たふみふみとただふみふみと泣く
薄闇に(ほんとはね)って言いかけて、ふっと(ほんとう)わからなくなる
じゃんぐるじむうごけないよまんなかでぼうにからまるくつしたのよう
遠い夏くすりの糖衣をなめました 苦いところにとどくすれすれ
声だった、とても静かな声だった。楡の木蔭の泉のような
オルガンの和音をさがすでたらめな幼いゆびを母は咎めず
少年が昆虫図鑑をめくりゆく音が響いて木の図書館は
家かしら、ここ。部屋のまま、漂流してる。梨とわたしと子猫をのせて
ひっそりとなにかが終わり夜があける名づけられない世界を生きる

新鋭短歌シリーズ。
どこかしずかなさみしさのようなものが底辺に漂っている歌が多いような気がします。「ふみふみと~」の印象が強く残っているのか、親にはぐれた子どもの寄る辺なき悲しみような…。
特に、笹井さんとお母様との突然のお別れのあたりの流れが痛い…;;

<13/11/6>


『明治・妖モダン』畠中恵(朝日新聞出版)

2013-11-05 | 読了本(小説、エッセイ等)
江戸が明治に改まって20年。煉瓦街が並ぶ銀座は、夜を照らし出すアーク灯が灯る東京でも一番のモダンな街へと変貌していた。
大雨が降りだし、銀座煉瓦街にある四丁目の派出所に雨宿りのため駆け込んだ、騙しの伊勢という詐欺師は、その派出所に勤務する警官・原田と滝からある話を聞かされる。
銀座三丁目で牛鍋屋・百木屋の主、賢一(百賢)には、みなもという美人の妹がおり、身を寄せていた。やがて父親ほども年の離れている待合茶屋の主・下谷が、そんな彼女を見初め、大粒の翡翠のブロオチを渡してきた。
下谷の金回りの良さに不審を抱いていた原田たちは、彼が強盗事件に関わっているのではないかと睨む。
そんな中、みなもが警官を装った何者かに呼び出された後、その行方は杳として知れず……“第一話 煉瓦街の雨”、
百木屋の常連客である煙草商の赤手が、迷子を拾ったと派出所へやってきた。おきめという名の3歳ほどの娘で、何故かダイヤモンドを幾粒も持っていた。
派出所には泊める場所もないことから、百木屋で預かってもらうことにしたのだが、その間にもみるみる成長してゆくおきめ。やがてダイヤモンドを持っていたということが広まり、自分が親だと名乗り出るものが続出する。
そんな中、深川の金貸し・丸加根が自分が親だと言い張り、おきめを引き取っていったが、その後も成長を続けていたおきめは丸加根の嫁となり……“第二話 赤手の拾い子”、
原田が先頃妻を迎え、来年には子が生まれるというので、馴染みの面々と百木屋で祝っていた。
そこへ多報新聞の新聞記者だという高良田が現れ、その話の中から江戸橋近くで五人の遺体が打ち上げられていることを知った原田たちは現場に向かう。
折しも巷の新聞では、あらゆる事件の原因を妖怪に結びつけたがる記事ばかり載り、今回の事件も同じように騒動の種となる。
事件の被害者たちについて調べを進める原田だったが、新妻・靖子を拉致したと呼び出された彼は犯人に切り付けられてしまう……“第三話 妖新聞”、
壮士たちの集会に警備に出かけた原田と滝。その騒動の中で壮士に取り囲まれた男を助けたが、あおりを食らい滝は頭を殴られてしまう。
男は免許代言人の青山で、ある人物から妖怪のさとりに絡む事柄を依頼されており、それを原田たちにも手伝ってほしいと言う。最初は事情を話そうとしなかった青山だが、やがて柏田という人物が通りすがりの神社の祭神に恋をし、それ故だというおかしな理由を語り出す。
そんな中、赤手が行方不明になり……“第四話 覚り 覚られ”、
ひったくりに遭いそうになった資産家の女・伊沢花乃が、派出所で滝を見た途端、彼に何者かと詰め寄ってきた。
彼女は若い頃思いを寄せつつも、添い遂げることがかなわなかった相手と容貌も名前もそのままなのだという。しかしそれは20年前のことで、現在の年齢とは合わないのだった。
彼女は、財産を狙っているらしい人物たちによりたびたび危険にさらされているというのだが、そんな彼女が
滝に遺産を遺すと言い出して、騒動に巻き込まれることに……“第五話 花乃が死ぬまで”の五話収録。

明治の銀座が舞台。人間の世界にとけこんでるらしい妖怪たちのお話(?)。
あまりにあっさり退場してしまうヒトたちがやや切ない;
百賢はきっと件なんだろうな~(「牛」鍋だし、読みが「ひゃっけん」だし/笑)。続きそうなので、今後に期待。

<13/11/4,5>

『十階 2007』東直子(ふらんす堂)

2013-11-03 | 読了本(小説、エッセイ等)
つきあたりを曲って上に出てみれば焼野原かもしれないけれど(1/14)
気がすんだらしき獣がゆうるりとまるまってゆくとうめいな箱(2/7)
うつくしい一瞬だけでよかったの 川を流れてゆく柩たち(3/7)
夜が明ける刹那うつくし果てなしの世界をめぐる刹那うつくし(4/25)
水の上に花をうかべて流れ去るまでのようです一夜のことは(5/2)
さっきから同じ姿勢の青年のぎょうざの底のようにしずかだ(6/13)
迷い猫のら猫ひたに眠る猫ずっと探していた家はどこ(7/28)
木下闇にペットボトルを埋めている少年のシャツまだらにぬれて(8/6)
この星のどこへ逃げても鱗粉を散らし散らして消えるのですね(9/26)
夜の街めざして落ちてくる雨のひとつぶの記憶てのひらに沁む(10/20)
ヨーグルト一匙すくうようにこの悲しい痛み食べてくれぬか(11/19)
あたらしい手帳に記す約束の時間と場所とあなたのことば(12/31)

2007年の一年365日を短歌で綴った日記。
日常を詠んでいるのに、ちょっと不思議テイストが入るのが東さんっぽいですね。

<13/11/3>

『安心毛布』川上未映子(中央公論新社)

2013-11-02 | 読了本(小説、エッセイ等)
胸のあたりがまるく疼いて、春が皮膚にくっついた。飲む水に色、みえるものに曲線……“春のかたち”、
うきうきとはしない気持ちにいたる原因を考える“僕はもう、うきうきしない”等、妊娠出産などを経験しつつ日々の思うあれこれ。ウェブ連載『発光地帯』の完結編である<Ⅰ>、
匂いについての考察“匂いは、いつも言葉の奥の何かを”、
透明なものに心惹かれる理由を“透明であることについて”
なぜかひとりでいることができないという感覚があった時代のことについて振り返る“わたしであり、あなたでなくちゃ”等、あちこちに載ったエッセイ<Ⅱ>、
いつまでも果てることなき料理とのかかわり。「ある日」を綴る“お料理地獄”<Ⅲ>の3部構成のエッセイ。

以前から気になりつつもなかなか手に取れなかった川上さんの作品。装丁の羊がかわいかったので手に取ってみました。
ウェブで連載されていたらしいエッセイの完結編と、ほかいろいろが収録されてます。
言葉の使い方や感覚が独特で、とても刺激になりますね~。
他の作品も読んでみたいと思います。

<13/11/2>