はっきり言って、日本でSIMロックを解除することの意義は薄いです。なぜなら、携帯電話とキャリア固有サービスの縛りが強く、いわゆる日本仕様の携帯電話を他社の通信方式で使うことで得られるメリットは、使い勝手の低下を上回るものではないというのがその理由です。
SIMロックが解除されたとして、ドコモの携帯でソフトバンクの回線を使っても、iモードサービスは使えません。今の高機能携帯は、iモードなどのキャリア固有サービスがある事によって、初めてその真価を発揮します。故に、その紐付けが切れてしまったドコモ携帯は、とたんに通話のみ対応の残念な端末になってしまうのです。わざわざそんな携帯を使いたがるユーザーは、いたとしてもごく希でしょう。
このような事は以前からも言われていましたので、総務省が「SIMロック解除を推進する」ということを言いだしたときも、各キャリアはせいぜい数機種をSIMロックフリーにし、後は囲い込みを続けるだろうと言われていましたが・・・なんだか、その「お茶を濁すムード」が一変してきました。
と言いますのも、最大のプレイヤーであるドコモが「全機種SIMロック解除」を打ち出してきたからです。
ドコモ「SIMロック解除」の衝撃(テクノロジー) 日本経済新聞
NTTドコモの山田隆持社長は7月6日、2011年4月以降に出荷するすべての携帯端末に、「SIMロック」を解除できる機能を盛り込む方針を明らかにした。
1社だけでSIMロックを解除しても、ユーザーが流出のみでドコモにとっては利益の無い話です。加えて、端末メーカーにとってもSIMロックフリー端末を開発するのは非常に重荷になります。それらのリスクをとってでも、何故ドコモはSIMロック解除を推し進めるのでしょうか?
それは、ソフトバンクに圧力をかけるためです。
最大のキャリアである自社端末をSIMロックフリーにし、世論に対して「SIMロックフリーは当然だ」というプロパガンダを植え付ける事で、ソフトバンクにもSIMロックフリーをさせるための外堀を埋めていこうとしている訳です。ちなみにauは通信方式が違うため、たとえSIMロックフリーにしても日本では対応できる通信キャリアはありません。ですから、ドコモのSIMロック解除宣言は、事実上ソフトバンクのみへのメッセージと言えます。
先に述べたとおり、ドコモにしてもソフトバンクにしてもキャリア固有サービスと携帯の紐付けが強いため、例え全面的にSIMロックフリーとなってもユーザーの移行は進まないと考えられています。しかし、それはあくまで日本固有のサービスに対応した、日本仕様の携帯電話の話です。つまり、スマートフォンは関係ありません。具体的には、ドコモはiPhoneが欲しいのです。
孫正義ソフトバンク社長が言った、
「iPhone、iPadはNTTドコモと戦うための武器。絶対に渡さない」
と言うところからも分かるように、ソフトバンクはたぶんiPhoneを手放さないとは思いますが、もしSIMロックフリーの圧力に負けたならば、通信品質で勝るドコモや、安価なプランを提供しているMVNO事業者へのユーザーの流出が予想されます。
正にドコモの持ちうる「通信網」や「顧客数」、「体力」を盾にした、ソフトバンクには出来ない盛大なプロモーションです。来年以降、ソフトバンクにはSIMロック解除に関する慎重な判断が求められそうですね。そのときにまだiPhoneを使っているかどうかは分かりませんが、私も乗り換えを検討するかも知れません。
ところで・・・auのことも、たまには思い出してあげてください・・・