Cafe de Kerm ~毒味ブログ~

物言いにも、珈琲にも、もれなく毒が混入している可能性が無いこともないです。

今時「天動説」?

2004-09-26 11:40:35 | Science
 記事を読んだ感想は、「そんなバカな!」だった。
 その記事とは、以下のようなものだ。

今どきの小学生4割が「天動説」

 北海道、長野県、福井県、大阪府の計四校三百四十八人を対象に今年行った調査では、「地球が太陽の周りを回っている」(地動説)を選べた子供は56%にとどまり、42%が天動説を選択。

 中日新聞より。以下イタリックは同記事より抜粋。

 いまや、キリスト教会でさえ1992年に間違いを認めてガリレイに謝罪した「天動説」を、現代の小学生の実に4割が信じているというのです。
 これを喜劇と言わずしてなんと言えばいいのでしょうか。

 その原因として、記事では次のように書いています。

 縣助教授は二十一日から岩手大で開かれる日本天文学会で、「理科の授業で、地球が丸いことや自転、公転していることさえ扱わないのが原因」として、学習指導要領を改善するよう訴える。


 つまり、現在の義務教育では太陽系の仕組みについて、全く教えていないというのです。こんなばかげた話がまかり通っているとは。算数の話など、いい加減常識というものを教えてこなかったツケが散在報じられて、そのあげくにこの現状です。ゆとり教育を考えた人間は、「日本の知的水準を著しく低下させた」としていちど裁判にでも掛けた方がいいのではないか?という考えが沸々と沸いてきます。

 確かに地球は太陽の周りを回っているなんて、大人からしたら常識かも知れません。しかし、その常識も、大人が子供に伝えなければ常識ではないのです。考えてみてください。小学校で習ったとばかり思っている常識を、しかも天文の事について、食卓で話題が出るでしょうか?考えてみてください。家で親が子供に、日常生活の範囲内で、小数点以下2桁の計算を強いることがありますか?

 私は、義務教育を受けていた頃、「こんなものが将来必要なのか?」と日々疑問をもって授業を受けていました。しかし、それは大きな間違いだったと、義務教育のレベル低下を目の当たりにして改めて感じました。皮肉なものです。
 義務教育はやはり必要でした。将来、「そんなことも知らないのか!」とバカにされるのは、何も知らない子供たちなのです・・・

イノセンスを見て揺らいだ”人間”であることの証明

2004-09-26 00:00:01 | Thinkings
 ここ最近はI,ROBOT関連で、いわゆる「ロボットの未来」について書いた原稿が続いた。今回はその延長線上にあると思ってもらってかまわない。

 今日の午後であるが、先日購入した押井守監督の「イノセンス」のDVDを視聴した。
 同監督の特徴である哲学的、比ゆ的言い回しを多用した台詞に、やや違和感を感じたが、言わんとするテーマは大体伝わったように思う。

 しかし、ここで語るべきは映画自体の感想ではない。そこから生まれるある種の疑問だ。
 「人間は、何を持って人間なのか」
そして、
 「生物と無生物の区別は何なのか」
である。

 劇中で、脳の一部を残し、全身を機械化したサイボーグが多数登場する。彼らは人間だ。
 劇中で、人間と区別がつかないようなロボットも多数存在する。彼らは人間ではない。

 どちらも自立行動をし、外見上はまったく区別できない。その区別は脳が残っているか否か、それだけだ。つまり、すでに脳は人形の自立システムのひとつのパーツとしてしか扱われていないのだ。そんな中で、人間と人形を区別する境界は、いったいどこにあるのだろうか。

 生物か、生物でないか?それまで私には揺らいできた。

 脳の一部しか有機物が残っていない人間が、もはや生物と言えるのか。
 逆に、自己完結した個体を持ち、自立行動をする機械は生物とは言えないのか。
 DNAと子孫を残せるかの問題?
 生命をDNAの有る無しのみで語るのは乱暴だ。それをいうなれば、ウイルスにはDNAがないものもいる。確かにウイルスが生物か、そうでないかは議論の分かれるところではあるが。
 子孫を残せるかについては、”人間がそういう機能を持たせるなら”達成できるだろう。逆に、その考えに従うと、先天的に子孫を残せない障害を負っているものについては「生物ではない」という倫理的にもおかしな考え方にさえ発展するだろう。

 イノセンスで描かれていた世界は、ずっと先の未来のことだろう。しかし、生命観や人間、機会に対する考え方は、今考えてもいいことだ。
 人間は有機物で出来たロボットなのか?それとも別の何かなのか。
 私は、非常に残念なことだが、前者だと考える。後者であることを証明するには、「ゴースト*」の存在が立証されるまで待たねばならないだろう。

*ここでいうゴーストとは幽霊のことではない。人間の有する”魂”のようなもののことである。前作のサブタイトルにも使われていた。