<ホイールは動く>
昨日、軽四の車検整備を行った、お話をしたかと思います。
その中で、4輪のホイール脱着を行いました。何時もの手感トルクレンチ(手ごたえで締付)で確実に締付けました。しかし、町内を一回りし、再度締付けますと、フロン側が更に増し締め出来ました。
角度で言いますと、1/6回転程度でしょうか。
タイヤメーカーさんなどは、ホイール取付後、100Km走行し締付トルク確認を推奨しています。(新品タイヤ、ホイールの馴染みを取る狙いかと)
軽四程度の軽いホイール、車重の車でもこのように主にホイールのハブ、ディスクに対するフィティングの問題だと考えられますが、トルクダウンは発生するのです。
キャンカーの場合は何を言わんやですよね。
そんな今日は、ハブ径は重要! ホィールは動く! です。
過去記事の「ハブ径は合わせるのが基本」で内容は説明しているのですが、今回はもう少し噛み砕きウンチクを捻りたく思います。
まぁ~そもそも「ホィールは動く」とか言いますと、確かに走行時には回転していますわな! と仰る方もお見えかも知れませんね。今回はそんな生易しいお話では無いのです。
世にもおぞましい魔物が潜んで居るやも知れませんから、注意深く御覧下さい。
バンクスを例に上げ説明します。
標準ホイールであれば、ハブ径 106mmに対し、ホイール側 ハブ径は 106.1mmで加工されています。これは半径に置換えますと
(106.1-106)/2=0.05mm
厳密に言いますと、ハブとホイール間には0.05mmの隙間が有る事に成ります。
この隙間が無いとホイールの脱着の際、ホイールが外れ無い事態を招きますので必要な隙間ですね。
しかし、実際のホイール取付を行いますとクリップナットで締付けられる事でホイールにタワミが発生しホイールボルト付近が点当たりするようです。
言い換えますと、クリップナット締付けで、ハブ隙間はゼロに成ると言う事です。
赤丸内の写真では黒色に見える所が、隙間がゼロと成り、ハブに干渉した痕跡です。
ここで重要なのが、このハブ当たり面に赤錆が無い事です。
ホイールのハブ穴 断面の塗装は薄く、通常であれば使用過程に於いて錆が発生するはずですよね。
しかし、当たり面には錆は無いのです。
何故?
本日のテーマ (ちと大げさでしょうか?) ホイールは動いているのです。
次に、ホイール取付面、ドラム表面にもその痕跡があるのです。
ホイール取付面には、台形形状のビードが入っており、これはホイールのプレス加工時に発生する皺取り、ホイール取付面の平面出し(真に平らに加工する意)、またホイール取り付面に異物を噛み込まさないネライが有ります。
取付面の当たりの状況は、赤丸で示した部分が特に強く線状の当たりを呈しています。
また特に強く当たっていた部分は錆が無く、塗装も剥げ落ち、金属の光沢が認められます。この金属の光沢部分こそホイールが動いている何依りの証なのです。
まぁ~動くとは言ってもホイールボルトにホイールは取り付けられ、クリップナットで締め付けられた状態での話しではあるのですが。
一般的にホイールクリップナット締付トルクは、 ホイールボルトサイズ M12の場合
90N・m~120Nm程度のようです。
この程度の締付トルクでは、ホイールボルトは弾性域での締付けとなり、トルクが掛った状態で伸びています。
こう言いますと、あんな太いホイールボルトが伸びるの? と驚かれるかも知れませんね。
しかし、実際金属は適当な荷重を掛けますと、伸びるのです。
例えますと、ソーセイジの両端を持って引っ張りますと、ソーセイジは引っ張る力に負け伸びます。また引っ張る力を抜きますと、もとの形に戻ります。
この状態が弾性域の締付けなのです。
(興味のある方は、塑性域、破断に付いてもネット上に沢山データーが有りますから参照願います)
もうここまで来ますと、ハブ径を合わせる事が如何に重要な事か分かって頂けると思います。
ハブ径を合わせるもう一つの目的は、車体側ハブに対しホイールをセンタリング(中心を合わせる)する事なのです。上記写真を見て頂きますと、ホイールボルトとボルト穴には隙間が有ります。
ホイールはハブ穴でセンタリングされ、ホイール穴で各部精度誤差は吸収する構造なのです。
勿論、クリップナットのテーパー部でのセンタリング効果も有りますが、ハブ穴でセンターを決めテーパーで正しい狙いの位置にホイールを正しく締付けるのが本来の狙い、役割なのです。
キャンカーは車重+積載物で重量が重くなりがちです。
その重い重量をクリップナットのテーパーで受け、ハブでの受けが無い状況で走る事の危うさは危険と言うほかありません。
今日は、締結状態のホイールは、走行に依る荷重入力を受け、動いていると御理解下さい。
言うまでも無く、動く(ほんの僅かですが)事で締付トルクの低下を招きます。
クリップナットの締付トルク低下に気付かず、走り続けますとホイールクリップナットの脱落、最悪時、ホイールボルトの折損にまで至ります。
間違っても予備のホイールボルト積み込みなどはしない事です。
正しいホイールの使用と過積載をしない事です。
安全にキャンカーを楽しみたいものです。