たんなるエスノグラファーの日記

エスノグラフィーをつうじて、ふたたび、人間探究の森へと分け入るために

殺生科研2013-2

2013年07月17日 20時28分52秒 | エスノグラフィー

本年度の殺生科研の第2回研究会(7月13,14日、桜美林大学サレンバーガー館)

◆『ナショナル・ジオグラフィック』の密猟・動物殺しに関する7論考を読んだ*1。

ナショナル・ジオグラフィック誌では、近年、動物の密猟や交易、その規制や違法行為の取り締まり、野生生物保護のための取り組みに関する特集記事が多く見受けられるようになってきている。それは、動物殺しという、私たちの関心事と深く関わっているが、他方で、ナショ・ジオの論調は、野生動物の保護という視点が強く、人間と自然を切り分けた上で、自然的存在である動物に対するサンクチュアリーをつくりあげようとする試みでもあるようにも感じられる。さらには、ナショ・ジオの記事そのものが、政治的な主張になっているかもしれない可能性もある。

*1
・2007.3.「滅びゆくゾウの王国」
・2008.7.「今後の密林を揺るがすゴリラ殺害事件の真相」
・2008.10.「サルの楽園ビオコ」
・2010.1.「売られる野生動物」
・2011.12.「消えゆく王者 トラ」
・2012.3.「サイの悲鳴」
・2012.3.「象牙と信仰」

◆Three papers were presented as part of  the outcomes from our study group, in the session "Human-animal Relationship Reconsidered".*2

Three researchers read their English papers, based on their Japanese articles, and then comments were given to each papers.  Terms such as "negotiation" or "bargaining" between men and animals, and detaild ethnographic accounts in their papers were picked up to disucussion.   

*2
Mitsuho IKEDA "Epicurian Children: On Interaction and 'Negotiation' between Experimental Animals and Laboratory Scientists".
Takanori OISHI "Gorilla-man and Man-gorilla: Human-animal boundaries and interethnic relationships in central African rainforest."
Futoshi NISHIMOTO "Tormenting Animal Sacrifices: The Kantu Agricultural People of Laos and Bargaining with Water Baffalos."(unofficial translation by Betty Zhang)
Commentator: Vincent Labran

上田信『トラが語る中国史』(山川出版社)を輪読して、検討した。

中国の歴史人口学的な資料、文学や思想・宗教に関する記録、フィールドワークによって得られた経験に基づく見解などを丹念に織り込みながら、中国の周囲の生態環境、宗教や思想、政治との関わりのなかで、トラがどのように追い詰められ、今日、絶滅にまで至ったのかが丹念に描きだされる。トラを主語にして語る著者の語り口は斬新で、現在のMultispecies Ethnography とも重なる部分があるように思われる。 

◆Frederic Keckの、日本語で書かれた2論文を検討した。*3

『思想』掲載の論文は、存在とモノを脅威にさらすこととしての「カタストロフィー」に向き合うなかで、レヴィ=ストロースの「主体」は解体されたのだという、難解であるが、知的には興味深いものであった。他方で、『現代思想』は、鳥インフルエンザに対する人びとの経験を踏まえて、人と鳥の関係を、レヴィストロースの構造主義をベースにして考えみるという研究計画のような内容を持つ刺激的な論考であり、動物殺しについて考える上で示唆的であるものと思われる。

*3
・「レヴィ=ストロースにおける主体の解体と生態的カタストロフィー」『思想』2008.12. 
・「レヴィ=ストロースと鳥インフルンザ」『現代思想』2010.1.

個人的な覚書として。

番外編
あの淵野辺駅近くの店で入れたボトルはどうなったのだろうか?残っていたのではなかったか?記憶にない・・・。


殺生科研2013-1


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