たんなるエスノグラファーの日記
エスノグラフィーをつうじて、ふたたび、人間探究の森へと分け入るために
 



午前1時、プランテーションのイノシシ猟から戻ったハンターにたたき起こされた。ボルネオヤマアラシ(プナン語では、larak:学名は、Thecurus crassispinis)が捕れたと(写真)。すぐさま解体され、料理された。けっこう大きなヤマアラシである。「大きいな」というと、「妊娠していたんだ(baat)」と、彼は答えた。その割には、血の量が少ない。たずねると、猟場からキャンプに持ち帰る途中で、血は滴り落ちたのだという。プナン・ザ・ハンターは、おおもとのところでは、動物を、驚きをもってながめている。彼らによれば、ヤマアラシは、人が吹き矢を吹くように、背中で、後ろ向けになって、鋭い針毛を吹くという。ジャングルのなかで、針毛がたくさん落ちていることがある。プナン人たちは、そこで起きたであろう動物たちの間の、あるいは、人間とヤマアラシとの間の戦いを想像しているようだ。敵に出会ったときの、ヤマアラシの「吹き矢」の威力は、ものすごいという。猟犬のなかには、それにあたって死ぬものもあるという。わたしには、プナン人たちの狩猟の出発点には、そうした動物の習性や特徴に対する驚きとでもいう感性があるように思える。ボルネオヤマアラシの肉は美味である。油があれば、彼らは、ふつう、その肉を、揚げ物にして食べる。

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