たんなるエスノグラファーの日記

エスノグラフィーをつうじて、ふたたび、人間探究の森へと分け入るために

ワールドミュージック

2007年10月26日 23時23分18秒 | 音楽

今夏、プナン社会の調査に行ったときに、わたしも分不相応な貢献をして、プナン人たちが購入したマツダの4WD車のなかで、ひっきりなしに、耳障りのよい曲が流れていた。わたしは、それを、黒人のかわいらしい娘たちが歌っているものと自分勝手に想像していた。プナン人たちに聞いても、それは何という曲か、誰が歌っているのか知らないので、プナンの調査にいっしょに行った、O大学の3年生・Kくんに調べてもらったところ、それからしばらくして、それが LAS KETCHAP の"ASEREJE"という曲だということが分かった。わたしの想像力に反して、スペイン人の3人の娘たちが歌っているということは、すぐにユーチューブを調べてみて分かった。ついでに、"Asereje ja de je de jebe tude jebere sebiunouba majabi an de bugui an de buidiri" という歌詞も、ある曲の空耳を歌詞にしたもので、意味がない、ということも分かった。

その後、しばらくして、わたしは WORLD MUSIC という音楽の「ジャンル」にたどり着いた。そういうコーナーが、町のミュージックショップにあることは以前から知っていたが、それが、じつのところ、何を意味するのか、これまでは知ろうともしてこなかった。そういうふうにして、わたしは、いま WORLD MUSIC にはまりつつある。WORLD MUSIC は、実体的な概念ではない。おそらく地球上から届けられる音楽の総称なのだろう。

マレーシアのサラワク経由で、"ASEREJE"にたどり着いたせいだと思うが、とりわけ、ラテン・アメリカ(スペイン語)のサウンドにはまっている。最近、帰宅途中に、新百合ヶ丘の山野楽器に立ち寄って、Putumayo というレーベルのCDを何枚か買った。ラテン・アメリカといえども、国と地域によって、音の組み立てが、そうとうちがうように思う。そのなかで、わたしは、コロンビアのクンビアを、いまのところひじょうに心地よく感じている。Putumayo の「コロンビア」編には、La Sonora Dinamita の"El Ciclon"、Orquesta de Edmundo Arias の"Cumbia del Caribe" 、The Latin Brothers の"Delia La Cumbiambera"という、軽妙なクンビアの曲が入っている。一番初めのものは、ユーチューブでも見られる。「サイクロン」という意味で、おっさんが歌っているが、なぜだか、水着姿の女の子が出てきてくねくねと踊っていて、ちょっとエロティックな感じがする。わたしは、コロンビアには行ったことがないが、なんだか、その土地の空気みたいなものを感じる。

ところで、 ユーチューブは、今日、パソコンの前に座って、視覚をつうじて、異文化を体験できる超絶的なツールであるという話を聞いたことがある。

http://blog.goo.ne.jp/katsumiokuno/e/cfdc689b1d18647d9bc5b592cbedfd26

それを借りていうならば、WORLD MUSIC もまた同様に、居ながらにして、聴覚をつうじて、異文化を経験させてくれる。わたしたちは、コロンビアに行った後で、メキシコに、キューバに飛んでいくことができる。

そんなに便利で、心地のいい音楽「ジャンル」は、かつてはなかったように思う。その土地の音楽を愉しむためには、そこに行かなければならなかった。 わたしが25年前に、メキシコに行ったときに、お土産に買って帰ってきたミュージック・テープがある。LOS BUKIS の15 EXITOS DE LOS BUKIS というテープである(写真)。シエラマドレ山脈中のインディオの村を訪ねて、おそらく、その帰りに、ドゥランゴという町で買ったのだと思う。いまでも、聞くことができる。それを聞くと、トルティージャをパタパタと叩く音、ヒツジ肉の匂い、男女が踊っている楽しそうなシーン、ソンブレロ、メキシコ美女たち・・・などが次々と、自然に浮かんでくる。

で、なんなんだ。プナンに行って、"ASEREJE" を聞き、ラテン音楽にはまり、今度は、近い将来、ラテン・アメリカの探検に出かけてみたいと、真剣に思い始めている。とくに、アマゾンの狩猟民などは、どうなのだろうかと考え始めている。ま、最初は、やはり口にすることが大事だろう。ああ、「虚学」の文化人類学よ!(「実学」派のみなさん、こんなんで、すみません)