ゆるゆるらいふ

とりあえず、今日も一日機嫌よく・・・

【観劇メモ】関数ドミノ

2017年10月08日 | 演劇

自分が何をやってもうまくいかないのは、
自分の近くにドミノがいるからだ、と主人公は思っている。

ドミノ?

ある方向に進むように並べたドミノの一片を、チョンと倒すと、
バラバラと決められた方向に向かって他のドミノが倒れて行くように、
「ドミノ」の能力を持つ人は、無意識のうちに物事が希望通り運んでいく。
そのため、ドミノのそばにいる人は、知らない間に違う方向に進まされている・・・。

「ドミノ理論」なる劇中の言葉を、思わず検索してみると、
実際にあったけれど、政治・経済に使われる用語だったが、
これを個人にあてはめちゃって、しかも、劇中矛盾なく進んでいくので、
本当にそういう人がいるんじゃないかと思ってしまう。

まだ上演中なので、あまり言っちゃいけないけれど、
いつもながら前川知大さんの脚本は隙がない。
いつも、ちょっと「世にも奇妙な物語」的な内容なんだけれど、
展開に矛盾がないので、どんどんその世界に引き込まれてしまう。

発端は奇妙な交通事故。
歩行者にぶつかりそうになった車が、
歩行者の数センチ手前で透明の壁にぶつかったかのように大破する。

歩行者は無事、運転手は軽傷、でも助手席の妻は意識不明。

この事故の調査をすることになった保険調査員の呼びかけで、当事者と目撃者が集められる。

で、そのうちの一人がドミノ理論をぶつけたために、色々な出来事が起こってゆく・・・。

なんだか理屈っぽく、感じが悪く、頭がよくてメンタルクリニックにも通っている若者、真壁を
瀬戸康史さん。
とにかく感じの悪いむかつく人を好演。

真壁の恋人っぽくいつもそばにいる女性、秋山は小島藤子さん。
ミステリアスな雰囲気を醸し出しているが、どこかで見たことあるなあ~と思ったら、
朝ドラ「ひよっこ」の主人公の住んでた寮の室長さんだ。

事故に会いそうになった二人のうち、無事に逃げた小説家左門は柄本時生さん。
この人が「ドミノ」と真壁から決めつけられたために、盗聴されたり、ヘンな風にねたまれたりと
散々な目に遭う気の毒な人。
飄々としている分、後半の追い詰められていく様が、怖さを助長する。

もう一人の被害者で、九死に一生を得たのは池岡亮介さん演じる田宮。
遠目で見ると嵐の二宮君みたい。
最初は自信なさげないい人なのに、ドミノ理論を信じはじめてからは
尊敬する左門との友情を壊していく。
特に、自分の好きになった女の子、泉ちゃん(八幡みゆきさん)が
左門のことが好きだとわかってからの、人格の崩壊がリアル。

不思議な事故のせいで、奥さんが生死を彷徨い、その上保険も出ない、という絶望感と焦りから、
事故はドミノのせい、という理論にどんどん傾き、左門を敵対視して追いつめる新田(鈴木裕樹さん)
の狂気も怖い。

HIVに感染している、というこれまた絶望的な状況の中、やはりドミノ理論にすがってふりまわされる、
土呂を山田悠介さん。
ドミノ理論でHIVを直す方向に持って行くために、色々なことに利用される。

舞台上、真壁はあたかも教祖のように人を操っていく。
まるで魔女狩りだ。
自分の上手くいかないことは、すべて自分の周りにいるドミノのせいにして、
現実から目を背けて生きてきたことに気が付かない。


「ドミノ」って思わないにしても、そういう人ってたくさんいる。

全体的に若手が多い中、存在感を示すのがベテランの千葉雅子さんと勝村政信さん。

千葉雅子さんは真壁を診察している精神科医。
危うい真壁を冷静に見守っている。

勝村さんは保険調査員。
最初は例の感じでおちゃらけたムードメーカーだったけれど、終盤、誰よりも冷静に状況を分析し、
ホントのドミノは誰なのか、を解明していく。

超能力みたいなものがあるかどうかはわからない。
けれど、説明できない力が働くことがあるかもしれない、ってこともちょっと思うこともある。

ただ、はっきり言えるのは、大人になってから自分の身の回りに起こることのほとんどは、
災害などは別として、いいことも悪いことも自分の責任だと思う。
自分の選択が招いていることだ。

どっちの道を通るのかも、誰を信じるのかも。

もしかしたら、ホントにドミノは私の周りにもいるかもしれないけれど、
でも、やっぱり私は、自分の身に起こったことは、人のせいにしないで生きていきたい思う。

そのほうが、きっと楽しいと思えることがたくさんあると思うから。















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