資格を取ると貧乏になります (新潮新書) | |
クリエーター情報なし | |
新潮社 |
書店で手に取った書籍。刺激的なタイトルに触れて思わず買ってしまった新書である。内容は深刻だ。
弁護士全体の平均年収は、2009年で680万円。普通のサラリーマンよりちょっといい程度だ。その内訳がひどい。開業弁護士の20%が年収100万円以下で生活保護以下だ。全体の40%が500万円以下、という数字である。以前、知り合いの話で、年収300万円で1名弁護士を求人したところ、300人の弁護士が殺到したと聞いたことがあるが、どうやら本当のようだ。
その原因の第一は、弁護士数の増加。この10年で2倍になっている。一方、仕事の方はあまり増えていない。何で2倍になったか。これは政府の倍増計画によるが、法科大学院がその役割となっている。当初70~80%が弁護士になれるという触れ込みだったが、実際は20%台。現在は定員に達せず、募集停止している学校もあるそうだ。
法科大学院卒の合格率が25%だそうだが、これもカラクリがある。法科大学院は3回までしか受験できない。3回受験してしまうと三振というそうだが、そのため、受験を控えている受験予備軍が大勢いるそうだ。
それに日本の場合は、アメリカなどと違って、法律関係の資格が沢山ある。弁理士、司法書士、行政書士、税理士など。これらの資格とバッティングしている。弁護士のオーバーフロー分がそちらの資格者の仕事にも流れており、報酬も安くなっていく。
これからTPPでアメリカの弁護士が大勢日本にやってくる。どうやら弁護士は、これからもおいしい商売ではなさそうだ。弁護士になりたいと、仮に私に相談されたら、「止めた方がいいよ」と言うだろう。弁護士は合格までの学習量から、サラリーマンが自己啓発で取ってよし、とする資格ではない。それで十分食べていかねばならない資格である。年収500万円ならサラリーマンでしっかり仕事して、自己啓発もして、その方が年収は上がるだろう。
この書籍、弁護士のほかに、公認会計士、税理士、社労士のことも書かれている。著者はよく調べたもんだと思う。機会があったらまた感想を書きます。