今年は暑い。一昨年も暑かったが、それ以上だ。ところで、最近の天気予報では、「日中暑いが、上空に寒気が入っているので、午後から大気が不安定になり各地で強い雨が降る」という解説がよくつく。これを気象予報士的に解説しよう。なんせ予報士試験は13回目だから知識だけは豊富だ。
「上空に寒気」という言葉は、実は、奥深い。上空500hpa(上空約5500m)の高層天気図では、低気圧が入っている。(右図)しかし、地上天気図にはほとんど現れない。(左図)これは、500hpa以下の層は、周囲に比べて低温で、空気が重く、層圧が薄い。しかし500hpa以上の層では高温で、気圧は上層からの累積だからトータルすると500hpaでは低気圧が表れるが、地表では高温と低温がトータルされて、何も見えない。(実際は地表でも少し低気圧が現れる)
さらに、地表が暑くて、上空が寒いとどうなるか? 暑いと、水蒸気をたっぷり含むことができ、実際湿度も高いが、上空では寒いので、水蒸気をあまり含めない。地表が暑い+水蒸気多量(これを暖湿という)で、上空は寒い+小蒸気少量(乾燥)となると、温かい空気は、寒い空気より軽いため、上昇流となって上に上がり、対流活動が活発になる。これを不安定という。
対流が活発になると、そのあたりは、短時間強雨、雷、降雹(こうひょう)、突風という現象が発生する。(これは予報士試験では4点セットで覚える)
平成21年度第2回気象予報士試験の問2では、「この種の低気圧に伴う、上空の寒気によって引き起こされやすい防災面で留意すべき大気現象を二つ答えよ」という問題が出されている。