ペンギン夫婦の山と旅

住み慣れた大和「氷」山の日常から、時には海外まで飛び出すペンギン夫婦の山と旅の日記です

奈良の山あれこれ (66)~(70)

2015-08-26 20:39:14 | 四方山話

*「大和はくにのまほろば」…回りに海を持たないまさに「山都(やまと)」の山々。奈良の山「ならでは」の話題を綴っていきます。色んな資料を参考にしましたが、写真はすべて私の登った時のもので古いものも含んでいます。*  

 66)三峰山 (みうねやま)「霧氷の山」 



畝が三つ並んだように見えるので、三畝山(みうねやま、さんせやま)とも呼ばれました。高見山地の中央にあって、奈良県御杖村、三重県津市、松阪市にまたがる大きな山容を誇ります。



「霧氷の山」として人気が高く、冬は大勢のハイカーで賑わいます。一等三角点の埋まる山頂は樹木の成長でかっての大展望が失われ、僅かに北側に室生火山群が望めるだけとなりました。



南西に少し下った八丁平は、ススキやヒメザサに覆われた広々とした高原で、花期にはシロヤシオの花が咲き誇ります。迷岳、池木屋岳、国見山など台高の山々の展望が良いところです。

山麓の御杖村には伊勢本街道が通り、垂仁天皇の皇女倭姫命が、天照大御神の御杖代(神意を受ける依代)」となって巡行した時、この地に行宮を造り休憩したところという伝承があります。村名は倭姫命の玉杖を祀ったことから生まれたといわれています。「みつえ青少年旅行村」が山行の起点で、シーズンの休日には、ここまで「霧氷バス」が運行されます。



少し引き返して神末川に架かる橋を渡り、大タイ川沿いに行くと尾根道の「登り尾コース」と、落差15mの不動滝を見る「不動谷コース」に分岐します。



どちらをとっても1時間半ほどで避難小屋がある地点で合流します。小屋から三畝峠を経て約30分で山頂に着きます。別コースとして、新道峠(ワサビ峠)を経るコースがあります。(2時間40分・林道歩きが長く下山に使われることが多いようです)。


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67)高見山  「関西のマッターホルン?槍ヶ岳?



西側、とくに国道166号線の木津(こつ)峠付近から見た姿は、まさに「天を衝く」感じです。吉野郡東吉野村と三重県松阪市の境にあり、台高山脈北端の山として南端の大台ケ原山と山脈を代表しています。



三峰山と同じく霧氷で有名な山です。



この山は古くは高角山(たかつのやま)といい、山頂の高角神社は神武天皇東征のとき道案内を勤めた八咫烏建角見命(ヤタカラスタケツノミノミコト)を祀っています。



杉平からの表登山道には、神武天皇が国見をした国見岩がある他、天狗岩、揺岩、笛吹岩など伝説の残る巨岩がいくつもあります。
高見山は『万葉集』 我妹子を いざ見の山も高みかも 大和の見えぬ 国遠みかも の「いざ見の山」に比定されています。「去来見山(いざみやま)」の別名はこの歌が元になっています。



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248mの山頂からの展望は名の通り雄大で、間近の三峰山をはじめ曽爾、大峰、台高の山々などが一望できます。



山頂南側の大峠は、伊勢街道が通る高見峠として交通や通商の要衝でした。今は峠のさらに南の山腹を国道166号線高見トンネルが通っています。また登山口の杉谷近くには「古市」跡が残り、往時をしのばせます。
一番簡単に登るには、車で166号線から大峠に登り広場に駐車すると、1時間足らずで山頂に立ちます。平野からは樹齢700年の高見杉を見て2時間半。



杉谷からは伊勢南街道を通り小峠へ。ここから急登で平野からの道と合わさるとなだらかな尾根道になり、先述の説話の説明がある岩を見ながら山頂に向かいます。冬には美しい樹氷が見られる人気の高いコースです。杉谷の登山口から2時間15分。


(68)国見山  「これで幾つめの国見?」

 
台高山脈北部にあります。北の高見山から伊勢辻山を経て縦走路がこの山の頂上を通り、さらに南の明神岳へと続いています。全国に数多い「国見山」はすべて展望がよいことで名付けられたと思いますが、この山もかっては近江から伊勢、紀州まで見渡せたということです。



近年は灌木が次第に視界を狭めていると聞きますが、2001年に伊勢辻山へ縦走した時は、越えてきた水無山の向こうに薊岳から明神岳、檜塚に続く稜線、遠くに大台ヶ原が霞んで見えました。山頂から南に縦走路を行くと、すぐウシロ嵒という絶壁上の展望台があり、明神谷を隔てて薊岳がよく見えました。

 
明神平から明神岳、水無山を経て登るのが一般的です。私たちが初めて登ったときは、最短で山頂に立てる「天高ルート」をとりました。この道は大又林道終点から明神平に登る途中、旧あしび山荘を過ぎたところでキハダサコの涸沢に入ります。右岸を行き尾根に出て急登。右にキハダサコの源流を見る痩せた岩尾根から、プナ、ヒメシャラ、コナラ、リョウプなどの雑木林に変わり、出会いから僅か1時間で頂上(1419m)に着きました。


 
(69) 伊勢辻山  「大和と伊勢との辻」

 
奈良県東吉野村と三重県松阪市の境界、国見山から高見山に続く台高主脈上にあります。伊勢辻の名は、山の北側に大和と伊勢を結ぶ道が通る峠があったことに由来します。



山頂(1290m)からは北に高見山、遠くに倶留尊、大洞など室生の山々、その右に局ヶ岳、修験業山、栗ノ木岳。東から南にかけては国見山、水無山の稜線。南方、薊岳の右に大普賢、山上ヶ岳など大峰の山々…と見飽きぬ大展望が繰り広げられます。



国見山と伊勢辻山との間には「馬駆場ノ辻」という芝のような草地があり、源義経が愛馬と別れた場所という伝説が残っています。山頂から大又に下る途中には、落差30mと聞く和佐羅滝が山肌に白布をかけています。

高見峠からは雲ヶ瀬山、ハンセ山を経て3時間。私たちは明神平から明神岳に登り、水無山、国見山と北上して伊勢辻山から大又に下りました。明神平からは約1時間45分でした。


(70)明神岳
   
「祠はなくても名前は残る」



この山の名は昔、山頂に穂高明神を祀る祠があったことによると言われています。現在も国土地理院地形図には1432mのピークに「穂高明神」と表示されていますが、祠は見当りません。



東吉野村大又から、大又川に沿った林道は魚止滝や石ヶ平谷、三度小屋谷、アベ山谷などいくつかの支谷を見送り、かなり奥まで通じています。



終点から、冬には美しい氷瀑と化す明神滝をみて、樹林帯を登ると約1時間半で明神平に着きます。



「あしび山荘」の西側から台高山脈主稜線にかけての笹原は、かっては雪質のよいスキー場として知られたところです。頭上に見える稜線に登りきったところは三ツ塚と呼ばれ、北は水無山、国見山へ、南は千石山を経て池木屋山、西は薊岳への三叉路となっています。



三ツ塚から南へ10分ほどで檜塚への支稜が分かれますが、明神岳はここ(国土地理院地形図には山名の表記はなく、前述の穂高明神と記されたところ)に位置しています。周辺は美しいブナ林で、展望は主稜線を少し南に下った笹ヶ峰(1367m)の方が優れています。
大又バス停から林道終点までは歩くと1時間15分ほどかかります。薊岳から明神岳へは1時間強。