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ペンギン夫婦の山と旅

住み慣れた大和「氷」山の日常から、時には海外まで飛び出すペンギン夫婦の山と旅の日記です

卑弥呼=天照大神???

2008-12-28 09:31:58 | 読書日記
これは、まだ現在進行中(つまり読みかけ…)の本です。
「逆説の日本史」は週刊誌連載中(現在も)や単行本、文庫版でも読んだのですが、その後の新しい発掘・発見を踏まえたビジュアル版ということで購入しました。



諸星大二郎の卑弥呼の絵(2ページを使って!)など、「あらずもがな」のイラストや写真もありますが、総じて図版ならではの説得力もあります。

面白かったのは15年前の「古代黎明編」で「箸墓=卑弥呼墓」に「私は賛成しない」と書いていた筆者の考え方が、「可能性が高い」と変わったこと。
つまり邪馬台国九州説から大和説に傾いたわけです。
私・変愚院にとっては、無論、自分の棲み家のある大和説の方が嬉しいのですが…。

「日本国」という山…

2008-12-27 19:41:32 | 読書日記
…があるのを、ご存じですか?
一ヶ月ほど前に読んだ「ひとつとなりの山」に登場します。
「若いときはともかく、ある程度トシをとると、山とのかかわり方も、「ひとつとなり」がいい」と、あまり有名でない山への「ひとり登山」(単独行と言わないところが奥ゆかしい)を綴った池内紀さんの紀行集です。



著者は1940年姫路生まれのドイツ文学者で、ゲーテ「ファウスト」などの翻訳の他。エッセイストとしても有名です。山好きな人ということを、この本で始めて知りました。

北海道から鹿児島県まで個性的な20の山が選ばれていますが、その中で私の登ったのは籠ノ登山、燕岳、蝶ヶ岳、雪彦山、剣山のわずか5山。
この山を読むと、標題の「日本国」をはじめ、他のどの山もとても魅力的で、すぐにも行ってみたくなります。

山の選び方だけでなく、下山後の温泉の楽しみの他、歴史・民俗・伝説・動植物の話し…とまさに談論風発。軽妙洒脱な語り口で、退屈させません。面白い本でした。

ニホンオオカミは生存している?

2008-10-17 09:55:02 | 読書日記
今年は「最後のニホンオオカミ」が東吉野郡鷲家口で捕獲されて、100年目に当たります。
この記念年の明10月18日(土)、19日(日)の二日間にわたって、東吉野村ふるさと会館で「第3回ニホンオオカミフォーラム」が開催されます。



当日は貴重なビデオ放映や資料展示の他、外国産狼放獣問題(シカの食害で破壊される森林を守るために、外国産のオオカミを放つこと)の討論会も行われます。

主催者の「ニホンオオカミ・カワウソ研究会」代表で、奈良県野生生物保護委員会の代表でもある中尾敏夫さんから、8月にご案内を頂いていたのですが、あいにく地域の行事と重なって参加出来ません。

ニホンオオカミは、この鷲家口で捕獲され現在は標本となって大英博物館で展示されているものが最後とされてますが、その後も「姿を見た」人や「鳴き声を聞いた」人が何人もいると言います。



わが家の本棚からこんな古い(昭和42年刊)本を見つけ出して再読しました。
この著者もニホンオオカミの生存を信じ、台高、大峰を始め各地で体験談を聞き集めています。

その中でも昭和34(1959)年、南紀美山村でオオカミの仔が拾われて、祟りを恐れてすぐ山に返された話、その近くで昭和41年12月30日に今西錦司博士一行が雪中で吠える声を聞いたなど、興味深いものがあります。
野犬との見間違え、聞き間違えではないかと疑われますが、オオカミの口縁には独特の線紋があり(そのため口が裂けていると見誤られる)、鳴き声は犬とは比べようもなく凄いものだそうです。


上はこの本に出ていた徳川末期の「獣類写生帳」のオオカミ。
足に犬にはない「水掻き」があります。なお「足の指跡は狼は五つ、野犬は四つ」だそうです。

幻の動物の生存説には夢やロマンがあります。いつまでも日本の山野を走り回っていて欲しいものです。

夫婦へんろ紀行

2008-01-24 09:32:19 | 読書日記


東方出版社刊 (四六版)220頁 1500円

「ひとり歩きの金剛山」「中高年山と出会う」「アジアの山紀行」「はじめての四〇〇〇メートル」(いずれも、山と渓谷社刊)とこれまで登山についての著作を続けてこられた藤田健次郎さんが「山から趣向を変えて」発表された最新刊(1月23日発行)。
四国八十八か所の札所を奥さんと二人で「歩き遍路」された巡礼記です。

読み終わって(読んでいる途中でも)の感想は、藤田さんご夫妻への敬意、賞讃、羨望と共に、「私たち夫婦なら歩き通せるだろうか?」という素朴な疑念でした。

全行程1200キロ、合計47日間を歩き通すという難行苦行を、著者は「あとがき」で『疲労困憊のかたわら「歩く」喜びを堪能…』とさらりと書いておられます。
しかし、夏の暑さ、雷雨などの厳しい自然の中、足の痛さを庇いながら歩き続ける苦労は想像するに余りあります。
現に藤田さんも、何度か「なぜこんなことをしているのか」と疑念をもたれ、途中で頓挫されかけています。そして、その度に、励まし元気づけられたのは四国の人の温かい心と、お接待だったと振り返られています。

道後温泉の入湯券(二人分1600円)を買ってくれた人、昼食の弁当を無料にする旅館、無料の宿泊所に刺身付きの夕食まで運んでくれる人…
「お接待」については話には聞いていましたが、これほどまでとは想像あいていませんでした。
お遍路さんを大事にするのは、肉身のお遍路さんでなく内なる「仏身」のためとはいえ、こんな温かい人の心の残っている日本はまだまだ捨てたものではないと思いました。

この本には歩く視点でしか味わえない自然、風景の移り変わりや人とのふれあいが元新聞記者らしい行き届いた細かい観察眼で描かれています。
また、札所のお寺の対応、トイレ、道路やトンネルの状況、町や村の様子は図らずも現在の文明・社会批評になっています。

巻末の「お遍路メモ」は、これからお遍路を志す人への何よりのガイドですが、文中にさりげなくでてくる旅館やお寺の話も、実際に歩くときの大事な参考になることが多いと思います。お遍路さんに興味をお持ちの方には必見の本ですが…

さて、私の心はまだ「私も歩いてみたいなあ」という羨望と、「無理やろうなあ」という諦めの間で揺れ動いています。

やまとびと

2007-11-25 12:00:28 | 読書日記


しばらく前に入手した無料の情報誌です。
A4判28ページの薄い雑誌ですが、内容が充実して
いて写真も美しく、とても見応えがあります。

11月号の特集は「大峰奥駈道を縦走する」第2回-
弥山から釈迦ヶ岳、前鬼への山行記です。
私も2年前に日本山岳会の仲間達と歩いたコースで
すので、特に興味深く読みました。
(そのときの様子はJAC関西HP「大峯奥駈道5」
、ペンギン夫婦お山歩日記「大峰奥駈道5」をご覧下さい)

また、「吉野・大峯世界遺産の意義」と題した特別
インタビューで高野山金峯山寺執行長の田中利典師
がお話しされています。

他に春日大社権宮司さんの「わが家の怪談」では曽爾
の鎧岳近く、現岳見橋辺りでお祖父さんがキツネにだま
された話しや、鉄道マニアには奈良~三輪~高田~王寺
~郡山~奈良と環状に回る途中の「古代やまと環状線
日記」、街道歩きには「伊勢街道を歩く」など、
「やまと」の魅力が一杯詰め込まれています。

奈良県各所の他、JR大阪駅や鶴橋駅にも置いてある
そうですので、ぜひご覧になって下さい。

シルクロードの風

2007-09-02 15:42:23 | 読書日記
8月末に投稿した「樹葬の話し」の内田嘉弘さんの最近の著作です。



氏の若い日の多彩な海外登山活動のうち中央アジアの山々の記録を始め、最近のシルクロードを楽しむ旅…タクラマカン砂漠一周、カイラス一周巡礼の旅、蘭州から敦煌へ河西回廊の旅など…また最終章の「中央アジア探検について」では、19世紀、20世紀にこの地域に入った人々の業績が簡潔にまとめられています。

写真、地図などの図版も多く、副題の「山と遺跡とオアシス」の情景がいきいきと眼前に展開するように紹介されている、楽しい本です。

ナカニシヤ出版刊、価2,400円+税

世界の名山・大台ケ原山

2007-08-15 17:45:38 | 読書日記
かなり以前にもご紹介したことがありますが「世界乃名山・大台ヶ原山」という書物があります。



大正12年「大台教会本部」発行の古い本ですが、変貌しつつある大台の往時を偲ぼうと読み返してみました。

著者は添上郡大安寺村柏木の岡本勇治という人ですが、漢文調の難解な名文でワープロで変換できない字はおろか古語辞典にもない字が多く、浅学の私には読むだけで時間がかかりました。

まず「西大台」に関する部分を意訳してみたいと思います。

*ワサビ谷
 山葵谷の渓流には、自生のワサビが青々としています。
人に知られているようにワサビは蟹の好きな食べものです。だからワサビを採る人は皆カニに食われているのを嘆くのに、不思議なことに大台では一匹もカニも見ないのです。
 これは水質が寒冽でカニの棲息や繁殖を許さないことによるのでしょうか。

*逆川
 この辺りで西北から東南に流れる沢があります。逆川と云います。
だいたい大台全山の渓流は、みな水源が東にあって西に流れます。この川だけは、西から来て東に流れるようなのでこの名があります。

 横さまに歩む蟹なき深山路に 逆さま川の名こそおかしき

SFと科学

2007-07-24 17:16:30 | 読書日記


先日の「読書感想文」(夏休み、思い出しますねえ)のテーマ、「西遊記」は明時代のSFとして読むことも出来ます。
(確か石川英輔に「SF西遊記」という本があり、TVでも放映された記憶がありますが、これは全く別の宇宙版西遊記)

SFは私の大好きな読書ジャンルで(もっとも流石に近頃はあまり読みませんが)、「海野十三」時代には空想の産物だったものが次々と実現してくると、人間の空想はいずれは実現するのかと思わずにはいられません。

この本は副題の「空想を実現する最先端テクノロジー」をクローン人間、瞬間移動装置、タイムマシン…など8章に分けて非常に分かりやすい形で解説しています。筆者はイギリスの新聞やラジオで著名の科学ジャーナリストだけに、「量子力学」や「相対性理論」など難しいところになると、たとえ話などでスルリとかわしてしまう…。しかし、私たち文系人間には、これくらいがちょうど手頃なんです。

何よりもスタートレック、スターウォーズ始め様々なSF映画、TV、小説が登場するのがSF好きにはたまらない、楽しい本でした。

妖怪退治といえば…

2007-07-22 09:44:36 | 読書日記


この、ご存じ西遊記。
天竺へお経を求めて旅をする三蔵法師を守るお供の悟空、八戒、沙悟浄からして、すでにサル、ブタ、カッパの化身。三蔵の乗る馬ですら西海竜王の子供です。

公開中の映画「西遊記」はTV放映中と同じメンバーのようですが、TVで見る限りでは孫悟空役の香取慎吾が「なまか」を連発して、友情を安売りしているような薄っぺらい感じで、あまり好感をもてませんでした。

彼らが道中さまざまな妖怪と闘いながら旅をする物語を初めて本で読んだのは、親父の「大法輪」という宗教雑誌の連載小説でした。
そのご何度かいろんな人の訳で読みましたが、今回は4月中頃、ふと書店で手にしてパラパラとめくっているうちに、蓬田やすひろさんの美しい挿絵に惹かれてレジに行きました。

読んでみて、オビにある「今までで一番美しい西遊記」という惹句が決して大げさでないと思いました。
平岩弓枝さんの筆にかかると、お馴染みの冒険譚がこんな美しい師弟愛と友情の物語になるのかと感動さえ覚えました。♀ペンも一気に読み終えると目を潤ませていました。

この本の下巻がもうすぐ出るそうで、二人で楽しみに待っています。

雨の日は…(7月21日)

2007-07-21 13:20:26 | 読書日記
寝転がって肩の凝らない本を読んでいます。
これはしばらく前に読み終えた新書本「江戸の妖怪事件簿」


芸者遊びをした猫や、人間に嫁入りした狐の話など江戸の人はお化けや幽霊の話を信じて記録に残していました。
しかし、中には「世の中に幽霊などいるはずはない」という啓蒙家もいました。面白いのは彼らが幽霊の存在は否定しても「それはみなキツネやタヌキの仕業だよ」と解説して(つまりタヌキやキツネの化けることは認めている)ことです。

そのため1844年、南町奉行・跡部能登守が人に憑依した狐を白州に呼び出し裁きをするといった事件が「狐附奉行御捌之伝」として訴状、取り調べ経過が記録されています。
どうもこれは奉行の権威をアピールするためのパフォーマンスでもあったようですが、その時代の人々が「狐がつく」ことを信じていなければ、成り立たない出来事です。

今でも「赤ワインのポリフェノールが身体にいい」といえばワインが売れ、「納豆菌が血液をサラサラにする」といえばスーパーの棚が空になるなど…本当かどうか分からない噂に引っ張り回されている私たちがこの時代の人々の「常識」を笑うことが出来るかどうか…ちょっと考えさせられました。