【短歌】カトキチ無双 2021-01-20 17:21:00 | 短歌/折句/あいうえお作文 カトキチのうどんが家にないなんて考えられぬ仮定の話カトキチのうどんをとかすレンチンの3分間がマイ・クッキングカトキチのうどんを探す朝7時イオンモールは搬入ラッシュカトキチのストック尽きてレシピなき君の頼りはチキンラーメンめんつゆとカトキチあれば温まるうどんづくりはもう目の前だかけうどん煮込みうどんに焼きうどん何でもござれカトキチうどん名店のうどんが何だここにあるレンチン・カトキチ・イズ・マイ・ベスト
横丁の異世界 2021-01-20 01:14:00 | 幻日記 あふれるほどの人混みは突然昔話のようになってしまった。一帯に自粛の要請がかかり、下りたシャッターに無念の言葉が貼り付いていた。廃れた通りは、すっかり過疎化した故郷を思い出させた。みんな家でおとなしく過ごしているのだろうか。 1人のクライアントに拘るな。チーフの言葉が頭の中を回っていた。1人のクライアントを大事にしろ。いったいどっちなんだ。矛盾の中で爆発しそうな頭を、アルコールにつけて冷やしたい。だけど、提灯の明かり1つ今夜は見えそうもない。雨。予期せぬ事態に傘もない。踏んだり蹴ったりの木曜日。 ふらふらと逃げるように横丁に入った。いつもは通らない道だった。少し時間を無駄にしてもいい。どうせどこかで道はつながることになっているのだから。雨は上がり、そればかりか月が白く輝いていた。壁の間から現れた黒猫が、音もなく歩いて行くそのあとに私はゆっくりとついて行った。猫は一度も振り返らなかった。美味しそうな匂い。暖簾が風になびいている。こんなところにも秘密の隠れ家は存在するようだ。「いらっしゃい」「開いてるんですね」 大将は怪訝な顔をしてみせた。「向こうはみんな閉まってたから」「まだ9時だよ。夜の魔物でも出るのかい」 ゲラゲラと常連風の客たちが笑った。「はははっ」 誰もマスクもしていない。「何しましょう?」「ギムレット」 スピーカーから乗りのいいジャズが流れていた。壁に貼られた夏祭りのポスターは随分前のもので、隣のカレンダーもすっかりぼろぼろになっていた。2月29日。 そうだ。あいつの誕生日。