折句ラッシュ・クリスマス

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、縦読み
クジラうえリクエストした水族館マダイが歌うスローバラード、クリスマス

時滑りの季節

2021-01-01 09:59:00 | ナノノベル
犬の糞警戒中


 しばらくの間、犬の糞一つない道が続いた。
 ゆとりを持って歩ける歩道が好きだ。人が前から歩いてきても慌てることもない。傘を差し両手に買い物袋を下げていたとしても、すれ違うことに何の問題もない。そんな歩道ならいつまでだって歩きたい。さわやかな風が吹いた。いい季節がやってきたことを知らせる風。それに巡り会えるのは、運がよくて年に数回のことだ。犬の糞ではと疑われる場面も多々あった。それは落ち葉だったり、木片だったりした。
 平和な道の上で時に歪みを踏んだ。時間の歪みを踏むと一瞬5歳若返ったが、すぐに回復した。しかし一度踏んでしまったことで、踏み癖がついてしまった。何でもない道でもバランスを崩し、引き込まれるように時間の歪みを踏んでしまう。
 ああ、つれていかれる

3月下旬は寒かった
元に戻るまで僕は震えながら歩いた
ああ、ここだ
戻ったのも束の間
ああ、まただ
9月中旬だ
「暑い!暑い!」
ネルシャツ暑い
その後も月の旅が繰り返された
5月中旬だ
「暑い!」
さほど前の時と変わらなかった
そういう時もある
10月上旬だ
昼は暑いが夜に入って
「まあまあ寒いぞ!」
月を巡りながら
僕はショップに立ち寄った
勝手のよいシャツとパーカーを手に入れた
8月中旬だ
「暑い!暑い!」
7月上旬だ
「暑い!暑い!」
4月中旬なのに7月中旬並だ
「暑い!暑い!」
9月下旬だ
「暑い!暑い!」
7月上旬だ
「暑い!暑い!」
5月中旬なのに8月上旬並だ
「くそー! 何したってんだ!」
8月中旬だ
「暑い!暑い!」
6月中旬なのに雨が降ってない
「蒸し暑い!蒸し暑い!」
9月上旬なのに8月下旬並だ
「暑い!暑い!」
8月下旬だ
「暑い!暑い!」
変な踏み癖がついてしまった
7月中旬だ
「くそー! おかしくなりそうだ!」
10月中旬なのに9月上旬並だ
「暑い!暑い!」
8月上旬だ
「暑い!暑い!」
8月下旬だ
「暑い!暑い!」
8月中旬だ
「暑い!暑い!」
7月中旬なのに8月上旬だ
「いつまで暑いんだ!」
8月下旬だ
「暑い!暑い!」
4月下旬なのに7月上旬並だ
「暑い!暑い!」
12月下旬だ
「暑い!暑い!」

 クリスマスが終わり、町は年明けムード一色に染まっていた。着膨れしている人はいるが、下を向いて歩く者はいない。みんなすぐそこに明るい未来を見ているからだ。僕はパーカーを手に持ったまま並木通りを歩いた。ようやく悪い流れから抜け出せた。元の場所とは少し違うところに来てしまったけど、抜け出せただけで幸せだった。どこまで歩いても時間の歪みを踏むことはなかった。鼓笛隊の演奏が熱を増していた。クライマックスは24時だ。何かの玩具のようにパーカーの袖に食いついた。それは散歩途中のニットを着た犬だった。

「ねえねえ、寒くないの?」
 これから新しい世紀が始まるのだ。
 そういう時は、何も寒くない。

「もうすぐ始まるぞ」

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ペン・スタンド

2021-01-01 08:37:00 | 夢追い
 客席は今日も疎らだった。
 もう望まれていないのか。ファンは何処へ……。
「君の人気がなくなったんじゃない。音楽ファンが減ったんだよ」
「同じことじゃないか」
「違う! 人が減ったんだよ」
「もうやってられない」
「時代だよ。時代が人を疎らにしてしまった」

 ガソリンスタンドでスーツを買った。緑色のスーツだ。同じような色のスーツが既にあった気がするが、質感が異なる。シャツもネクタイもみんな緑でかためる。どんな芝にでも溶け込みやすいように。試着をしている間に、父も母もみんないなくなってしまった。
 テーブルの上に文具が散乱しているが、どれかは家の物であるらしかった。ハサミはどうも違う。ボールペンの1つに仮名の書かれたシールが貼ってあり、それは母の旧姓の頭文字と一致した。
「これは家のです!」
 断じたものの根拠が薄く、逃げ出したい気持ちになった。

「もう少し続けることにしたよ」
「そう言うと思ってたよ」
 テーマが尽きるまでは、続けてみよう。
 未来にでも届けばいい。
 歌うとは、みえないものを信じることかもな。
「共に進んでくれる?」

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笑いのツボ

2021-01-01 04:20:00 | ナノノベル
「笑いが止まらないんです」
「しあわせじゃないですか」
「いや苦しいんですよ」
ワッハッハッハッ

チャカチャンチャンチャン♪

「突然はじまって止まらなくなるんです」
アッハッハッハッ
「笑いは健康には欠かせません」
「いやそれどころじゃない」
アッハッハッハッ
「はい。お口開けてみて」
「いや閉じさせてください」
アッハッハッハッ

チャカチャンチャンチャン♪

「先生。もうずっと苦しくて」
ワッハッハッハッ
「笑えている内は大丈夫」
「いや大丈夫じゃないわー」
ワッハッハッハッ
「健康ですね」
「どこが」
ワッハッハッハッ

チャカチャンチャンチャン♪

アッハッハッハッ
「疑われるんだ」
ワッハッハッハッ
「どこ行っても」
アッハッハッハッ

チャカチャンチャンチャン♪

「漫才にも行けません」
ワッハッハッハッ
「行かなくても笑えてるじゃないですか」
「笑いたいとこで笑いたいんですよ」
アッハッハッハッ
「十分笑えてますけどね」
「今じゃないわー」
ワッハッハッハッ

チャカチャンチャンチャン♪

「でもね、世の中には笑えない人だっているんだよ」
「だから何だってんですか」
アッハッハッハッ

チャカチャンチャンチャン♪

「ちゃんとした式にも出れない」
ワッハッハッハッ
「わかりました。治しましょう」
「お願いします」
ワッハッハッハッ

チャカチャンチャンチャン♪

「ここを押すと笑いが止まる」

チャカチャンチャンチャン♪

ワッハッハッハッ
ワッハッハッハッ
ワッハッハッハッ
ワッハッハッハッ

チャカチャンチャンチャン♪

アッハッハッハッ
アッハッハッハッ
アッハッハッハッ
アッハッハッハッ

チャカチャンチャンチャン♪

「普通の人はね」

アッハッハッハッ

ワッハッハッハッ……

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