折句ラッシュ・クリスマス

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、縦読み
クジラうえリクエストした水族館マダイが歌うスローバラード、クリスマス

カテゴリー・バス

2021-01-06 22:25:00 | ナノノベル
 あの人を嫌いになったのはあの人があの人を好きだったからだ。あの人はあの人であの人とはまるで別人のようだったけれど、あの人にもあの人に似た一面もあって、あの人もあの人もあの人も交じり合ってあの人を思わせているのかもしれない。小説を嫌いだったのもそうだ。みかんも、バームクーヘンも、ボール遊びも、海辺も、煙草も、銀杏も、雪だるまも、みんなあの人の影響を受けながら、接近したり逃げ回ったりした。あの人が好きだった。嫌いだった。(すべてを愛することはできない)人の愛に添い、人の愛に背いた。重ねたり削ったり、そのようなことを繰り返しながら、いつの間にか自分らしく落ち着いてしまう。何が最初だったか、どうしてここにたどり着いたのか、わからない。きっと、だんだんと忘れているのだろう。

 ボールの上を舐めている。コントロール時々気まぐれ。そうしていると不思議と落ち着く。(いつまでも遊んでいたい)行き先は不明だ。回転する度に光が反射する。光ばかりではない。自分の影が、過去や未来が反射する。時に強烈に、子供の頃の玩具屋さんで見た天国のような輝きが射す。ワンタッチ、ワンタッチ、ボールを意識しながら、僕は遠くにあるものに目を向ける。ここにいる。ここにいない。僕はずっとはじめの方から純粋ではない。

 ボールと戯れているように見えて、サッカーをしているわけではない。味方も敵も存在しない。パスもシュートもない。テーマのないドリブルを続けている。(いつまでも遊んでいられない)僕は突然ゴールが恋しくなる。それは遙か昔にたどった道であるのかもしれない。舐め続ける内に徐々にボールは小さく萎んでいき、やがて取るに足りないような存在に変わる。手の中に丸め込んだらそれをインクの入ったペン先にセットする。
(カチッ♪)
 何を思ったか、世界が高い壁を作って警戒する。
 ファースト・タッチでこれからの行き先が決まる。

 バス停に駆け込むとちょうど詩バスが発ったところだった。
 次に到着した旅行・おでかけバスは、各シートに石が載せてあり、誰であれ乗車することはできなかった。
 15分ほどして小説バスがやってきた。中は半分以上は空席があるようだった。このバスこそはずっと待ち望んだバスに違いない。僕は作品という名の乗車券を持ち、一歩前に出た。バスは落ち葉のようにぬっと近づいて止まった。ドアは開かなかった。知らせなければ駄目か。僕はトントンとドアをノックした。「乗ります」今すぐに。バスは僅かに揺れているようだった。ドアは開かぬままバスは動き出した。
 小説バスは僕を拒んだまま行ってしまった。誰もいないバス停に風が吹きつけた。僕はnoteを開き、子供じみた自分の作品を読み始めた。夜になると自然と明かりがついて、上手く埋めることがかなわなかった行間を淡く照らした。

(やっぱり無理か)

 noteを閉じようとした時、バス停に強い光が射し込んだ。派手なペイントを施したサッカーバスだった。彼方からのヘッドライトをあびて乗客の横顔が光る。皆ユニフォームに身を包み、今にも試合が始まりそうだ。バスは僕の足下にピタリと停止した。
 ドアが開き中からボールが1つ転がり落ちてきた。無意識の内に胸でトラップした次の瞬間、僕の体はバスの中に吸い込まれていた。

「サイドの席が空いているよ」

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【短歌】タイムライン

2021-01-06 06:37:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
張りつめた弦は2月の空白で語る言葉を失って鳴く


、の打ち場を問うて隙間なき字間をたどる心は読者


頬に雪ひとひら落ちて水になる3月の風まだ僕はここ


科学的根拠をまめに添加した色鮮やかな日替わりランチ


2ヶ月の無料期間にポイントもくれるあなたの望みは何だ


縁の切れ目に咲く花に足を止め蝶はひととき春風を読む


一目も会いたくないけど8時間共に働く社会生活


五右衛門風呂で茹でられた11分アルデンテまであと30秒


小説のタイトルばかり浮かべては12の月が過ぎ去って今


言の葉はモスの窓辺で尽き果ててため息ついたノンステップバス

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【新小説指導】時代

2021-01-06 03:11:00 | 新・小説指導
あんた10万字書いたんか
おつかれさん
で どないしたん

なんや寝かせとんのかいな

もっと字数を踏むんですか
寝かせといてどないすんねん

「書き出し」言うたでしょう

書いたら出す 出したら書く
書いて出す 出して書く

「行ったり来たり猫やで」

いつまでも寝かせてどないなる
出すとこはあんねんから

迷うくらいありますよ

字数ばっかり踏んでたら日が暮れる
時代に乗り遅れんように
はい 
今は遊びの時代言われてます

文字を詰めすぎんように

ちゃんと遊びを作りましょう
行間もよ あんた詰めすぎやねん


もっとすかすかにせな



スペースはあんねんから



「詰めすぎたら渋滞するよ」









どこにも到着しません




書くためには時代をちゃんと読む









行間あけて時代を読む









読み過ぎたらあかんよ



読みながら書く








「カクヨムや」









ほんで 書いたら出す




どんどん出してったらええねん


























そういう時代や
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オンリー・ユー

2021-01-06 02:06:00 | オレソン
ポメラと俺との間に
祭りという邪魔が入る

「君しかいないんだって」

祭りの甘い言葉につり出されて
俺は御輿を担ぐ
舞を踊る
歌を歌い 酒におぼれる
金魚をすくい
綿菓子を潜り
焼き鳥を食らい
リンゴ飴を回し
風船を飛ばして帰ってくる

「待たせたね」

行くあてのないモチーフを
渋滞させながら
ディープスリープの中のポメラ

俺はゆっくりと指先を合わせる
またプロローグから始めなくちゃ


ポメラと俺の間に
年の瀬という邪魔が入る

「今しかないんだって」

年の瀬の強い言葉に抗えずに
俺は炬燵を上げる
窓を開け掃除機をかけ
落ち葉を集め お菓子を集め
トナカイをつれ お菓子をまいて
チキンを食らい 蕎麦を啜り
行列に並び
密を抜けて鐘を鳴らし
大吉を引き当て
小枝に預け
餅を食って帰ってくる

「ごめんね」

放置している間に
顔色を変えてしまったポメラ
すっかり詩を忘れたように
カーソルを瞬かせている


ポメラと俺の間に
友人という邪魔が入る

「どうせ暇なんだろう」

言葉を知らない
友人をしばいて
俺はポメラの元へ帰ってくる

ごめん

「もうどこにも行かないよ」

君とだけ一緒に行くよ
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