じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

教育再生

2006-09-28 05:39:29 | 教育
★ 新しい内閣は教育の再生に力を入れるそうだ。ただ、その中身は、教育基本法の改正、奉仕活動の義務化など国家による締め付けとイギリスの教育改革の模倣といった借り物が特徴となりそうだ。

★ 徳目主義的な復古調とバウチャー制度の導入といった自由化を組み合わせて、規範意識の高揚と高い学力をめざすという。

★ どうも宙に浮いたような戦略だ。バウチャーを導入し、学区を柔軟化し、学校を競争させることによって、教育を活性化する。確かにそれは一部の優良校を生み出すであろう。ただ優良校ができるということは不良校ができるということでもある。エリート養成にはこの方法も効果的かも知れないが、学力水準全体の底上げには適さない。今日でも上位の生徒達のレベルは維持されている。問題は中位の生徒達のレベル低下である。

★ 教育問題は社会問題である。昨今の学力問題も中位層の低下による平均点の低下であり、学力と親の所得との相関性を考えるとき、親の所得の格差の拡大が、平均的な学力水準の低下に影響していると考えられる。

★ つまり、教育再生はいくら教育制度をいじってみたところで実現はできず、社会における格差の是正、特に低所得層の生活水準の引き上げがない限り、効果は上がらないのである。

★ 学校が荒れる、生徒が荒れる、教育が荒れるのは、社会が乱れているからである。とりわけ社会の変化、発展に取り残され、夢も希望もなくなった人が自暴自棄になり、刹那的になることが原因である。教育は未来への希望であり夢である。社会的な上昇志向があればこそ努力もできるし、親や学校も学習を鼓舞できる。

★ 教育再生に向けて、当面最も有効なのは大学までの完全無償制を実現するか、せめては国公立学校の授業料を極めて低く設定することだろう。社会政策としては、まずは年収400万円以下の世帯の所得水準の引き上げである。

★ 成熟社会は工業化社会とは違う。工業化社会は平均的な能力を持った多数の人々を求めるが、成熟社会、脱工業化社会は、高い付加価値を生む一部のエリートが求められる社会である。モノづくりにはロボットが導入され、通信、情報はITが主流となっている。

★ シャッター街や消えていく町の書店やレコード店、電器屋、小売店・・・。教育再生は社会再生によって初めて実現される。新しい産業の創出。雇用の創出がどうしても必要だ。農業、工業など基礎となる産業を見直すことも必要だろう。

★ 教育再生は結構なことだが、理念と政策がチグハグだ。体裁を取り繕っているとしか思えない。ITや最先端技術など付加価値の高い産業育成のため一部のエリートを育成するなら安倍教育再生改革は妥当だと思う。一部のエリートにどんどんお金を稼いでもらって、その収益で人々の生活を維持しようとするものである。一部の富裕層を認めつつ、大多数の大衆は年収300万円~400万円程度ながらつつましく生活するには困らないように国が保障しようという国家像である。

★ ただ昨今の安倍総理の発言を聞いていると、国民全体の底上げを目指しているような言い回しである。公立学校の再生をうたっているのはそういうことであろう。国民全体が年収600万円から800万円を得るような中流層を維持しようといった国家像である。どういう風な戦略でこれを実現しようというのかは不明だが、教育への市場原理の導入では不可能であろう。むしろ社会主義的な1人の10歩よりも10人の1歩的な教育をめざすことになろう。

★ 耳当たりの良い言葉に紛らわされず、改革の真の狙いを見つめていきたい。

コメント