見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2019年3-4月@東京近郊展覧会拾遺

2019-04-24 23:18:46 | 行ったもの(美術館・見仏)

府中市美術館 企画展『へそまがり日本美術 禅画からヘタウマまで』(後期:4月16日~5月12日)

 前期にも行った展覧会だが、後期が始まったので、さっそく見てきた。前期チケットの半券で後期は半額というリピーターサービスもありがたい。前期は冒頭が仙厓義梵の『豊干禅師・寒山拾得図屏風』だったが、後期は妙心寺麟祥院の海北友雪筆『雲龍図』。左右一対の龍だが、本展には、ビーグル犬みたいに二本の角が垂れた龍図のみ出品。ただ、この作品は、所蔵先の麟祥院で見たときのほうがインパクトがあった。天井が低くて狭い空間なので、ぬっと現れる巨大な龍のオトボケ顔に意表をつかれるのだ。

 春叢紹珠の黒い『三番叟図』はカッコよかった。風外本高のゆるすぎる『涅槃図』には笑った。前期の『南泉斬猫図』の人だな。遠藤曰人の『「杉苗や」句自画賛』は、並んだフラガールみたいな三羽の鶴。冨田渓仙の『石峰寺』も吹いた。若冲もびっくりだろう。「いくら仏の国でも足を踏み入れたくない」とか、本展は解説のツッコミが楽しい。この日(4/17)は金子信久先生の20分スライドレクチャーを聞くこともできた。金子先生、「ヘタウマの展覧会」と呼ばれてしまうことには、ややご不満の様子だった。確かに、むしろ「ヘタウマとは?」と真顔で問い直したくなる展覧会だと思う。

東京都美術館『奇想の系譜展:江戸絵画ミラクルワールド』(後期:2019年3月12日~4月7日)

 年度末の繁忙の合間に、前期に続いて、後期も見に行った。お目当ては、新出の伝・岩佐又兵衛筆『妖怪退治図屏風』だったが、意外とゆっくり見ることができた。八曲一双。高さ75.1cmなのであまり大きくない。左隻の騎馬武者の一行が、又兵衛ふうの特徴的な顔立ち(豊頬長頤)と言われればそうだが、古い絵巻の武者顔という気もする。右隻には黒い海に浮かぶ、目がチカチカするような色とりどりの妖怪たち。顔が大きくて、着ぐるみがアニメのキャラクターを思わせる。

 後期最大の収穫は曽我蕭白のエリア。原色の毒々しい(褒めている)文化庁の『群仙図屏風』、淡彩の東京藝大『群仙図屏風』に加え、初めて見る個人蔵の『仙人図』。輪郭の定かでないふわふわした描線で描かれた三仙人は、洋物のドワーフかゴブリンみたいでもあった。

サントリー美術館 『河鍋暁斎 その手に描けぬものなし』(2019年2月6日~3月31日)

 河鍋暁斎は、何でも描ける画家すぎて、私は少し苦手だった。2008年に京博の『絵画の冒険者 暁斎 Kyosai』展を見たときの感想にも、そんなことを書いている。2015年の三菱一号館美術館『画鬼・暁斎』や2000年の東武美術館『河鍋暁斎・暁翠展』も見ているはずだが、不思議なことに今回が一番面白かった。暁斎の「巧さ」に心から惚れ惚れすることができた。たぶん正統派の巧い絵ばかりではなく、どこか「変」な作品(奇想、滑稽、へそまがり)が、意識的に集められていたためではないかと思う。衝撃だったのは『処刑場跡描絵羽織』(京都文化博物館管理)。羽織裏に強烈な血みどろ絵。2008年の京博展にも出ていたようだ。知らなかった。幽霊図も好き。極彩色の奇想が炸裂する画帖(小品集)も好き。

■日本橋三越本店 『生誕130年 佐藤玄々(朝山)展』(2019年3月6日~12日)

 彫刻家・佐藤玄々(1888-1963)の回顧展。代表作『天女(まごころ)像』を囲むように30点余りの作品が展示された。ネズミや鳩やウサギなど小動物作品、それから観音、西王母など、宗教的・神話的な人物像が目についた。案内係のお姉さんに「6階の美術工芸サロンにも1点だけあるんですよ」と教えてもらったので見に行ったら、別世界のような売り値がついていた。

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