去る10月4日(金)に我が家に試聴にお見えになったYさん(別府)。
その時に「このほどパワーアンプをマークレヴィンソンに代えます。明日にも到着の予定です。」との話を伺った。
あれからおよそ2週間が経過したので、セッティングも終えてひととおり「慣らし運転」も済んだ頃合いだろうと、20日(日)の午前中にYさんに電話してみた。
「マークレヴィンソンの調子はいかがですか。よろしかったら、聴かせていただきたいのですが。」
「ええ、いいですよ。今からでも構いませんのでどうぞ」と、気持ちよく応諾してくれた。
クルマで10分ほどなので、すぐに到着。
「ヘーッ、これがマークレヴィンソンのパワーアンプですか」、と部屋に入るなりしげしげと眺めさせてもらった。以前は、たしかアキュフェーズのセパレート・アンプを使っておられたはず。
持参したCD「パガニーニのヴァイオリン協奏曲1番」(庄司紗矢香)、「エラ&ルイ」、「日本歌曲集」(米良美一)をさっそく聴かせてもらった。
それぞれに聴きどころがあって、順に「低音域の力強さ」「録音現場の雰囲気の再現性」「ブレス(息継ぎ)が明瞭に聴こえるか」といったところ。
マークレヴィンソンといえばプリアンプが有名で、その特徴は無色透明の一言に尽きるが、しいて言えばベジタリアン系の印象を持っている。このパワーアンプも血筋は争えずその傾向を受け継いでいるように思った。
我が家の「AXIOM80+真空管アンプ」のコンビとは随分傾向の異なる音で、これほどの音は滅多に聴けないと思うものの「いい音」と「好きな音」の違いを改めて考えさせられた。
ところで、Yさんは以前からフルートを吹かれているが、このほど「ノマタ」に特注してプラチナ製を新調された由。口当てのところに独自の彫り込みがしてあって世界に1台の代物だそう。
さっそく生演奏を聴かせてもらったが、もうウットリ!”ふっくら”として”粒立ち”や“音色”が良くて、こんな音はとても電気回路では出せない(笑)。
「いやあ、素晴らしい。生の楽器の音を堪能しました。ちなみにいったいどのくらいするもんですか。どうか参考までに・・・」
しばし、ためらわれた後に「クラウン1台分です。材質によってやはり音が違いますね」。
ウ~ン。
ちなみに先般亡くなったウィーン・フィルの首席フルートだったウォルフガング・シュルツのフルートもたしか日本製で800万円くらいする代物と聞いたことがある。
音楽にはいろんな楽器があってそれぞれピンからキリまであるが一流の楽器、たとえばストラディヴァリ(ヴァイオリン)ともなると億単位だし、ピアノもスタンウェイやベーゼンドルファークラスとなると1千万円は軽い。
こうした途方もない楽器の値段と比べると、オーディオシステムの値段なんてトータルとしても安いものである。
とはいえ、いろんな考え方があるのも事実。
極端に言えば次の二つに分かれる。
「どうせ“生の音”には及びもつかないのだからオーディオシステムなんかには期待しない。そこそこの音でいいんだからお金を突っ込むなんて愚の骨頂。」
もう一つは、「生の臨場感に少しでも近づいて、たとえ錯覚でもいいからうまく騙されたい。財力の許す限りシステムにどんなに投資しても惜しくない」。
後者の代弁をするわけではないが、昔の王侯貴族(ヨーロッパ)は自前の楽団や演奏家を抱えて音楽を楽しんでいたが、現代ではオーディオシステムがそれにとって代わっている。
一流の楽団として機能させ、それもオーケストラからボーカル、小編成の室内楽まで幅広いジャンルを家庭で十全に聴こうと思ったら、オーディオシステムにお金がかかるのは当たり前。楽器の値段に比べれば安い、安い(笑)。