我が家のプリアンプを製作してくれたYさん(豊後大野市)が試聴にお見えになったのは去る13日(木)のことだった。
豊後大野市は県中央部に位置し県内屈指の穀倉地帯として知られるが、別府からクルマで1時間程度のところ。
そしてYさんは掛け値なしの凄腕の「アンプビルダー」さんである。
ご自宅では本格的なJBLの「3ウェイシステム」を使っておられ、ジャズ愛好家なら一度は聴いておいても損はないというほどのハイレベルの音。もちろん駆動する真空管アンプはすべて自作。
この日は2週間ほど前に自作されたという「245シングル」アンプを持参された。希少な「ナス管」を使用されており、いかにもいい音が出そうですねえ。
おっと、「出力管の245って何?」という方がおられるかもしれない。
これは「受け売り」なのであまり当てにならないが(笑)、アメリカの出力管の系譜は「171 → 250 → 245 → 2A3」へと進化している。
ただし、丁寧なツクリや優れた材質、そして音質となると別の話で、我が家のように初期の「71系」が好きという輩もたくさんいる。
アメリカは第二次世界大戦の「主戦場」にならなかったせいで、こういう古典管が比較的よく残っているんですよねえ・・。
で、「45」のナス管となると3桁番号になって「245」と称されている。ちなみに、「ST」管よりは「ナス」管の方が貴重とされ音質の方も上とされている。
ただし、管内の真空度の劣化が進んだ「ナス」管よりも新しい「ST」管の方がいい場合もあって、一概に決めつけられないのは周知のとおり。
あの「瀬川冬樹」さん(故人:評論家)が、愛用されていた「AXIOM80」を「245」シングルアンプで鳴らされていたのは有名な話である。
潜水艦のソナー探知用に使われていたという噂があるほどのデリケートな「AXIOM80」は、そもそも開発にあたって245アンプで試聴テストを繰り返されていたという話を小耳にはさんだことがある。
その「245」アンプを聴けるというのだから思わず「身震い」がしたほどだった。
当日は梅雨の真っ最中にもかかわらず、好天に恵まれたのでよほど当事者の日頃の行いがいいに違いない(笑)。
順次、植木鉢に容れた「TRIAXIOM」、次いで本命の「AXIOM80」(オリジナル版)を聴いたが、我が家の9台のアンプの内でこのアンプに互角に対抗できるとなると・・、思わず背筋に冷たいものが走った(笑)。
そして、最後に聴いていただいた「JBLの2ウェイシステム」でYさんの愁眉がようやく開かれて満開になった。
「私はこの音がいちばん好きです!」