欧米ではユーモアが紳士としての大切な品質証明となっており、危機的状況になったときに機知を発揮したり、精神の余裕、フレキシビリティを持つことが深い意味を持っている。
そうした人間的なキャパシティの面からすると日本人は国際的に見て”もうひとつ”といった感があるそうだ。
「世界の首脳・ジョークとユーモア集」(2008.11、中公新書)
著者の「おおば ともみつ」氏は元大蔵省国際金融局長、財務官として数多くの国際舞台に立たれた方でその辺の豊富な経験を生かした著作。
そのうち、いくつか紹介。
☆ 「ご安心ください」
2004年初め、ワシントンで作られたのが次のジョーク。
米、仏、日の三人の首脳が、地中海の小島で余人を交えずに会議を開いていた。そのとき、米国土安全保障長官が「テロ」の危険度を最高レベルの「赤」にした。三人の首脳はテロリストに襲われることを恐れ、補佐官に助けを求めることにした。
米大統領は首席補佐官に電話した。補佐官は冷静に答えた。「大統領、ご安心ください。デルタ・フォースと海兵隊のヘリコプターを送りました。まもなく着くでしょう。ですから心配しないでください」。
仏大統領もパリの補佐官に電話した。補佐官が報告した。「大統領、ご安心ください。ワシントンで国土安全保障長官が「赤」を元に戻すよう、抗議の大デモ隊を組織しました。ですから心配しないでください」。
日本の首相も補佐官に電話した。補佐官が答えた。
「総理、ご安心ください。既に貴方の後任を用意しました。ですから心配しないでください」。
※ (2011.7.19現在)
それにしても「菅」さんの粘り腰には驚嘆する。これまで見られた他の二世議員の”ひ弱さ”とはまるっきり縁遠い。しかし、明治維新を成し遂げたのは20代~30代の若者たち。そろそろ老害を自覚して引退してもらわないと~。
☆ 「言い訳は日本人の美徳?」
「欧米人はジョークでスピーチを始める。日本人は言い訳でスピーチを始める」と言われる。
英国のチャールズ皇太子が「世界で一番古い職業は・・・」といって一呼吸おき、聴衆が皇太子の口から「売春」という言葉が出るのかと息をのんだときに、「わが王室もその一つですが」と続けた話はそれをよく表している。
日本の皇室では、さすがにこのようなスピーチはお目にかかれないだろう。
☆ 宮澤家の会話
元首相の宮澤喜一氏(故人)の令嬢は米国の外交官と結婚している。英語に堪能な宮澤家の人々の間で次のようなユーモアが創られたという。
双子の兄弟が生まれたとき、兄の名前をピーターにした。弟の名前をどうしたらいいか。「リピーター」にすればいい。
☆ 容易なる決断
自分の息子がどういう職業に向いているか知りたい男がいた。
ある日、聖書と一ドル紙幣とリンゴ1個を置いた部屋に息子を閉じ込めた。帰ってきたときに、息子が聖書を読んでいれば聖職者にしよう、リンゴを食べていれば農夫にしよう、一ドル紙幣をもてあそんでいれば銀行家にしようと決めていた。
帰ってみると、息子は聖書を尻の下に敷き、一ドル紙幣をポケットに入れ、リンゴはほとんど食べ尽くしていた。
そこで親父は息子を「政治家」にすることにした。
※ 洋の東西を問わず「政治家」のイメージは大体似たようなものとみえる。
しかし、先日(6月19日)のBSジャパンの番組「われらの時代」で若手代議士の小川淳也(民主党)氏と西村康稔(自民党)氏の討論の模様を観ていたら、国政への真摯さが伺われ、実にハツラツとしてさわやかな印象を受けた。
こういう政治家もちゃんといるので一概には否定できないと思ったが、代議士先生は当選回数を重ねるごとに尊大になっていく傾向があることも事実。
「嫉妬と怨念」が渦巻き、「百鬼夜行」とまで言われる政界だが、杉の木のようにまっすぐに伸びて欲しいものだ。