先日、オーディオ仲間と一緒に試聴していたら妙なことが話題になった。
オーディオははたして「引き算」なのか「足し算」なのか。
言い換えると出来るだけ機器の数を減らしてシンプルな方向へ向かうべきか、それとも機器の数を増やして複雑化すべきか。
いったい、どちらが自分の好みのサウンドを得るのに適切なんだろう?
「そんなことはケースバイケースで個人の勝手だろ」という声が外野席から聞こえてきそうだが(笑)、まあオーディオに取り組むにも一応「原則」というか「拠り所」らしいものが欲しい気もするところ。
まず引き算的な発想からアプローチしてみよう。
実際の演奏会場の特等席で聴く音を100点満点の「原音」と仮定しよう。そして、その原音に出来るだけ近づいた音で家庭で聴けるようにマイクや録音機器でデジタル録音するとしよう。
完璧な収録はあり得ないのでその時点で「原音」からいくばくかの情報量が失われ減点される。
次に音声信号をCDにプレスする時点でも同様に減点の対象となる。(CDの材質もガラスからポリカーボネイドまであって、音質もさまざまだが)ここまではいわば他動的な話。
次に、お好みの「CDトランスポート → DAコンバーター → プリアンプ → パワーアンプ → スピーカー」と自宅で音楽再生に必要なオーディオ機器が接続用ケーブルとともに加わっていくが、すべてに亘って人工的な電気回路が使用されるのでその都度「音声信号」が次第に原音から遠ざかっていき減点が加算されていく。
そして、最終的に「再生音が耳に届くまでに原音に対してどれだけ減点を少なく留めることが出来たか」という尺度を問題にするのが「引き算」的な発想である。
いわば「シンプル・イズ・ベスト」で、オーディオ機器は必要悪として仕方なく使うという考え方が根底にある。いまだにコンサート至上主義が根強い人気を誇っているのも頷ける、かな(笑)。
その一方、「足し算」的な考え方というのはスタート時を0点として自分が目標とする音を100点と仮定すると、この目標に向かって上記のように再生に必要な機器を順次加えていくごとに点数が加算されていく。
そして各機器の個性を理想的にブレンドしていきながら最終的に目標の音に近づけていく。
たとえどんな音であろうと自分さえ気に入っていれば「良し」として、原音にこだわることなく積極的に機器を活用していくのがいわば「足し算」的な考え方。
まったくどちらがいいとも悪いとも言えず、「おいらの勝手でしょ」だが、自分に照らし合わせてみるとこのところ「引き算」的傾向にあると言わざるを得ない。
「行稼ぎ」みたいな長い前置きはこのくらいにして(笑)、実例を挙げてみよう。
最近よく聴いているシステムの「川上から川下への流れ」は次のとおり。
「ブルーレイレコーダー」→「液晶テレビ」→「DAコンバーター」→「パワーアンプ」→「スピーカー」
そこで、引き算としての特徴を挙げてみると、
✰ CDトランスポートを外す
CD音源を聴くのならもう「ブルーレイ」のHDD録音で十分な気がする。老体になるとリモコンの便利さにすっかり取りつかれてしまった(笑)。
✰ プリアンプを外す
DAコンバーターの「エルガー・プラス」(dCS)の出力電圧が異常と思えるほど高いのでプリアンプ無しでもパワー感に遜色がなく十分いける。
ただし、ボリュームの調整は微小電流を扱うDAコンバーター側をフルにしておき、パワーアンプ側のボリュームで操作する。
✰ スピーカーはフルレンジか、せいぜい2ウェイへ
フルレンジの「AXIOM80」を聴くことが多いが、ときどきはJBLの2ウェイと入れ替えている。
「D123」(口径30センチ)とツィーターの「075」との組み合わせはとても相性がいい!
やはりスピーカーはフルレンジか、せいぜい2ウェイが自分には合っていそうだ。ちなみに、ウェストミンスター(改)の方も現在2ウェイで落ち着いている。何といっても位相の調整が楽だ。
✰ パワーアンプ
このJBL2ウェイシステムに一番相性がいいのがとてもシンプルな「6SN7GT」シングルアンプ。
我が家では一番コストがかからなかったアンプだが、シンプルな回路と小さな出力トランス(TRIAD)が功を奏して音声信号に対する反応がメチャ早い。しかもこの種のアンプにありがちな低音域の不足がまったくないときている。
「シンプルな小出力アンプで能率の高いSPを駆動する」ときに得られる満足感の典型例である。
こうしてみると、やっぱりオーディオは「シンプル・イズ・ベスト」が王道ではないかと思う今日この頃です(笑)。
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