パイオニアのリボン型スーパーツィーター(以下「リボン型」)が我が家にやってきてからおよそ2週間が経った。その間、再生周波数帯域が12万ヘルツまで伸びているという物珍しさも手伝ってあれこれ弄ってみた結果ようやく全貌がおぼろげながら見えてきたような気がする。
はじめに、あれこれ弄った内容を紹介する前に「そもそも論」から述べておこう。
人間の耳が聞き取れる周波数の帯域は周知のとおり低音器から高音域まで「20~2万ヘルツ」なので、そもそも12万ヘルツも出せるツィーターなんて要るのかという説がきっとあるに違いない。
その一方ではSACD(ハイレゾ)の帯域が10万ヘルツまで伸びているのは伊達ではないぞというわけで、サイン波では2万ヘルツまでしか聞こえなくても倍音では認識することができるので(スーパーツィーターは)有効だという説もある。さらには(高周波は)耳では聴こえなくても肌や産毛で直に感じ取れるという触覚説まである。
このように諸説紛々だが、私たちは経験上、味覚や視覚、触覚などの人間の感覚は物理的数値で割り切れるものではないことを熟知している。聴覚だって推して知るべしだろう。
したがって、こればかりは実際に自分で試して体感してみるしかないと思うし、さらには個人毎にもそれぞれ感覚の格差があるのを無視できない。何しろ人によって耳の形がそれぞれ違うんだから、聴こえてくる音だってそれぞれ違うのは当たり前だ(笑)。
というわけで、入り口論にちょっとこだわってみたわけだが周波数12万ヘルツまでの再生に向けて先入観なしの白紙状態で臨むことにしよう。
まず、このリボン型の全体的な所見では我が家のJBL075ツィーター(超重量級ステンレス型ホーン付き)に比べると、剛直感はないものの実に柔らかくて繊細かつ透明感あふれる高音域を出してくれるので比較的倍音成分の多いヴァイオリンなどの弦楽器を聴くにはもってこいだった。とても素性のいいツィーターの感を深くした。
あとはこの魅力をどこまで引き出せるかに尽きるわけだが、結果的には自己採点でどうにか85点くらいには引き出せたような気がしている。
それではその取り組みの一端を後日のために記録に残しておこう。「アンプ側からのアプローチ」と「ネットワーク側からのアプローチ」に大別されるが、本稿ではまずアンプ側からいこう。
前述したように、このリボン型は高音域が12万ヘルツまで伸びている触れ込みだったので、はじめに高い方の音が冴えない真空管アンプでも使えると踏んだのだが、逆にアンプの欠点をモロに出してしまった。
結線して順次5台のアンプを鳴らしてみたところ2台のアンプがあえなく脱落。両者とも高音域にサーというノイズが目だってどうしようもなかった。
生き残ったのは3台のアンプで、1台は前々回記載したWE300Bアンプだが、いろいろやってはみたものの合格点80点に届かず75点だったので捲土重来を期してもらうことにして、残る2台のアンプに運命を託した。
1台目は「71Aプッシュプルアンプ」。
このアンプの構成は初段管(画像 一番右)が「127」(アークチュラス:青球)~位相反転用に「327」(カニンガム) → 出力管「71A」4本~整流管「5Y3GT」(レイセオン)。
こうやって書いてはみたものの皆さん一様に「?」だろう。
極めてマイナーな真空管オーディオだが、さらに輪をかけたように1920年代前後の知らない球が続々出てくるので「サッパリ判らん、まるで別世界だ」と思われる方が大半に違いない。仕方がない。真空管オーディオの魅力にとり憑かれてしまうとどうしても90年ほど前の球に行き着いてしまうのだから~。どうか許してくださいな(笑)。
それにしてもこのリボン型は真空管の個性をハッキリと出してくれるので実に楽しくなる。このアンプの初段管には初めに「G 27」(マジェスティックス)を使っていたのだが、これはこれで悪くはなかったが試しに「青球」を使ったところ、見事に繊細かつ優美な音に変身。
さすがに北国の真空管博士が推奨された球だけのことはある。この「青球」じゃないと出せない音なので心配になってスペアを探したところ、もう1ペアきちんと保管していた。これで後顧の憂いなくブログに書いても大丈夫(笑)。
この「71APP」アンプなら合格点を上げられる。自己採点で80点を計上しよう。
次は「71Aシングルアンプ」(インターステージ トランス入り)だ。
以下、続く。