寄る年波には勝てず「身辺整理」の一環としてもはや使う見込みのない、いろんなオーディオ機器をNさん(大分市)を通じてオークションに出品してもらい出してからおよそ2か月あまり。
今のところ売れ行き好調でまずはひと安心。
たとえばワディアのCDトランスポート「270」、ウェスタンのラインアウト・トランス「543A」、そして古典管などだが、思わぬ収入が入ってホクホクである。
ちなみに「543A」は20年ほど前に「10万円」で購入したものだが、スタート価格「5万円」で出品したところ、たった1クール(6日間)のうちに「12万円」で落札されるのだからたまらない。散々楽しんだうえに儲かるのだからさすがは名門ブランドのウェスタン・エレクトリックさん(笑)。
さて、今回Nさんに出品をお願いしたものの中に「AC/HL」(エジソン・マツダ)という電圧増幅管があった。オークションでもほとんど見かけることのない稀少な古典管である。一般的には欧州の名三極管として知られる「PX25」出力管のドライバー管として使用されることが多い。
この真空管を見てNさんがポツリと一言。「こんな球をオークションに出すなんて勿体ないなあ!WE300B真空管のドライバー管に使うと面白いかもしれないねえ。全国でも滅多にないと思うよ。」
「ホウ、そうですか。我が家にも300Bアンプ(モノ×2台)がありますよ。今のところ、音質に不満はありませんがもしかしてもっと良くなる可能性があれば乗ってもいいですよ。改造できるかどうか一度現物を見てみますか?」
そして後日、売れたオーディオ機器の精算のためにNさん宅へ訪れたついでに、半信半疑ながら300Bアンプを持って行ったところ、じっくり回路を見られたNさん「これなら改造できそうです。しかし、望みの音質が出ない可能性もあるのでその時に文句を言われても困ります。最終的には〇〇さんの決心次第ですが。」
「もう乗りかかった船です。思い切ってやってみましょうかね。」
正直言って自分の場合、これまでのオーディオ投資は半分は賭けのようなものだし、ハズレも数知れぬほど体験している。そういうときは授業料だと割り切ることにしているので期待外れのときのストレス耐性はある程度出来ている積もり(笑)。
まあ、「サマージャンボ」並みではないにしろ「真夏の大博打」というわけだが、Nさんの現在のシステムは「レコードプレイヤー+プリアンプ+WE300Bシングルアンプ(自作:モノ×2)+アルテックA7」で、実にいい音がしていて300Bアンプの制作には手練れの方なので安心して任せられる。
そして待つことおよそ20日間あまり、Nさんから待望のご一報が入った。
「アンプが一応出来上がったのでエージングを兼ねて我が家のシステムを鳴らしてみたところ、想像以上にいい音が出てますよ。一度聴いてみますか?」
さっそくNさん宅へすっ飛んで行ったのは言うまでもない(笑)。8月6日(水)の午前中のことだった。
試聴した結果「いやあ、いいですねえ!」ハム音などのノイズがいっさいないし、一音一音が磨かれて出て来る印象を受けた。こうなると早く我が家の「AXIOM80」を繋いで鳴らしてみたいばっかり。
「もっとエージングを」と渋るNさんを尻目に強引に取り上げて我が家へ一目散(笑)。
ここで、改造したアンプの構成を述べておくと、
初段管に「ECC82(テレフンケン)」、ドライバー管に「AC/HL」、出力管「WE300B」(1957年製)、整流管「WE422A」。
感度の鋭い「AXIOM80」に繋いでもいっさいノイズなしで、静寂そのものの「音の佇まい」に加えてひたすら透明感が漂う音響空間、そしてその音色たるや・・・・。
自画自賛はみっともないのでこの辺にしておくが、「笑いが止らない」というのはこういうことを指すのだろう。エージングを続ければもっともっと良くなること間違いなし。これなら現在使用中の「刻印付き2A3」アンプ・1号機といい勝負だろう。
賭けは大当たりだった!
久しぶりに血沸き肉躍る思いがしたが、やっぱりオーディオはときどき“のるかそるか”の大博打をするに限る(笑)。
なお、これまで「AXIOM80」にはマッキントッシュのプリアンプ「C28」を使っていたのだが、改めて真空管式のプリアンプと比較試聴したところ後者に軍配が上がった。あくまでも我が家のシステム環境での話だが、柔らかな響きと細かい情報量にかなりの差があった。やっぱり、相性の問題もあって良し悪しは一概に決めつけられないようだ。
最後に話はまったく変わるが、最近、知人からもらった「シルバー川柳」(全26句)に腹を抱えて笑ってしまった。その中から、3句ほど紹介してみよう。
〇 「医者と妻 急にやさしく なる不安」
〇 「目覚ましの ベルはまだかと 起きて待つ」
〇 「いびきより 静かな方が 気にかかる」