「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

「音の重心」の違い

2014年05月11日 | オーディオ談義

去る5月2日(金)のKさん(福岡)との試聴会で「AXIOM80」(オリジナル・エンクロージャー入り)をきいていた時のこと。駆動しているWE300Bアンプ(モノ×2台)の真空管を「1950年代製」(オールド)と1988年製とに切り替えて「聴き比べ」をしていたところ、後者の音の方が明らかに高域方向にエネルギーが偏っていることに今さらながら気が付いた。

「真空管(出力管)は製造年代が新しいものほど音の重心が上がりますね。」と言ったところ、Kさんも「まったく同感です」。

同じウェスタン製でもこれほどの差があるのだから、他の真空管は推して知るべしで、少なくとも手持ちの真空管すべてにこの現象は通用する。

以下、自分の体験談だがまず、RCAブランドの「2A3」にしても後期の製造品ともなると、お気に入りの「刻印付き2A3」(1940年代)と比較した場合、まったく別物で重心が見事に(?)といっていいほど上がる。

この現象は1970年代以降に製造された真空管にだいたい当てはまる。1960年代のものは辛うじてセーフなので、真空管はおよそ1970年前後が境目となって「様変わりする」というのが偽らざる自分の感想である。

相性などもあって新しい製品が古い製品よりもいいとは限らないのがオーディオの面白いところだが、さしずめ真空管などはその最たるものだろう。何といってもコスト削減のための「量産化」が原因だと思っている。「悪貨は良貨を駆逐する」(グレシャムの法則)とはこのことかな(笑)。

もっとも、「重心の上がった音が好き」という人もいるだろうから、こればかりは個人差があって「いい悪い」の話ではないのだが、自分の場合は重心の上がった音は、「ちょっと聞き」にはいいのだが、長時間きいていると耳が疲れてきてしまう。「AXIOM80」は高域にちょっとクセがあるのでなおさら。

それだけならまだいいのだが、そのうち機器をスイッチ・オンするのが何だか億劫になってくるから不思議。

この歳になって自然とオーディオから遠ざかってしまう代償には何物にも代えがたく、影響は甚大なので“よほどの例外”を除いて1970年代以降に製造された真空管には手を出さないことにしている。

ところが、その“よほどの例外”破りをつい最近、やってしまった~(笑)。

去る4月28日にオークションで落札した2A3真空管(ペア)がそれ。

            

出力が3ワット前後の「2A3」は、能率が110db前後のJBLユニットにはもってこいの代物で、音が暴れず使い道が多いのでいつもオークションでアンテナを張っているが、偶然みかけたのが「ZAERIX」(ザイレックス)ブランドの「2A3」。

ご存知の方もあると思うが「ザイレックス」とはメーカーではなくて商社(イギリス)の名前で、中味の方はムラードなどいろんなブランドの欧州系の真空管を中心として販売している。

このブランドの製品は実際に「6SL7GT」「ECC88」「PX25」などを使ってきたが、品質や耐久性などに一度も期待を裏切られたことがない。今ではザイレックスと聞いただけで、いかにも「いい音がしそう」と涎(よだれ)が出てきそうになるくらい(笑)。

おまけに真空管のベースが茶色になっており、経験上、黒色よりも当たりの確率が高い。したがって、この「2A3」は「即買い」だと思ったが念のため真空管の生き字引のKさん(福岡)に相談してみた。

「ザイレックス・ブランドの2A3がオークションに出品されてますが、どんなもんでしょうか?箱にはKさんの真空管アンプ御用達の〇〇オーディオの名前が記載されていますよ」

「〇〇オーディオさんが扱っているモノなら間違いないと思いますが、念のため店主に確認してみましょう。」

そして「やはり〇〇オーディオさんが取り扱った品物に間違いありません。30数年前にヨーロッパからごく小数を輸入した中の逸品だそうです。信じられないほどの値段ですからこれは絶対に買いですね。」

30数年前といえば、うまくいけば1960年代の製品の可能性もある。

しかも、この3月に購入した「刻印つき2A3」(1940年代)の1/2の価格だから、これはとんでもない掘り出し物。しかも即決価格になっているので迷うことなく落札した。たぶん、よく事情を知らない方が出品されたのだと思う。もしかすると故人となったオーディオマニアの遺品整理かもしれない。そのうちいずれ自分のケースもありうるかと思うと身につまされるが(笑)。

5月2日(金)の午後に現物が到着したので、丁度居合わせたKさんにお見せすると、日光にかざして仔細に点検された後に「これは新品に間違いありません。まったく詐欺みたいな値段で手に入れましたね~。」と、うらやましそうなご様子。

詐欺とは人聞きが悪いが、生き馬の目を抜く世界では実利優先に勝るものはない。「フッ、フッ、フッ」。

翌日、アンプの整流管を引っこ抜いてエージングを実施したが、実際の音出しは後日の愉しみにとっておくことにした。もちろんオークションの評価は「非常に良い」をクリックして取引相手に発信。「良品でした。機会がありましたら、またよろしくお願いします。どうもありがとうございました。」

これで「2A3」のストックはたっぷりとなったので、後顧の憂いなく使用できるが、欲を言えばあと1台(2A3の)専用アンプが欲しいところ。
 

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